第16話

〈山下視点〉







ジン「何か頼むか…まだ入るでしょ?」





山「当たり前です!ガッツリしたのがいいです!」





ナオキ「前回とは別人みたいだなー?笑」





山「相席屋の後の女の子はあんなものですよ?笑」





ナオキ「そうゆうものなのか!?

  気をつけないと怖いね?笑

  先輩とはよく行ってたの?」





山「昔は良く行ってましたねー!

  出来始めた時とかは毎日行って

  美味しいものご馳走してもらってました」





ジン「あの日は久々だったんだ?」






仁さんの言葉であの日誘った理由も

今から話す内容に近いなと思い少し口籠もった…






ユウ「・・・・・・・」






3人は何となく話をメニューに逸らしてから

注文をしてどうでも良い雑談をしながら

頼んだ食事が届くのを待っていた…





ジン「いやー以外とカラオケ屋の飯も美味いな」






と言いながらカルボナーラを食べる

仁さんを見て笑いが出た…

着てるスーツや持ち物を見ても

いい会社だと分かるし普段はもっと

美味しい物を食べている筈だ…

 






山「・・・うちのお店…去年移転したんですよ…」






ジン「移転?」






山「前はもっと小さい店舗で…

  スタッフも和気藹々としてて…

  売り上げもソコソコいい方で…」







こんな会社の内情を外に話すなんて

本当はいけないんだろうけど…

顔を優さんに向けると

ヤッパリ真剣な顔をしてコッチを見ているから…



( 賭けてみたくなった… )






山「・・・移転する前に、前の店長と副店長が

  二人同時に結婚退職する事になって…

  移転オープンしてからは…

  伊織さんが店長で私が副店長として

  働くことになったんですけど…

 

  店舗規模も広くなって…テナント家賃とかが

  大幅に高くなったんですけど…

  機械も、スタッフも前の店舗のままで…」







ナオキ「・・・それは…売り上げ伸びないね…」







山「はい…前の店舗と同じ売り上げは出せても

  それ以上は中々で…

  社長はどうにか売り上げ上げようと…

  知り合いの会社から色々と物販を

  仕入れたりするんですけど…


  正直脱毛の予約を一日回すだけで底一杯で

  物販販売にさく人員も時間もなくて

  ドンドン売り上げも落ちていくし…


  店長である伊織さんがいつも…

  責任を…とらされていて」

 




ジン「・・・責任って?」






山「・・・・コースとか…売れてない物販を…

  まとめてセット購入したりとか…」





ナオキ「え!?今時あるの?」






山「・・・・ありますね…

  あの日も…相席屋で会った日も

  社長に呼び出されて…

  先輩の気晴らしになればと思って

  私が誘って連れて行ったんです…」





ユウ「・・・・だからか…」





山「・・・・え?」






優さんは何か呟いて何かを考えてるようだった

もし、優さんが先輩と付き合いたいなら

全てを知ったうえで近づいてほしいと思ったから

全部話すべきだと思った…



今日、先輩は日曜日にお見合いパーティーみたいなのに行きたいから休んでもいいかと尋ねてきた…



話を聞いて無理だと思うなら、もう先輩に

近づいたりしないでほしいし…




( 幸せになってほしいから… )







山「・・・泣いてたんです…この前…」





ナオキ「そりゃー泣きたくもなるよ…」





山「穴埋めで泣いてる姿なんて見た事ないですよ…

 

  コース契約を取って…

  初めて泣いてるのを見ました…

  相手は伊織さんの前からのお客様で…

  社長から言われて…

  無理なコース契約をさせてしまったから…」





ユウ「・・・それ…火曜日の話か?」





山「・・・・そうです…」






ヤッパリ会ってたんだと思った…

そして先輩は内容は話さなくても優さんに

少しだけ弱さを見せたんだろう…





山「・・・・先輩にはもう…辞めてほしいです…」





ユウ「・・・・・・」





山「だから…日曜日のお休みも許可しました」





ユウ「・・・・・休み?」





ナオキ「日曜日って1番の稼ぎ時じゃないの?」





山「えぇ、だから普通休むなんてありえません…

  日曜日に…婚活パーティーに行ってもらうんです」






ジン「こっ婚活パーティー!?」






ユウ「・・・・・・」






山「男性参加者は35歳以上らしいですし

  パッパッと結婚してくれそうじゃないですか」






ナオキ「・・・・それで35歳以上か…」






山「・・・・ただの軽い気持ちなら…

  邪魔しないであげてください…」






優さんの方に顔を向けてそう言うと

彼は目を逸らさず私を見たまま






ユウ「あいつが辞めたら…お前どーすんだ?」






普通に考えたら店長である先輩が辞めたら

副店長の私が店長に就いて今の伊織さんみたいに

責任を取らされるんだろう…



そして、それを分かっているから

私に問いかけているんだと理解した…






山「辞めますよ?笑

  むしろ今まで伊織さんがいたから

  私も辞めないで耐えてたんですから

  他のスタッフと皆んなで…


  お客様達には…申し訳ないですけど…

  誰かが残ったらまた先輩みたいになるから…」






ジン「・・・ずいぶんと信頼してるんだね?」






山「伊織さんは私が入った時の教育係で

  仕事は勿論…プライベートの遊び方も

  沢山教えてもらったんですよ…笑


  火曜日のコース契約も…

  出来なければ私にセット購入をさせるって

  社長が脅すような事を言ったから…


  今いるスタッフは皆んな伊織さんの事を

  尊敬してますし…大好きだから…」





ユウ「・・・そうか…」





 

帰りに優さんに

日曜日の婚活パーティーの場所と時間を伝えた…





( たぶん…あの質問をしてきたって事は…)





電車の窓ガラスに映る自分の顔は笑っていて

月曜日の朝出勤してきた先輩は幸せそうだった…





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