さてこの作品に描かれていることを正しく理解するには、近年の米作がどのような状況に置かれているかを知らねばならない。日本人の食生活が米からパンへと(あるいは麺類に)移り変わったことによって国内の消費量は減少し、コメが余り気味になったというのが減反政策の真相らしい。
昭和の昔「日本のコメ農家を滅ぼす」と恐れられた「外国米の輸入」に関しては「元から余っていたのにそこへさらに消費ノルマで最低限の量を押し付けられている」のが現状なのだとか。(そのノルマをMA米と呼ぶ)そのMA米以外の外国産のお米は(一応自由化はなされているが)日本のかける関税が高すぎて商売にならないそうだ。
つまりコメ農家は政府の手厚い保護を受けているが、我々がお米をあまり食べなくなったせいで規模を縮小せざる得なくなったということだ。
外国のせいではない。我々の問題なのだ。
時代がそうだのだからと田んぼを減らすのも一つの道でしょう。
しかし、それで良いのだろうか? 感傷かもしれないが稲作は日本人の心に根付く文化なのではないだろうか?
流行りのスイーツを追いかけるのも良いが、たまにはコメの消費量や日本の伝統について思いを馳せるのも悪くないと思いませんか?
卵やトロロをかけるだけでご馳走になる。それはそれは素晴らしい日本の文化なのですから。
これは子どもの視点から描かれた素朴でファンタジックな短編、されど真相を知ればチクリと刺すものがあるのです。