第12話:我をハメたな貴様!
「あー、いいお湯だった。褒めて使わすぞ我が眷属よ」
「ボタン押せば勝手に適温になるんだよ」
ほくほく顔で風呂から出てきたクーラはドレスではなく、ネグリジェみたいな格好になっていた。
「一応俺も男なんだが、お前は気にしないのか」
「なっ!? ま、まさか眷属の分際で我の体に興奮しておるのか?」
俺がそう指摘するとそこでようやく恥ずかしさが出てきたのか自分の腕で体を隠すようにするクーラ。
まあ隠れてはいないのだが。
「いや、全く興奮はしないが。俺はロリコンじゃないからな」
「貴様、我が誰なのかを忘れていないか?」
「1014年生きた吸血鬼様だろ。でも見た目は完全に10代半ばってところだ」
要するに姪っ子みたいなものなんじゃないか?
姪っ子いないから知らないけど。
「1014年は余計だ。次言ったら本当に頭をスイカみたいに割るからな」
「…………」
本気でやれそうなのがリアルに怖い。
「我は吸血鬼だと言っただろう――こんなことだってできる」
ひゅっと影のようなものがクーラを包む。
先程猫に化けてもらった時と同じ現象だ。
そして次に現れたクーラは――
長い銀髪に豊満な肉体を持つとんでもない美貌の妙齢な女性へと変化していた。
なるほど、クーラが成長したらこのような姿になるのだろう。
ご丁寧にネグリジェのサイズまで変わっている。
「お前……」
「ふん、どうだ。これでそんな興味なさげにしているのは無理だろう、不可能だろう!」
「いや、むしろお前はそういう目で見られたいのか?」
「…………あ」
影がクーラを包み、元の格好……というか、ネグリジェではなく普通の黄色いパジャマのような格好になっていた。
昼間にテレビか何かで見たものを際限したのだろう。
そして恥ずかしそうに口をわなわなさせていた。
元々色白なので顔が赤くなっていると、赤というよりはピンクっぽい感じになるな、こいつ。
「わ、我をハメたな貴様! 下僕のくせに!」
「お前が勝手に自滅しただけだと思うんだが……」
それにしても中身がクーラだとわかっているとあれだけ色っぽくても特になんとも思わなかったな。
いや、長時間見ていればどうかはわからないが、少なくともあの一瞬では何を馬鹿やってるんだこいつはという感覚の方が勝った。
俺がまだ20代前半くらいの頃ならば話は違ったのかもしれないが。
別に会社がブラックというわけではない。
仕事が嫌というわけでもない。
だが、いつからかただ仕事をして帰ってきて、仕事の為に眠って起きたらまた仕事へ行って、というサイクルを繰り返している内に日常の刺激も弱く感じるようになっていったのだ。
「なあ、お前ってなんでそんくらいの見た目なんだ? もう1000年くらい経ったら大人の姿になるのか?」
「……いや、我が吸血鬼となった時の姿から変わっていないだけだから、あと1000年経とうが2000年経とうが姿は変わらん。なんだ、やっぱり大人の姿の我に興奮したのか?」
「いや全く。ただ気になっただけだ」
「まさか貴様……不能なのか?」
「いや、別にそんなことはない」
さっきのも中身がクーラじゃなければ普通に興奮していただろう。
中身がクーラじゃなければ、な。
「はあ……」
「何故溜め息をついたのだ!?」
「こっちの事情だ、気にするな」
「気にするわー!」
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