第29話:重い罰(Side:ゴーマン⑩)
どうしたわけか、俺たちは今サーブルグの冒険者ギルドで拘束されている。がんじがらめにきつく縛られているので、身じろぎ一つできなかった。
「ねえ、ちょっとこれはやりすぎじゃない?」
「これではまるで罪人ではないか」
「やっぱり、勝手に遺跡へ行くのはまずかったんじゃないですか?」
メンバーたちが、こそこそと話してくる。あの後カトリーナは毒消しポーションで解毒され、元気を取り戻していた。俺たちを見張っている冒険者たちの視線が痛い。
「そんなこと言ったってよお」
ギルドの奥からシリアスがやってきた。初めて会ったときより、ずっと険しい顔をしている。というか、その顔は怒りで満ち溢れていた。
「おい!ゴーマンパーティー!貴様らは自分たちが何をしたのか分かっているのか!?」
ドガァ!ドゴォ!
シリアスは近づくや否や、いきなり俺の顔を蹴り飛ばした。俺は勢いよく床に転がる。唇が切れて、口の中に血の味がした。
「いってえな!てめえ!何しやがる!」
「あの遺跡は“魔王”を祀る神殿だったのだ!詳しく調べれば、“魔王”について何か分かったかもしれなかった!勝手に侵入するだけでは飽き足らず、貴重な副葬品や壁画の数々をめちゃくちゃに破壊しおって!これから修道会と共同で、本格的に調査する予定が台無しだ!」
ま、“魔王”……。その言葉を聞いて、俺は血の気が引いていくのを感じる。諸悪の根源として、世界中の冒険者が探している。しかし、その居場所は誰も突き止められていない。その痕跡なんて、とても貴重なものだ。
「か、勝手に遺跡へ入ったのは謝る。で、でもよ、クエスト掲示板には調査兼モンスター討伐の依頼が出ていただろ。それを見て俺たちは……」
「バカやろう!お前たちはDランクパーティーだろうが!」
ディ、Dランクパーティー……。こいつは、どこまでバカにしてくれば気が済むんだ!
「い、いや、俺たちは!」
「俺たちは、なんだ?」
しかし、Aランクパーティーだ!なんて、とてもじゃないが言えなかった。嫌でも今までの戦いが思い出される。ゴブリンの群れに苦戦し、トレントに殺されそうになり、マミーにボコボコにされ、ガーディアン・ゴーレムには相手にもされない。ゴミアスカの言っていたことは……本当だったのだ。
「…………そんなわけあるかああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
俺はありったけの力を込めて叫んだ。ギルド中に俺の叫び声が響き渡る。
「ちょ、ちょっと、ゴーマン!」
「落ち着け!」
「暴れてはまずいです!」
「お前たち!ゴーマンを取り押さえろ!」
シリアスの合図で、冒険者たちがいっせいにのしかかってきた。俺は力の限り暴れまくる。
「俺は認めない!断じて認めないぞ!これまでの実績が全て無能アスカのおかげだったなんて!ふざけんなああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
こいつらを皆殺しにしてやる!!!俺は憎しみの全てを込めて、シリアスを睨みつけた。
「うっ……」
俺の覇気におされて、シリアスは後ずさる。冒険者どもに押さえつけられていなければ、今すぐにでもぶっ殺していた。
「お、お前は……危険だ」
危険だと言われ、さらに怒りが湧き上がるのを感じる。俺はもう自分がコントロールできない。
「離せええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
ガブゥ!ドガァ!ドゴォ!
「うわぁ!こいつ、嚙みついてきやがった!」
「こら!暴れるな!おとなしくしろ!」
「シリアス様!こいつは異常です!」
皆、必死になって俺を押さえていた。どんどん力が溢れてくるのを感じる。今ならどんな奴だって、そうガーディアン・ゴーレムですらぶっ殺せる。こんな気持ちになるのは、生まれて初めてだ。
「ゴーマン、やめてよ!暴れてもいいことないって!」
「とりあえず落ち着いてください!」
「冷静になれ、ゴーマン!」
クズメンバーたちが何か言っているが、俺の耳には全く入ってこなかった。
「うるせええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
俺はだんだん意識が遠のいていく。シリアスだけじゃない、ギルドの冒険者、クズメンバー、サーブルグの住民、全員を皆殺しにしてやらないと気が済まない。
「き、貴様たちの冒険者資格は剥奪する!こんなに危険な冒険者は初めて見たぞ!おい!こいつらを辺境の山に追放する準備をしろ!早く馬車を用意するんだ!」
しかし、シリアスの言葉を聞いて意識を取り戻した。一度資格を剥奪された者は、ギルド中に情報が知れ渡る。二度と冒険者として生きることはできないだろう。
「ぼ、冒険者資格の剥奪だと?そんな処罰になった冒険者は、歴史上でもほとんどいないはずだ!」
冒険者資格を剝奪すると言われ、メンバーたちも騒ぎ始める。
「もう勝手なことはしないから、どうか考え直してよ!」
「頼む!俺たちが悪かった!だから、冒険者資格の剝奪だけは!」
「何でもします!冒険者資格だけは許してください!」
こいつらは頭を床にこすりつけるようにして謝っていた。
「うるさい!うるさい!うるさい!貴様らみたいな凶暴な人間に、冒険者をさせられるわけないだろう!」
シリアスは別の生き物を見るかのような、恐怖の目で俺たちを見ている。
「てめえ!こんなことして許されると……うっ!」
ドガアアアア!
何か重い物で頭を殴られ、俺は気を失った。
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