四 (ある殺人鬼への)インタビュー記事

 ……今まで殺してきた人のことですか? それは、もちろん(覚えています)。最初の殺人はそうですね……中学生くらいの時でした。(相手は)同級生で。その時はもう、好奇心に導かれるままにというか。



 これ、ちゃんと録音できてる? そう……良かった。(合計で殺したのは)30人くらいですか。そんなもんか……いやごめんなさいね、ふふふ。(覚えていると言っても)忘れていることもある。その人に興味がなくなってしまうんですよね、死体になってしまった後は。不思議なんだけど、僕は(惹かれるのは)やっぱり生きた人間。



 なんで殺したかって? それは、もう(よく分からない)。(何で自分があの時あんなことをやったのか)自分でもよく理解できなくて。殺りたいから殺った、ただそれだけ。時々ね、何かに導かれているような、そんな気分になることも当然ありますよ。でもそれって(分からないことを)誤魔化してるだけじゃないですか。



 (行動の理由は)きっとあるんですよ。それが自分の言葉で説明できないだけ。僕は神様とか、死後の世界とかあんまり(信じてなくて)。”神に導かれて〜”とか、”運命に導かれて〜”なんて、ちょっと違うじゃないですか? 僕が無宗教ってのもあるけど、僕がやりたくてやってるのに。『自分のしたことを神のせいにすんなよ』、って。『運命って言われたら、全部従わなくちゃいけないのか?』、っていう。(考え始めると)頭が痛くなりますよね。



 『運命』って言葉自体、(誰かに操られてるみたいで)僕はかっこ悪いと思う。僕は僕が殺したくて殺してる。『死後の世界』だって『転生』だって、結局は生きてる者への(死への恐怖を和らげる)方便なんですよ。『運命』だって所詮後出しじゃんけんで、(僕みたいに)本当に強い者はそんなものに頼らなくても(自分で自分の)道を切り開いて行きますからね。



 まあ、とにかく僕はそういう感じで(『運命』でもなんでもなく自分の意思で)人を殺してきたってとこですかね。これ、(インタビュー記事の)役に立ってます?



 出所したら? もちろん(殺しますよ)! もちろん、(理由なんて)ない。だって、僕はもう(殺すことしかできなくて)。……ちょっと待ってください、頭が痛くて。なんか変な音がしません? 気のせいですか? 僕は……(殺します)。



 ……違う(違わない)。違う!(違わない)僕はもう!(違わない)



 僕は(おいどうした?)、(戻れ、『運命』の時間だ)誰かに従ったりだとか(勝手なことを口にするな)そんな……(お前は俺に従っていればいいんだ)。



 すまない、誰か……(おい! 機械の前に戻れ!)。気分が悪いんだ……頭の中で音が……(戻ってこい!)……い、医者を……(そう……それでいいんだ)。



(すいません)すいません、(ちょっと取り乱しました)ちょっと取り乱しました。(僕はもう大丈夫ですから)僕はもう大丈夫ですから(さあ、インタビューを続けましょうか?)さあ、インタビューを続けましょうか?

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