第4話 変人=田中と読む
「えっと、何か?」
「え?」
目の前の彼女の問いかけに、俺はすぐに反応出来なかった。
え、俺そんなに見てたのかな?まじか、はず。
「えっと、ごめんなんでもない」
そう早口に言い終えると、俺は慌てて前を向いた。
顔が熱い、なんとなくそんな感じがした。
それからも着々と自己紹介は進み、40人いるこのBクラスは、和田さんという女の子で終わりを迎えた。
「え~皆周りが知らないやつばかりで不安だと思う、そこでだ、我々教師はそんな君たちのために一つのイベントを企画した___」
そこまで言うと先生はすぅと息を吸って一呼吸置くと、口を開いた。
「__喜べ、1週間後に我々1年生は金澤のトレーニングセンターで2泊3日の林間合宿を行う__」
そう言うと、先生は言い切ったとばかりに「じゃっ!!」と言って手を挙げると、さっさと教室から出て行ってしまったのだった。
「え、何、終わり?」
「も、もう帰っていいのかな?」
「い、いや俺に聞かれても__」
とそんな感じにクラス内はほんのプチパニックとなった。
がしかし、逆にそれが友人を作るっきっかけとなったのか、皆近くの人と話し始めた。
俺もそれに便乗しよう!!そう思って横を向くも誰も俺と視線が合わない。
何故か?
それはもう皆隣の奴らと話しちゃってて声を掛けられえないからだ。
と思っていたら遠くのほうで、確か田中だったか、そんな名前の丸メガネの男子が一人机に噛り付いて勉強しているのが目に入った。
ボッチになりたくなかった俺は迷わずそいつのもとまで近寄るために立ち上がる。
椅子を引く音さえ大して気にならないほど騒がしくなった室内をすたすたと歩き、彼の前で足を止める。
数学B。
そんな教科書を広げながらもくもくと計算式を解いていく田中くん。
「あの~」
勇気を出して俺は彼に声をかけた。
返事はない。
「あのー!」
何でまだ教科書も買ってないのに高校の勉強なんてしてるんだ?
と不思議に思いながらも少しボリュームを上げた声で再度話しかけてみる。
「あの、林間合宿についてなんだけど__」
「なんだって__?」
今だ計算し続ける田中くんに続けて声をかけると、今度は返事が返ってきた。
ただその手は止まっておらず、顔も上げずに呟いていた。
「うん、その林間合宿についてなんだけど、皆何人かでグループを作ってるみたいなんだ、それでなんだけど___」
「は?え?聞いてないんだけど、何それ__」
そう言って顔を上げた田名くんの顔は、クマが凄かった。
七三分けの前髪に重たそうな丸メガネ、度が強いのか少し不自然に大きな目。
「え、さっき先生が言ってたけど__」
「いや、知らないけど_てか君誰」
「えぇっ?_」
* * *
あれから5分ほど経過した。
かくかくしかじかと今までのあらましを説明してあげると田中くんはようやく今のクラスの状況が認識できたみたいだった。
「で、君は誰なの?」
「ねぇ、俺さっきから何回自己紹介したと思う?」
「そんなの忘れ_いや悪い、僕は人の名前に興味がないんだ_」
「あぁ、そうかよ__」
丸メガネを指でくいっと上げながら言ってくる田中くん、俺は自然とため息が出た。
なんかこいつ相手にすんの面倒になってきた。
声かけるやつ間違えたかな?
そんな一抹の不安を覚えている俺なんてお構いなしに、田中くんが口を開く。
「ところで
「誰が風下だ!!そんなん知らねーよ水でも飲んどけ!というか俺の名前は風間由貴だっつーの!いい加減覚えろ!!」
「そうか水!!その手があったか!!__ならばあの木の根を水でふやかして食べれば__!!」
「はぁ_!?!?」
キタコレ!!みたいな田中の顔面に向かって俺は携帯していた飴玉を投げつける。
「いや木の根!?_まずいだろそんなん、これでも食っとけ!!」
「神よ__!!あなたは私を見放さなかったッ!!!!」
「うわぁッ!!!もうなんなんだよお前__!!!」
これが俺と変人田中との出会いだった。
義妹ができるから不良を卒業してガリ勉になろうと思うけど、なかなか卒業できない。 ポテふ @yamame5
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。義妹ができるから不良を卒業してガリ勉になろうと思うけど、なかなか卒業できない。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます