第15話

〈山下視点〉





山「・・・アレ?」






仕事終わりに少し甘い物をと駅にある

ドーナツショップに立ち寄り通りに面した

ガラス張りの席に座っていると

少し前に相席屋で知り合ったサラリーマン達が

歩いているのが目に入ってきた





(・・・・脈なさげだったし、いいか…)





一つ年上の直樹さんに軽い好意を抱いていたけど

相手にその気はないみたいだったし…

手を振るような関係でもないなと思い

手に持っていたドーナツを一口食べて

顔を上げると優さんがコッチを見て

先を歩く直樹さん達に何か

声を掛けているのが見えた…






山「えっ…何??」






直ぐにサラリーマン3人組は

ドーナツ屋の入り口から手を振りながら入ってきた






ジン「久しぶりだねー?ひとみちゃん!」





山「あぁーそうですね!今帰りですか?」





ジン「そう、せっかくの週末だし3人で飲みに

  行こうかと思って歩いてたら

  ひとみちゃんいるから驚いたよ!」





山「土日休みのお仕事が羨ましいですよ」





ジン「そっかー!

  ひとみちゃん達は土日はお仕事か!」






3人は私の席に腰を降ろしてきて

フレンドリーに話し掛けてくる仁さんを見ながら

(どうゆうつもりだろう?)と様子を伺った






ユウ「・・・今日は…先輩は一緒じゃねーのか?」





山「・・・・(あーそうゆう事ね!)」






優さんは先輩を気に入っていて

返したお金の間に自分の携帯番号を

挟んでいた事を思い出し

何故彼が私を見つけてわざわざ飲みに行く

前にドーナツ屋に入って来たのかが分かった…





ユウ「・・・・・・」





何も答えないでアイスカフェラテの

入ったグラスを持ち上げてストローを吸う

私を無言でみている優さんに

どうしようかと考えていた…






直樹「今日は一人なんだね?お仕事終わって

  お腹空いちゃったのかな?」





山「・・・・・・・」






優さんの質問に答えない私に

直樹さんがさりげなく同じ質問をしてきた…

私が好意を寄せ掛けていた事を知っていて

自分が聞いたら答えるかと思ったようだ…




チラッと優さんに目線を変えると

さっきと同じ真顔でコッチを見ていて

早く答えろと思っているのがよく伝わった…





(・・多分他の2人も優さんの気持ちを…)






山「・・・先輩は今日は早番で先に帰りました」





ジン「早番とかあるんだね?」





山「・・・・先輩は…無理ですよ?」






先輩がいないと分かると

ガラス張りの向こうに顔を逸らして

明らかにガッカリとしている様子の

優さんを見てそう言うと

彼は直ぐに顔をコッチに向けてきた





ジン「無理??なんで?」





山「・・・・年下は対象外です…」





ユウ「・・・・・・・」





ナオキ「年上としか付き合わないの?」





山「んー・・・元々同い年か年上の人としか

  付き合ってなかったと思いますけど…

  今は35歳以上しかダメらしいです」





ユウ「・・・35!?・・30歳じゃなかったか?」





山「・・・・あの後会ったんですか?」





先輩は優さんの番号を直ぐに

シュレッダーにかけていたし

二人が会ったりする事は無いと

思っていたから少し驚いた…





ユウ「・・・・・・」





山「・・はぁー・・

  肝心な所はだんまりなんですね」





ジン「なんで35歳?結婚したいとか?」





山「・・・・私も先輩には…

  早く幸せになってほしいですし、ちゃんと

  未来を考えてる相手と付き合って欲しいし…


  ただ興味あるとか、とりあえず付き合ってから

  みたいな人は無理としか言えません…」

 

 



ユウ「・・・・仕事…キツイのか?」






優さんの言葉に驚いて顔を上げた…

先輩は何処で誰が聞いているか分からないからと

あまり仕事の話を外でしない人だから



もし…先輩と会っていて

あの伊織さんが…

会社の弱音を吐いているんだとしたら…






山「・・・・・・・・」





ユウ「・・後輩の教育もしっかりしてるみてーだな」






今の言葉でハッキリとした内容までは

話していない事が分かり(伊織さんらしいな…)

と何だかクスッと笑いが出てきた



私はドーナツも食べ終わり

空になったトレーを持って立ち上がった






ユウ「・・・・・・・」





ジン「ん!?帰っちゃうの?」





バックを肩にかけて帰る身支度をしている私に

3人は皆んな戸惑った表情でコッチを見ている






山「・・・・連れてってください…カラオケに」





ジン「え??カラオケ??」





山「・・・一応・・聞かれてはまずい話ですから」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る