第46話

〈伊織視点〉








オムライスを食べていると

彼が途中から口籠もりだしコッチを見て何か

言いたげにしているから「ん?」と聞くと





ユウ「・・・・部屋…どうする?」





と聞いてきて、引っ越しの話をする時は

いつもこんな雰囲気だなと思い

私も彼にずっと気になっていた事を聞いた…






「どーして引っ越しの話する時…不機嫌なの?」





ユウ「・・・・乗り気じゃなさそーだから…」






彼の返答を聞いてなんだか可笑しく思い

一人で「ふふ…」と笑っていると

彼はまた不機嫌そうな顔でコッチを見ている






「だって…乗り気じゃないの分かってるのに

 あんなに急かしてたんだと思ったらなんか…笑」






ユウ「・・・やっぱり乗り気じゃなかったのかよ…」






「・・・・優君…王子様すぎるんだもん…」






彼は眉間に寄せてオムライスを食べていた

手を止めて「王子様?」と

何の話だという顔をしてる






「御伽噺みたいな未来はやれないとか言ってたけど


 高収入で…

 若くて…こんなにカッコイイのに…

 私みたいな年上の余り物女を選ぶ理由が

 正直分からなかったのよ…」






ユウ「・・・・・・・」






「きっと山ちゃんから会社の話を聞いて

 同情している部分もあるのかなって??


 だから…いつか魔法は解けて王子様も

 どっか行っちゃうんじゃないかと思ったら…


 家具を全部捨てて引っ越すのには

 少し抵抗があったの……」






ユウ「・・・・・今は?」







スプーンをお皿に置いてから私の手を握って

聞いてくる彼の姿は…







ユウ「・・・・・・・」






「・・・優君は…やっぱり王子様だよ…」






ユウ「・・・御伽噺なら…」







上から握っていた手を動かして

私の指と指の間に彼の指がギュッと入ってきて

彼は「伊織」と私の名前を呼んだ







ユウ「御伽噺なら最後は…

  ハッピーエンドってやつだろ…

  俺は…そうであってほしいから


  お前が俺をそう思ってんなら

  ずっと〝王子様〟ってやつでいてやる」

 


 

 


「・・・・・・・・」






ユウ「・・・一緒に住もう…伊織…」







私はユウ君の部屋には引っ越さず…

新しい広い部屋に彼と一緒に引っ越す事にした




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