第25話:助け(Side:ゴーマン⑨)
「…………は?」
ちょっと待て、どういうことだ。じゃあ、今まで俺たちが強かったのって。…………全部ゴミカスクズのクソ無能アスカのおかげだったってことかよ。
「そんなわけないだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
俺は今までにないくらいの、大きな叫び声を上げた。
「ど、どうしたんだゴーマン!?」
「……ゴ、ゴーマンさん?」
「俺は無能アスカの言うことなんか絶対信じねえ!あいつのおかげで、俺たちはモンスターに勝てていた?んなわけねえだろうが!俺がこいつをズッタズタにして証明してやるよ!」
さっきからガーディアン・ゴーレムは、ただ俺たちのことを眺めているだけだ。まともに戦わなくても勝てる相手、ということなんだろう。ふざけやがって!
『……こんなにみっともない冒険者たちは初めて見たな』
「黙りやがれ!」
俺は剣を引き抜き、精神を集中する。本気を出せばSランクモンスターなんて瞬殺だ。今までだってそうだったじゃないか。断じてゴミアスカのおかげなんかじゃない!ほら見ろ、こいつも俺の気迫におされて動きが固まってるじゃないか。よし、行ける!
「はあああああああああああああああっ!」
かつてないほどの全力の一振りをお見舞いする。粉々に砕けやがれ!
ブウウウウウウウウン!スカッ!
しかし、俺のすさまじい一撃は虚しく空を切った。ガーディアン・ゴーレムは避けた素振りすら見せていない。ま、まさかこいつは空間を操る力があるのか?
ズバアアアアアアアアアアアアアアア!
「がああああああああああああああああああああああ!」
と思ったら、脇腹を鋭く切られた。腹から血がドクドク垂れてくる。
『……分かっていないようだから教えてやるが、お前は自分の間合いすら把握していない。……しかし、我にとっても久方ぶりの敵だ。……せっかくだから、冥途の土産に稽古をつけてやろう』
稽古をつける?モンスターに稽古をつけられるSランク冒険者なんて、聞いたことがないぞ。
『……安心しろ。……お前の仲間の相手は、我の手下がする』
ザワザワザワザワザワ。
「ゴ、ゴーマン!周りを見て!」
「モンスターに囲まれているぞ!」
知らないうちに、俺たちの周りを無数のモンスターが取り囲んでいた。こんなモンスターの数は、これまで見たことがない。
「だから、早く外に出た方が良いって言ったじゃんよ!」
「どうすんだよ!ゴーマン、こうなったのはお前の責任だぞ!」
「……こ、こんなところで……死にたくない……」
だから、何で俺が悪いみたいになってるんだ。どいつもこいつも人のせいにしやがって。
「俺だって死にたくね……うわっ!」
ブンッ!ブンッ!
ガーディアン・ゴーレムが剣で斬りかかってきた。いや、適当に剣を振っているだけだ。それでも、俺は攻撃を防ぐので精一杯だった。
『……ほれほれ、よそ見をしていると死んでしまうぞ』
ブンッ!ブンッ!
ヤバイヤバイヤバイ!俺は死を意識して、全身で冷汗をかく。このままじゃ、本当に死ぬ。
「み、皆さん早く逃げ……きゃああああ!」
「《ファイヤーボール》!《ファイヤー、ぎゃああああああああ!誰か助けてええええええ!」
「このっ!このっ!俺に触るな!ぐわあああああああああああああ!」
モンスターの群れがカトリーナたちを襲い始めた。悲鳴が広間にこだまする。
「お、お前ら大丈夫か!?」
やがてモンスターに覆われて、あいつらの姿は見えなくなってしまった。全滅……そして死。最悪の事態が頭をよぎる。クソッ!どうしてこうなった!
「こ、このやろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
俺は泣きじゃくりながら、めちゃくちゃに剣を振り回す。恐怖と腹の痛みとイラつきで、俺の頭はおかしくなりそうだ。鼻水がダラダラ垂れてくるが、そんなことを気にする余裕もない。
『……ハハハ、さっきよりずいぶんと勢いがあるぞ。……そうだそうだ、その調子だ』
ガーディアン・ゴーレムはからかうように言ってきた。
「バカにするなああああああああああああああああああああああああああああ!」
ピカッ!ズガアアアアアアアアアアアアアアア!
再び斬りかかろうとしたとき、一筋の閃光がガーディアン・ゴーレムを襲った。
『……ぐわあっ』
閃光に弾き飛ばされ、ガーディアン・ゴーレムは地面に転がる。
「え?」
なんだ?何かの魔法か?俺は魔法なんか使えないぞ。バルバラか?いや、バルバラはモンスターにもみくちゃにされている。いったい誰が……。いや、違う!俺だ!この土壇場で急成長したんだ!やっぱり、俺は才能あふれる素晴らしい冒険者だったんだ!
『……しまった。……少々遊び過ぎたようだ』
ガーディアン・ゴーレムは、俺の後ろの方を睨んでいる。その視線の先を追うと、誰かがいるのが見えた。暗いうえにフードのような物を被っていて、男か女かもよくわからない。
「だ、誰だ!」
『……命拾いしたな、小童ども。……この遺跡にはもはや何も残っておらん。……さっさと立ち去れ』
そう言うと、ガーディアン・ゴーレムはそそくさと逃げ出した。さっきまで圧倒的な力を誇っていたのに、だ。それほどまでにフード野郎は強いってことか。対魔法石で作られたガーディアン・ゴーレムを、簡単に吹っ飛ばすくらいだもんな。こいつと共闘すれば倒せる!
「おい、あんた!ちょっと強力してくれよ!」
ふと後ろを見ると、すでにフード野郎は消えていた。
「何だったんだ、あいつ……って、お前ら大丈夫か!?」
ガーディアン・ゴーレムが逃げたと同時に、モンスターの群れもいなくなっていた。ボロボロのメンバーたちが姿を現す。
「ゴ、ゴーマン……ガーディアン・ゴーレムは、どうなったの?」
「た……倒したのか?」
「いや、俺じゃねえ!フードを被った野郎が……!」
「……ゴーマンさん……あそこ……」
回廊にたくさんの光が見えた。サーブルグの冒険者たちだ。先頭にシリアスが立っている。それを見て、腹の痛みなんてすぐさま消えてしまった。
「助かったぞ、お前ら!ギルドの冒険者たちだ!」
きっと俺たちが遺跡に来ていることを知って、応援に来てくれたんだ。なんだかんだ言って、Sランク冒険者様が心配だったんだな。
「よ、よく来てくれた!俺たちはここにいるぞ!」
俺は手を振って冒険者たちにアピールする。しかし、シリアスが大声で言ってきた内容は、まるで理解できないことだった。
「貴様ら、何てことをしてくれたんだ!お前たち、この大バカどもをひっ捕らえろ!」
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