【呪い】のせいで無能と思われていた俺は、勇者パーティー追放された。~【呪い】の制約で仕方なくお前らと同じタイミングで敵を倒しては、お前らを回復させていたのだが……俺がいなくなってホントに大丈夫か!?~
第40話:女たちの苦悩 Ⅰ(Side:ノエル③)
第40話:女たちの苦悩 Ⅰ(Side:ノエル③)
「おやすみ」
私は部屋へ入り、ベッドに腰掛ける。
「ふぅ……」
とてもじゃないが、すぐに寝れるような気分ではない。心の中で嬉しさや後悔、嫉妬などが複雑に混ざり合っている。これほどまでに気持ちが高ぶっているのは、初めてだ。
「ようやく……アスカに会えた」
8年ぶりの再会……か。よくもまぁこんなに長い間、一人の男を想っていたものだ。窓から空を見ながら、私は昔のことを思い出す。
両親の親交が深かった私たちは、年が同じなこともあり一緒にいることが多かった。互いに剣術や魔法を磨く日々を過ごしていた。
「あの頃は、なんだかんだ楽しかった」
ある時、冒険者が仕留め損なったモンスターが、森へ逃げ込むのが見えた。幼少期から責任感のようなものが強かった私は、未熟にも関わらず後を追ってしまったのだ。このまま逃がすと、誰かが襲われるかもしれないとでも考えたのだろう。案の定、モンスターに返り討ちにされ、あわや殺されそうになった。それを助けたのがアスカだった。アスカはその時点で、超一流の力量を身に着けていた。
「本当に、アスカに助けられてばかりだ。あの時、私も人を助けられるようになりたいと思ったんだな」
もっと強くなるため、私は王国騎士修道会に入ると決めた。しかし、アスカは冒険者の道を選んだ。私はアスカと一緒に修道会へ行きたかったが、泣く泣く諦めた。別れ際、いつまでも泣いている私を慰めようと、アスカは私の髪をきれいだと褒めてくれた。
「それからだ、私が髪を伸ばし始めたのは」
修道会にいる騎士は、圧倒的に男が多い。女というだけでバカにされる。私の髪についても、ケチをつけられることが多かった。しかし、そんな奴らは片っ端から叩きのめしてきた。アスカに褒められた髪は、何が何でも短くしたくなかった。もちろん、髪が短い方が安全だが、長くても戦えるように更なる鍛錬を積んだのだ。
「もう私の髪は褒めてくれないのだろうか。それにしても、アスカはやっぱりすごかったな。まさか、呪文詠唱すら必要なくなっているとは……」
私はアスカに追いつこうと、今まで必死にやってきた。しかし、実力差は広がる一方だ。ヴァンパイア伯爵と戦っているとき、アスカの背中がはるか遠くに見えた。魔法だけじゃない、剣術だって相当なものだ。私なんか、足元にも及ばない。
「無様な私を見て、アスカは幻滅したかもしれない。もっと日々の修行に精を出せばよかった……」
決して怠けていたわけではない。しかし、私は今までの努力が足りなかったという、後悔の念に押しつぶされそうだった。いや、と私は頭を振る。過去を悔やんでいても仕方がない。運よく王都まで同行できることになったのだ。
「この旅の道中で、挽回すれば大丈夫だ」
とそこで、アスカの周りにいた女たちが頭の中に浮かんできた。
「それはそうと、アスカの奴!私がいないのを良いことに、女をはべらして!」
あのナディアとかいう猫人族の少女。なんだ、あれは。小動物のような、守りたくなる可愛さを持っている。そんなもの、私には絶対にない。男はみんな、ああいう女が好きと相場は決まっている。
そして、ティルーと名乗ったウンディーネの娘。全身から清楚さがにじみ出ていた。雰囲気だけじゃない、見た目も聖女のような美しさだ。
「それに比べて私ときたら……」
さっきアスカに言った言葉が思い出される。
(私が一緒に……行ってやってもいい)
行ってやってもいい……。なんだ、その偉そうな態度は。もうちょっと素直になれないのか。そもそも、おい!とかお前!なんて言葉遣いがまずダメだ。私は男か?もっと可愛く話せ。
「そういえば、ナディアもティルーも細くてスラッとしていたな」
私は部屋に置かれている鏡の前に立つ。見慣れた自分の体が映った。しかし、なんとなく太ったような……。
「……もしかして、最近甘い物を食べ過ぎているせいか!?」
疲れたときなんかに、ついつい食べてしまうのだ。私は慌てて自分の脇腹をつまんだ。心なしか、少しプニッとしている気がする。
「…………今後は少し、甘い物は控えよう」
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