第29話

〈伊織視点〉









ユウ「・・・部屋の退去連絡したか?」





「・・・・・・・・」





私が休みの日に優君は

定時で仕事を終わらせ

私のマンションに夕食を食べに来ていて

部屋を見渡しながら訪ねてきた





ユウ「・・・・・してないのか?」





「だっていつ引っ越すかも決まってないのに…」





ユウ「・・・・・・・・」





優君は私の顔をジッとみたまま黙っていて

引っ越しの話しをすると彼はいつも

何か言いたげに私の顔を見てくることがある…





「私は平日休みだし、優君は土日休みだから

  私が仕事辞めてからじゃなきゃ無理でしょ?」





ユウ「・・・いつ辞めるんだ?」





「あと3週間位だよ」





ユウ「荷物少しずつ移せよ…」






優君は変わっていると思う…

普通ならあと3週間しか一人の時間がないと

自分の時間を楽しみそうなのに

彼はまるで急かすように一緒に住もうとしてくる






「男の子達で集まって騒いだりしなくていいの?」





ユウ「・・・・・・・」






そしていつも彼は急に黙ったり

扱いづらくなる時がある…

初めて会った時は失礼なイメージだったけど

最近じゃ面倒くさいイメージの方が強い…




そんな彼と3週間後には同じマンションに

住むと思うと、私はギリギリまでこの

マンションで一人の時間を楽しみたかった…




内心で(疲れるなぁ…)とため息を吐きながら

立ち上がって食べた食器を片付けていると

優君も自分の食べた後の食器をキッチンまで

持って来てある物に目を止めた





ユウ「・・・・これ買ったのか?」






「え??」と優君が目を向けている方向に

目線を向けると仕事用の鞄から昨日買った

ゼ○シィの雑誌が見えていた






「あっ…あぁ…うん…昨日ね…」






昨日の仕事帰りに山ちゃんと駅のコンビニに

立ち寄った時に彼女が面白がって私の会計している

レジに「予習しなきゃ」と笑いながら持ってきて

そのまま買ったわいいけど…見てないままだ…




( 忘れてた… )





バックから雑誌を取り出して見ている優君の

顔はさっきみたに無表情じゃなく笑っていた…







「・・・・男の子側も見て楽しいものなの?」





ユウ「結婚は二人でするもんだろうが

  コレ見んのに女も男も関係ねーよ」






そう言ってテーブルに戻ると

面白そうに雑誌をめくっていた…





(・・・・・意外…あんなの見るんだ…)





喫茶店で結婚式の準備は手伝えないと言っていたし

結婚した女友達からは「旦那は何もしてない」と

みんなが皆んなそう言っていたから男の人は

興味なく形だけ式を挙げたいんだと思っていた…





食器を片付け終わり優君をチラッと見ると

まだ帰りそうにもないから二人分の珈琲を

煎れていると雑誌にむかって独り言を話している

声が聞こえてきてクスッと笑いがでた





(さっきまでの膨れっ面よりかはマシか…)


 



そう思いながら煎れた珈琲をトレーに乗せて

彼のいるテーブルに持って行くと





ユウ「コレはねーわ!笑」





と歯茎を見せたあの可愛い笑顔で特集ページの

企画を指差しながら言ってきた…

 


 


(・・・うん、やっぱり笑顔は可愛い… )





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