第19話:クーラちゃんが女の子になった!?
「……美味い」
山田が作ったのはオムライスだった。
ちゃんとチキンライスから作って、店で食べるオムライスみたいに卵で綴じてあったし。
卵の味付けも俺好みだ。
しょっぱい方が好きだって言ったことあるっけ。それとも自分が好きなのを作ったら偶然俺好みだったのだろうか。
「ふっふっふー。そうでしょうそうでしょう。これでも料理には自信があるんです!」
「そんなこと言ってたな、この間も。いい奥さんになれるんじゃないか」
「……じゃあ先輩が貰ってくださいよー」
「なんでだよ」
「ぶー、ケチ。どうせ誰にでもそういうこと言ってるんでしょう、先輩」
なんだそりゃ。
ああ、待てよ。
そういえばこういうのも最近だとセクハラ認定されたりするのだろうか。
山田は特に気にしていなかったようだが、誰もがそういうわけではないのだろう。
つまり誰にでも言うのは良くないぞ、というのを言外に示してくれているのか。
なるほど、なかなか先輩思いの後輩じゃないか。
「わかった。お前以外には言わないようにしよう」
「んふっ!? げほっ、えほっ、けほっ」
「……大丈夫か?」
どうやら米粒でも気管に入ってむせたようではげしく咳をする山田にティッシュを渡す。
「うぅ……ずびばぜん゛……」
「言葉全部に濁点がついてるぞ」
しばらくして。
飯を食べ終わり、食器の洗い物までしようとした山田を流石に引き止めてなんとか食洗機に食器をぶち込んだ後、そろそろ帰るのかなと思っていた山田が
しばらくは助けを求めるようにじっとこちらを見ていたクーラだったが、姿が猫になると本能に抗えないのかどうやらうとうとしているようだ。
あのまま寝るんじゃないだろうな。
猫でいる時間が長すぎて心まで猫になってしまったのかもしれない。
「はあ、クーラちゃん可愛い……先輩、私ここに住みます」
「ふざけんな」
こちとらクーラだけでも手いっぱいなのだ。
これ以上小動物みたいな奴が増えても困る。
本人にそんなことを言ったら間違いなくブチ切れるだろうが、こっちとしてはリアルに猫が一匹うちに転がり込んできたような気分なのだから。
それにしても、あいつ本当に寝そうだが大丈夫なのだろうか。
いや、流石に心まで猫になってしまった云々は冗談だとしても、寝てしまうことによって変身が解ける可能性は――
俺がそう危惧した時だった。
ひゅるん、と影のようなものが黒猫を纏って、次の瞬間には銀髪でドレス姿の少女が山田の膝枕で寝ている状態になった。
……え?
「おまっ……!!」
「え、ええええ!? クーラちゃんが女の子になった!?」
あ、駄目だこれ。
もう絶対誤魔化せない。
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