第48話

〈伊織視点〉







ユウ「どうだ?」






「・・・・高すぎじゃない?」






一緒に住む返事をしてからは彼のブームは…

賃貸情報紙を見る事だった…





ネットで見て気に入ったものは休憩時間に

近くの不動産屋へ出向いて詳しい資料まで

貰ってるみたいでテーブル中に広げられた

物件紹介の紙を私にも見せてくる







ユウ「伊織の仕事も明日までだし土日に見に行こう」





「・・・・・・・・」





ユウ「・・・気に入らないか?」





「そうじゃないけど…

 優君の職場に近すぎじゃない?」





ユウ「あぁ…直ぐ行って直ぐ帰りたいからな」






やっぱり変わっていると思った…

普通は…会社のすぐ側なんて嫌がりそうなのに…

ましてや彼の会社は街中にありその近くの

物件となれば値段も一気に跳ね上がる…






「・・・・今住んでる周辺とかじゃダメなの?」





この辺りなら今彼の手にある資料と同じ条件の

部屋を探しても家賃が3万円位は下がりそうだ…






ユウ「・・・今の所は片道40分位はかかるだろ…」





「・・・・まぁーたしかによく電車止まるしね…」






月に数回は事故や天災で電車の遅れや

停止する事があり、皆んなタクシーやバスを

利用し、どうにかして出勤したりしていた…





( 彼は朝も早いし余計キツいかな… )






ユウ「・・・・・・・」





「・・・せめて…部屋の数減らせない?」






彼が取り寄せていた資料は全部広めの4LDK

で2人で住むには広すぎる…





ユウ「・・・・・・」






優君は何か言いたい時によく

口を少し尖らせてモゾモゾと口の中が動いている…





「ん??」





ユウ「・・・3人…」





「3人?」





ユウ「・・・・欲しいって…書いてただろ…」





「・・・・・・・」

 





どう反応していいのか、分からなかった…

彼が言っているのは多分

お見合いプロフィールに書いてあった事だろう…





優君とちゃんと真剣に付き合うって

決めたし、彼の事は嫌いじゃない…

最近じゃ前よりも彼を可愛いって思うし…





「・・・・(触れたいって思う)」





彼は私が何も言わないから

少し気まずそうに手に握っていた

資料に目を落としている…





私を好きでいてくれている彼と

彼を好きになり始めている私では

恋愛に対するスピードが合わない時がある…





急に子供の話をされて戸惑ったけど

一緒に住むのが嫌なわけじゃない…






「・・・・急に…産まれたりしないよ…

 最初は…2LDKでいいんじゃない?」







そう言って賃貸情報誌の

2LDKのページを開いて見せると






ユウ「・・・寝室はわけねぇからな」






そう言って荒く口付けてくる彼…

優君は前回の付き合いの時もそうだったけど

不安を感じたりすると肌を重ねたくなるみたいだ…






ユウ「今日はここに泊まる」





「・・・今日も…でしょ?」






ここ最近は私の部屋にずっと泊まっていて

着替えも置いたままだった





少し前はそんな事をされると窮屈だと…

面倒くさいと感じていたけど…

今はそんな風には思わなくなってきた





ユウ「好きだ…」





そう言いながら口付けてくる彼に

同じ言葉はまだ言ってあげれないけど

近い将来…きっと言う日はくる気がする…









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