【呪い】のせいで無能と思われていた俺は、勇者パーティー追放された。~【呪い】の制約で仕方なくお前らと同じタイミングで敵を倒しては、お前らを回復させていたのだが……俺がいなくなってホントに大丈夫か!?~
第34話:去りゆくメンバー(Side:ゴーマン⑪)
第34話:去りゆくメンバー(Side:ゴーマン⑪)
「ぐっ……ここは、どこだ……?」
目が覚めると、俺は固い地面に横たわっていた。頭の後ろがズキズキする。ちくしょう、あの野郎思いっきり殴りやがって。だが、もう縛られてはいないようだ。体が動かせる。
「気がついたか、ゴーマン」
「ゴーマンさん……」
「とりあえずは生きているみたいね」
俺の目の前に、パーティーメンバーたちが座っている。しかし、ここはサーブルグの冒険者ギルドではなかった。辺りを見回しても、広大な荒地が広がっているだけだ。草一本すら生えていないし、ネズミ一匹すらいない。
「お、お前ら、ここはどこなんだ?サーブルグのギルドじゃないのか?シリアスは?」
「ここはレンブルク王国の国境だよ。あたしたちは、本当に追放されちゃったってわけ」
「国境だって?ここが?」
バルバラは何を言っているのだ。だが周囲の状況から見て、嘘なんかついていないと嫌でもわかった。
「ぼ、冒険者資格はどうなったんだ?」
「全員剥奪されてしまったぞ。お前のせいでな」
「なんだと!クソッ、シリアスのバカ野郎!おい!すぐにギルドに戻るぞ!」
「戻ってどうするのですか?」
カトリーナが冷めた目で話してきた。他のメンバーたちも同じ目をしている。
「どうするのですか?って、冒険者資格を取り返すに決まってるだろうが!」
「取り返せるわけないでしょう!ゴーマンさんは、いつも考えが浅すぎるんですよ!」
怒気のこもった声で言ってきた。いつも穏やかなカトリーナが、こんなに怒っているのは初めてだ。カトリーナに続いて、バルバラとダンも畳みかけるように言ってくる。
「Sランク冒険者になるのが夢だったのに!ゴーマンのせいで最悪だよ!」
「お前の言うことを聞いてしまったがために、こんな目にあったんだ!どうしてくれる!?」
はぁ?なんだよ、これ。どうしてどいつもこいつも、俺のせいにしてくんだよ。心の中で怒りが、メラメラと燃え上がってくるのを感じる。
「お前らだって乗り気だっただろ!散々、財宝財宝騒いでいたくせに!」
「そ、それはそうだけど、ゴーマンが口車に乗せたんじゃんよ!」
「今思えば、それもお前の策略だったんだろう!適当なことを言いやがって!」
「Sランク冒険者になれるだとか、財宝があるだとか、調子の良いことを言って私たちを騙したんです!ゴーマンさん、あなたは詐欺師ですよ!」
カトリーナの一言が、さらに俺の怒りを増幅させた。
「詐欺師だと!てめえ!誰に向かって言ってると思ってんだ!?」
俺はカトリーナの胸ぐらを掴んで、グイッと持ち上げる。
「あ!な!た!あなたです!そんなこともわからないんですか!?」
カトリーナは人差し指で、俺の顔を指さすようにして言ってきた。その仕草が俺をさらにイライラさせる。
「調子に乗ってんじゃねえ!」
ドガアアアアアアアアア!バキイイイイイイイイイイイイ!
「きゃああああああああああああ!」
俺はカトリーナの顔を、力いっぱいぶん殴った。
「カ、カトリーナ!大丈夫か!?」
「あまりにもひどすぎるよ、ゴーマン!最低!」
「ギャハハハハハハ!俺に生意気な態度をとるからだ!お前はすぐ回復できるから、好きなだけ殴ってもいいよな!?」
ゴミダンとゴミバルバラは、カトリーナのカスクズゴミ女を大事そうに抱えている。
「ほらほら、さっさと回復しろ!いくらでも殴ってやるからよ!」
俺は挑発するように構えを取った。まとめて相手してやる。
「もうお前には付き合いきれん!」
「あたし、このパーティー抜けるわ!」
「私も脱退させていただきます!こんな人とはいられません!」
スタスタスタスタ。
吐き捨てるように言うと、クソメンバーどもは俺に背を向けて歩き出す。名残惜しい素振りすらない。それを見て、俺の中で何かが壊れた。
『勝手なことしてんじゃねえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!』
荒地に俺の叫び声が轟く。三人組のカスは、びっくりして振り向いた。皆、化け物でも見たかのような顔をしている。
「ど、どうしたんだ、ゴーマン!」
「ひいいいいいいいいいいいい!」
「ぎゃあああああああああああ!」
『なに俺の許可なしに、パーティーから抜けようとしてんだ!!!てめえらは、一生俺のために働くんだよ!!!ぶっ殺されてえのか!!!!!』
カスどもは縮み上がっていた。ようやく、力の差を思い知ったらしい。
「わ、わかった!いや、わかりました!勝手なことをして、本当に申し訳ありませんでした!」
「抜けません!あたしは絶対にパーティーから抜けません!だから、どうか命だけは助けてください!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
しきりに謝ってくるメンバーたちを見て、だんだん俺の心は落ち着いてきた。
「わかればいいんだよ」
メンバーたちは、ホッと息をつく。まったく、世話のかかる奴らだ。さて、これからどうするべきか。
「取られちまったもんはしかたねえ。いっそのこと別の国で冒険者でもやるか?お前らはどうしたいんだ?」
「あたしは、ゴ、ゴーマン……様と一緒であればどこでもいいです」
「お、俺も同じくです」
「わ、私もお二人と同意見です」
なぜか皆、丁寧な言葉づかいで俺に話しかけてくる。しかも、ゴーマン様とか言ってきた。
「なんだよ、急にかしこまって。気持ち悪いな。別にゴーマンでいいよ」
とそこで、荒地の向こうで人影が見えた。
「おい、あそこに誰かいるぞ」
ちょっと待て、あの服には見覚えがある。あいつは……フード野郎だ!
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