第3話 シグリズ:大ピンチ
俺とナジャフが長竿を伸ばし、先端で床を叩きながら一行は
「隊長、先ほどのような突出は
半ば怒り半ばあきれた口調でナジャフは嫌味を言う。
「誰に被害が出たわけでもないし、とくに怒られる筋合いはないと思うんだけどな」
「あそこに
「功を焦ったわけじゃなく普通に走ったつもりだ。ただふたりの足が遅かっただけじゃないか」
ナジャフは深いため息を吐いた。
「〈勇者隊〉としての
「だからこうやって床を
この行為に飽きてきて嫌気を感じさせながら答えた。
「これは
言い返そうと思った矢先、洞窟が大きく曲がった先に人の手で作られた大きな
「ここで待機してください。私が様子を見てまいります」
ナジャフは用心しながら
「この
「今〈魔法探知〉の呪文をかけてみたが、魔法の仕掛けはされていないな」
カセリアは事もなげに答える。
その間にもナジャフは
そして納得した顔で俺たちの元へ戻ってきた。
「
「なら〈
カセリアが杖を
「いえ、この程度の
わかったとカセリアが答えるのを聞くと、ナジャフは〈収納の指輪〉から
「賢者って皆こうなのかな。この姿を見ていると賢者か空き巣狙いかわからないよ」
さっきの嫌味を
ナジャフが警戒態勢をとるように伝え、慎重に脇に備え付けてある
何かが出てくる様子は見受けられない。
ナジャフは俺から予備の松明を受け取って火を移し、それを中へ放り込んだ。
暗闇を照らした松明の光を確認する。
映った像からするとどうやらそこは地下墓地のようである。
「先ほどよりも強い
エイシャが隊員以外に聞こえないほど小さくささやく。
「ここに
「いえ、おそらく違うでしょう。奥にもっと大きな
エイシャにならって小声で問いかけた俺を彼女は軽くいなした。
「やはりグレルかもしれませんね」
スカールとの戦いでレフォアとグラーフの力量は見切った。
隊員の力量を正確に判断できなければ隊長失格である。
しかしこと自身の力量に関しては見極められやしないものだ。
レフォアとグラーフのふたりならばどんな無茶でもやってのけるだろう。
今戦っても勝算はある。
そう思って、
「悩んでいてもしょうがない。いくぞ!」
身を
「おいっ、ちょっと待て!」
後ろでカセリアが制止するが、無視するように突き進む。
レフォアとグラーフがあとを追いかけてきた。
こうなればもはや乱戦あるのみ。
墓地の地面からは崩れた肉体を保つ魔物が次々と姿を現してきた。
「うおりゃー!」
目の前の一体へ向け、かけ声とともに魔剣を
強い。
そう思い、もう
「痛っ!」
後ろから駆けつけてきたレフォアが〈
グラーフも追いついてきて自慢の奥義を小出しにしては魔物を一体ずつ〈両断〉していく。
カセリアが手短に呪文を唱える。
「万能なるマナよ。炎となりて彼の地で
火球が一直線に敵中へ飛んでいき一息に爆発を引き起こした。
不死の魔物はえてして火に弱い。グレルとて例外ではなかった。五体の魔物が火だるまになってのた打ちまわっている。
カセリアにより企図された爆発に巻き込まれた俺は、吹き飛ばされて転がった。幸い不死の魔物の牙が外れた。
そのおかげで後ろからナジャフの叫び声に気づいた。
「隊長! 戻ってきなさい!」
そこへタイミングよく駆けつけたエイシャが患部に聖水をかけて清め、俺を支えながらナジャフたちが待つ位置まで帰り着いた。
カセリアは俺の様子を見て冷静に判断した。
「こいつが
エイシャはすかさず〈解毒〉の
〈神の聖印〉がまばゆく光り輝く。
効果はたちどころに現れた。体の自由が戻ってくる感触を覚える。
次いで〈治癒〉の
そのさなかにもカセリアによる火の魔法が飛び交い、レフォア、グラーフの奮戦が続いていた。
「これで突出の怖さがおわかりになりましたか、隊長」
ナジャフの声色は厳しいが子どもを諭すような口調である。
「行ってくる」と言い残すと再び戦線へ
カセリア、レフォア、グラーフにより三十体いたグレルも八体まで減っていた。火球の魔法は敵が密集していないと効率よく発揮できない。
それに気づいたエイシャは、呼吸を整えて次の
「ターン・アンデッド!」
するとグレルたちの動きがぴたりと止まった。
うち五体がその場で崩れ去る。
残る三体をレフォアとグラーフ、そして遅れて駆けつけた俺がたちどころに始末した。
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