第43話

〈伊織視点〉







薄暗い部屋の中で目が覚めて(どこだっけ)と

思いながら目線だけを動かすとグチャグチャの

ベットシーツが目に入り(あぁ…)と

ここが何処なのかを思い出して

腕に力を入れて気怠い上半身を起こした





ユウ「水…飲むか?」


 



優君の声が聞こえて声のした方へ

顔を向けると洋服に着替えた彼が

ソファーに座っていた





「・・・・うん…」





私の返事を聞くと彼は立ち上がり

冷蔵庫から前回と同じミネラルウォーターの

ペットボトルを取り出してカキッと

蓋を開けてから私の前に差し出してきた





ペットボトルを受け取り冷えたソレを

喉に流し込んでいくと頭がスッキリしていき

段々と記憶がハッキリしてくる…





ユウ「・・・あんな抱き方して…悪かった…」





彼の言葉に顔を向けると

さっき座っていたソファーに腰を降ろしていて

目を合わせてくれずズット下を向いている





「・・・・・・・・」





意識を飛ばす前に見た彼の泣き顔を思い出して

彼の様子を伺うが、顔を全く上げてくれず

泣き止んだことしか分からなかった…





ユウ「・・・・シャワー浴びるか?」





体をグイッと曲げて後ろの時計を確認すると

いつの間にか12時20分になっていて

約束の一日が終わったんだと理解して

彼の方にまた向き直すと彼と目が合っあたが

直ぐに逸らされてしまった…





( ・・・相変わらず…面倒くさいなぁ…)





といつも通りに思ったけれど

彼を見る目は今までとは少し違って見えていた




ペットボトルをベッドの上に置き

飾り用のペラペラのシーツを引っ張ってから

それを体に巻いてベッドに目を向けると




ベッドの上は暴れた後のように乱れているし

さっき寝ていたシーツは所々が濡れていて

何故彼が部屋はダメだと言ったか

分かった気がした…




巻いたシーツを引きずって彼の座っている

ソファーの前に行くと彼は少し戸惑っていて

何も言ってこない…




彼をこんな風にしてしまったのは多分私だ…

先週の金曜日に言った言葉を

気にしているんだろう…




優君の肩に両手を置き

向き合う形で彼の足の上に座ると

驚きながらも私の体を両手で支えてきた




不安と困惑の混ざった目で私に向ける目を

私もしばらく見つめ返してから

顔を近づけて初めて私からキスをした






唇を離してから彼の顔を見ると

目を少し見開いていて

可愛くてクスッと笑ってから

また唇を寄せると私の体を支えている手に

力が入ってきてた






少し唇を開いて角度を変えてからチュッと口付けて

いると抱き寄せるようにグッと力が入って

彼の方が主導権を持ったキスに変わり

息継ぎも苦しくなってきた…






私の苦しくて漏れた声に反応し唇が離され

優君の目にまた涙が溜まっているの事に

気付いて彼の目元に軽く唇を当てた






「・・・・意外と泣き虫なんだね…笑」





ユウ「・・・誰が泣かせてんだよ…」





「・・・私?笑」



 


ユウ「分かってんなら…慰めろよ…」






さっきまでの落ち込んだ姿はなく

腰を抱き寄せて甘えた声で私の首に顔を預けてきた






「・・・・どうやって?」


 



ユウ「・・・欲しい言葉は…分かってるはずだ…」






彼の言葉を聞いて口籠もった…

私は数時間前の彼の泣きながらの告白を見て

彼の手をちゃんと握ってみようと思ったばかりだ…






「・・・・・それは…まだ…分からないけど…」






ユウ「・・・・・・」





「・・・優君の事を…

  ちゃんと知りたいって思ってる…」






今思っている気持ちを素直に言葉にしてみた

これが、今の私が彼に伝えられる言葉だから…






ユウ「・・今はそれでも…十分だ…」





「・・・・・・・・」





ユウ「いつかくれたらいい…この言葉は」





「え?」






彼は首に埋めていた顔をゆっくりと上げ

私の目を赤く濡れた目で見つめてきて

まつ毛には涙の小さな雫がついていて

綺麗だなと思い私も見つめ返していた…







ユウ「・・・好きだ……」






優君がハッキリと言葉にして

私、本人に言ったのはこれが初めてだ…






ユウ「・・・ずっと…好きだった…」






そう言って顔を近づけて

優しいキスを何度も、なんどもくれた…






( 私も…いつかこの言葉を…あなたに… )





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