第12話

〈伊織視点〉







小さなホテルの多目的ホールを使って

行われるみたいで、プロフィール記載もあるかる

早めに来場するよう書かれていた





「・・・50分前って…早すぎかな?」





ホテルの入り口前に着き

中の様子を伺いながら入って行き

今日参加する集まりの名前が書かれた

案内ボードを見つけて足を進めて行いく





女「こんにちは!参加者様ですか?」




「あっはい…早すぎですかね?」





部屋の扉の前に薄いピンク色のスーツを着た

女性が立っていて声をかけてきたから

スタッフだろうと思い受け応えた






女「いえ、もう来られてる方も

  何名かいらっしゃいますし

  プロフィールの記載もありますから

  早めに来ていただいた方が助かります」






スタッフの言葉に少し安心し

プロフィール用紙とペンを受け取り

部屋の中を覗いてみた…





(・・・・ほんとだ…結構いる…)





男性は…思っていたよりも年齢層は上だけど

なんて言うか…本当に結婚を前提で

付き合ってくれそうな感じだった…





(・・・・中で書くのもなぁ…)





扉の前から動かずプロフィール用紙を眺めると

年収や休日の過ごし方

理想の家庭像の記載欄があり

同性から書いてる内容を見られるのは

なんだか恥ずかしい気がした







女「中にはロビーのテーブルとか

  一階の喫茶店で書かれる方もいますよ?」




「えっ…いいんですか?じゃぁ…そうします」





女「お時間より

  前に戻ってもらえば大丈夫ですので」






ロビーも誰に見られているか分からないから

一階の喫茶店で書く事を伝え

その場を離れていき、ホテルの道路側にある

小さな喫茶店に入って行った





一番奥の人気の無い席に腰を降ろしてから

アイスコーヒーを注文しプロフィールの用紙を見た




(・・・・・貯金…嘘書いてもバレるしな…)





アイスコーヒーが届けられてから

ボールペンをカチッと出し記入していき

(多少は嘘もokだよね?)と少しだけ

男性ウケの良さそうな事を書いて

空欄がないよう埋めると「よしっ」と言って

ボールペンを置いて書いた内容を見直した





(コレがダメでも…また参加すればいいしね…)





ガタッと椅子を引く音とテーブルの振動を感じて

用紙から顔をあげると…

また、彼がいた…






「・・・・・えっ?

  ・・・・・どうして…ここに?」





ユウ「・・・・・書けたか?」




 


そう言って私の手からプロフィール用紙を

取り上げて黙読しているようだった





ユウ「誕生日来月かよ…」




「ちょっと、返して!」





用紙を返してもらおうと手を伸ばすけど

体を横に向けてそうはさせないようにする彼に

「はぁ…」と小さく息を溢してから

諦めてアイスコーヒーのストローに口をつけた





ユウ「好きな映画…ラブストーリーねぇ…」





そう言いながらコッチをチラッと見る顔は

なんだか嘘だろとでも言われてるみたいで

「別にいいでしょ」と言って目線を逸らした…





ユウ「子供3人も欲しいのか?笑」




「もう!!いいでしょ、返して!」





お見合いプロフィールを知ってる人間に

見られるのってなんか凄い恥ずかしい…

ましてや相手がこんな失礼なヤツ…





ユウ「・・・・ボールペン貸せ」





「え?」と聞き直すと彼は手を伸ばして

私の前に置いてあるボールペンを手に取り

プロフィール用紙に書き込みだしたから

慌てて「やめてよ!」と声を上げるが

彼は気にする事なくドンドン何かを書いている…






「最悪…」そう呟いて椅子に深く腰をかけて

(もう一枚貰えばいいか)と疲れていると

ボールペンをカチッと終う音が聞こえ

「ほら」と紙を私の前に置いた





「・・・・君ホントに最低だね…」



 


そう言ってからプロフィール用紙に目線を落とすと

テッキリふざけて

イタズラ書きをしたのかと思っていた

用紙には私の書いている文字の上の方に

おそらく…

彼のお見合いプロフィールが書かれていた






「・・・え?」





YG「・・・・読めよ」





そう言って私のアイスコーヒーを手に取り

勝手に飲み出していた





「ちょっと」と文句を言いながら

プロフィールを読んでいくと…






「・・・・住所が…近い?」





ユウ「・・・・・・・」






「・・好きな映画も・・」





ユウ「・・・・・・」






私は顔を上げて彼を見た…

彼…中須…優君は…

面白そうな笑顔でコッチを見ている







ユウ「ラブストーリーなんて

  借りてんの見た事ねーぞ?笑」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る