第22話
〈伊織視点〉
「お邪魔します…うちよりも全然広いよ!」
ユウ「今日連れて来ると思ってなかったから
きたねーぞー?笑
家電品はどうせ籍入れて引っ越す時に
買い直すだろうからうちのままでいいか?」
「うん、大丈夫!」
キッチンや脱衣所を見て周りながら
返事をすると突然腕を掴まれた
ユウ「家具とか…家電品どうすんだ?」
「え??一人暮らし用だし
粗大ゴミかリサイクルショップに
引き取ってもらうかだね?」
ユウ「・・・・そうか…」
「何かいるのあった??」
私の目を真っ直ぐ見つめて何か言いたげな
顔をしている優君は手を離して
「何か飲むか?」と冷蔵庫に歩いて行った…
ユウ「ビールでいいか?」
「えっ!?まだ15時よ??」
ユウ「明日から仕事だし、逆に夜の方が飲めねーよ」
「そうゆうもんなんだ…」
彼の部屋のリビングは
私の部屋のお気持ち程度の
リビングとは違ってとても広く…
二人掛け用のソファーとセンターテーブルも
ゆったりと置かれていた
「凄く羨ましい…
こんな大きなテレビの前で
ソファーに座ってビール飲みながら寛ぐなんて」
ユウ「一緒に住み出したらそうなるだろ?笑」
「・・・・なんか違う…」
ユウ「は??」
「一人暮らしでこのソファーに寛ぐからいいの!
二人で座って見たら…ちょっと窮屈?」
ユウ「・・・・あーそう…」
私の発言に気を悪くした彼は
DVDを再生しだして
ぶっきらぼうに「ほら」と
缶ビールを私に渡してきた…
映画が始まり最初のシーンを見ていると
隣で優君がククッと笑い出して
ユウ「こんなシーン初めて見るんじゃ何がなんだか
分からなかっただろう?笑」
「最初はね!笑 でもあの!!
パトカー達と走るシーンではもうハマってた!」
ユウ「あそこは俺もすげー好き」
なんとなく優君の「好き」と言いながら
歯茎を見せて笑う顔にくすぐったい感覚になり
パッと目を逸らした…
誤魔化すようにテレビに顔を向けていると
耳の横の髪を触られてビクッと反応してしまった…
「・・・・ツッ!?」
ビックリして彼の方に顔を向けると
頭の後ろに手を回されてキスをされた
角度を変えて繰り返すキスに優君の肩を叩いて
唇を離し彼を見上げると
ユウ「元カレと見た記憶は消してもらう」
そう言ってソファーに倒されて
映画の音が響く中彼に抱かれた…
この映画を初めて見たのは大学生の時で
当時付き合っていた社会人の彼氏と買い物に
出掛けていて特に買いたい物もなく
時間を持て余していたら
「新しいの公開されたんだ」
と彼氏が言い出して一緒に見る事になった
内心は、(内容分からんないから違うのにしようよ)
と思いノリ気ではなかったけど…
途中からは見入っててしまってもう夢中だった
優君が私を見たと言っていた全シリーズ
借りた日は仕事で気が滅入っていて
あのスカッとする映画が見たくなり仕事帰りに
レンタルショップへと寄った日だった…
裏面のあらすじを読みながら
元カレと一緒に見た巻を探して
一人で見ながらも
所々のシーンで彼の事を思い出していた…
( だけど… )
ユウ「元カレと見た記憶は消してもらう」
優君の宣言通り・・・
今後はこの映画を見ても元カレではなく
今目の前にいる、優君を思い出すだろう…
ユウ「・・・ちゃんと映画にも集中しろよ?笑」
そう言いながら揺れる身体が止まる事はなく
耳には私が好きだと言っていた最後の見せ場の
アクションシーンの音が聞こえてくるけど
集中なんて出来なかった…
( ・・・こんな所も年下って感じがする… )
・
・
・
「・・・・・ソファーは嫌…」
情事後に乱れた服を整えながら優君に
ぼやくようにして言えば彼は笑って
冷蔵庫の中を覗きながら「夕飯どうする」
と声をかけてきた
部屋に飾られている時計を見れば
18時前で…帰って何かあったかなと
自分の冷蔵庫の中を思い出していると
ユウ「・・・・まさか帰る気じゃねーよな?」
優君の言葉に「え?」と顔を向ければ
彼は少し眉間にシワを寄せていて
ユウ「・・・飯までは・・食って帰れよな…」
と少し拗ねたような態度を見せていて
(あぁーこうゆう所は本当に年下君だ…)と
少し面倒くささを感じながら立ち上がり
拗ねている彼のいるキッチンに近づいて行き
一緒に冷蔵庫の中を覗いた
「・・・・食って帰れって…何もないじゃない」
ユウ「・・・・・・」
彼はまた首の後ろに手を当てて
バツの悪そうな顔をしている…
「・・・おつまみとビールばっかりね?」
ユウ「・・・・手料理なんか食わして?笑」
冷蔵庫の中に呆れながらそう言うと彼は
開き直ったのか可愛くそう言ってきた
( ・・・可愛いけど…面倒くさいなぁ… )
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