第43話(第一章最終話):王都へ

「いやぁ、さすがは王国騎士修道会だな。あんなに気持ちよく眠れたのは久しぶりだ」


「そうだな」


「うん」


「そうですね」


俺はすっきりしていたが、皆どこか眠そうだった。まだ疲れが抜け切れていないのだろう。俺たちはハードヘッドと別れ、王都へ向かって歩いていた。もうすっかりお馴染みの光景だ。しかし、一つだけ違う点があった。隣にノエルがいることだ。さっきからノエルは、バサバサと髪をなびかせている。暑いのだろうか。


「ノエル、王都はどういうところなんだ?」


「貴族が偉そうにしている街だ。まぁ、住民のほとんどは貴族なんだがな。いつも宝石だとか服だとかを、互いに見せびらかしあっている。見ていて気持ちの良いものではないな」


確か、ノエルも貴族の出身だったはずだ。しかし、自分の生い立ちを自慢するようなことは一度もしなかった。


「そうなのか、王都は俺も初めて行くな」


「アスカさん、私も王都なんて初めて行きます」


やたらとティルーはニコニコしていた。何か嬉しいことがあったようだ。


「そうだ、ハードヘッドたちが菓子をくれたぞ」


俺はカバンから菓子をいくつか取り出した。旅の道中にでもどうぞ、と渡されたのだ。せっかくなので、一つ食べてみる。とても甘くて美味しかった。


「おっ、これは美味いな。みんなもどうだ?」


「私にもちょうだい、アスカ」


「一口頂きたいです」


俺はナディアとティルーに菓子を渡す。二人は揃って口に入れた。


「「甘くておいし~い」」


だが、ノエルは遠くを見ていてまるで興味を示さない。


「ノエルもどうだ?甘くて美味しいぞ」


「……私はいらない」


子どものときは、よく一緒に甘い物を食べていたが。


「一口くらい……」


「いらないと言っているだろ!」


ノエルに鋭い声で断られた。俺は慌てて菓子をしまう。


「あ、あぁ、すまない。無理にすすめて。配慮が足りなかったな」


もしかしたら、成長して嫌いになったのかもしれない。


「……それはそうと何しているんだ、ナディア」


ナディアはしきりに、肩を張ったり肩をすぼめたりと謎の運動をしている。


「あ、いや、こうするとおっ……が大きくなるって、本に……」


しかし急にボソボソしだしたので、よく聞こえなかった。


「さて、今度は何もないといいのだがな……」


この先どんなことが待ち構えているかわからない。ゴイニアなんて辺境の地に、魔族四皇が攻めてきたのだ。王都で何かしらの動きがあるかもしれない。それに修道会の本拠地ならば、“魔王”に関する情報も得られそうだ。色々な思いを胸に抱え、俺たちは王都へ向かっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る