第3話  入学式



暖かな春の訪れとともに、今日清瀧高校は入学式を迎えた。


朝、恥ずかしそうに「_いってらっしゃい、お、お兄ちゃん」と言って俺を送り出してくれた妹。

転校と同時に新しい制服を買った妹は今、真新しいセーラー服を着て俺の前に立っている。



「あらあら恥ずかしいなら言わなければいいのに、ごめんなさいねぇ」


そう言った愛実さんもとい義母さんの後ろに美愛は隠れてしまった。



俺はそんな朝のやりとりをほのぼのと、いや心の中ではデレデレとしながら眺めていた。



「嘉月さん、夕方には帰って来れるって言ってたから今日はみんなでご飯食べに行きましょうね」


「はい」


穏やかに微笑みながら見送ってくれる義母さんに、俺は自然と微笑んだ。



「頑張ってね!!」

という義母さんの激励の言葉を背に、俺は学校へと向かったのだった。









だったのだが_____。


「_新緑の香る良き日に、今日私たちは入学しました_____」




さらっさらの茶髪に、アーモンド型の瞳。

まごうことなきイケメンが、今俺たち新入生の代表として挨拶をしている。

別にそれのどこが問題なのかって話なんだが、こと俺にとっては大問題である。


それはなぜか、あいつが、いやあいつらが元俺の(自称)舎弟だったからだ。


通路側の端っこにいた俺は横目で200人いる新入生をざっと確認し、お目当ての人物を見つける。




(やっぱいた___!!!)



さらっさらの茶髪に、くりっくりの瞳。まごうことなき美少女が遠く離れた位置に静かに座っている。



何を隠そう、今言った二人は双子である。

二人とも真面目で、こと俺と関わりのない事にはいたって普通の人間だ。

ただそこに俺が関わってしまうと奴らは豹変する。


簡単に言うとサイコパスだった。





おかしい。

俺は確かに不良を辞めると言ってあいつらから姿を消した。

それとともにあいつらの電話番号も削除したし、居場所がばれないようにいろいろ細工したりなんかもしたんだ。なのに、なんであいつらがここに居るんだ?ここは県内有数の進学校だぞ?俺でもこの学校に入るために1年間死に物狂いで勉強したというのに、ほんの1か月前くらいに俺が不良辞めるって言ってから勉強する時間なんてあったか?いや無いだろ。



元々清瀧高校に入ろうとしてた?いやでもそんなそぶり全く___。

だったら俺を追って?いやそれだと願書の締め切りの日と合わない___。




(ん~???)


俺は盛大にクエッションマークを浮かべたのだった。







* * *




「_ほら席に就け~」



そう言って入ってきたのはボンキュッボンのナイスバディな女教師だった。


クラスの男子が「「「おぉ_」」」と小さく歓声をあげる。



俺もそれに習いながら先生を見ていれば、バチりと目が合いウインクされてしまった。



え?と思う間もなく先生が話し始める。




「え~、まずは入学おめでとう、今日から君たち1-Bクラスを受け持つ竜胆千草だ、よろしく頼む」


竜胆先生はその儚げな見た目と違って随分と力強いというのが第一印象だった。

髪は程よくカールした黒髪セミロングで、ボッキュボンのナイスバディ。

なのに目元には黒子があって、たれ目がちの色気むんむんな教師だった。




なんというギャップ。

一体このクラスで何人の男子が彼女に堕ちたのか。

全く恐るべし、竜胆先生。



そんなことを考えていると早速自己紹介をすることになり名簿番号の1番の人から順に自己紹介が始まった。



「安藤美景です、趣味はバレーです__よろしくお願いします」


「五十嵐友永だ、好きな食べ物は肉全般!誰か俺と肉を食いたいってやつがいたら俺のところに来てくれ、いいお店を紹介するよ!」



という感じに着々と自己紹介が進んでいき、いよいよ俺の番が来た。




「え~と、風間由貴です、趣味と呼べるものはあまりないですがしいて言うなら運動(喧嘩)するのが好きです、よろしくお願いします」



言い終わり、さっと座るとパチパチパチと無難に拍手が起こった。

別に変なことを言ったわけではなかったしそんな俺を変な目で見てくる奴が今のところいなかったため、俺はほっと息を吐き出し、次の人へと意識を向けた。




ガタっと椅子が引かれ、後ろで人が立ち上がったのが分かった。


第一声、それは透き通るような美声だった。



「_神崎董です、趣味は読書で、チョコレートが好きです、よろしくお願いします」



シン_。と彼女の声と共鳴するように辺り一帯が静かになった。

言わなくてもわかる。誰もが彼女の声に魅了されて聞き入っていたのだ。


数10秒後。

忘れていた息を吹き返すように、拍手が教室を支配した。


俺は拍手をしながらそっと後ろを振り向き彼女を確認する。



プラチナブロンドの髪に、アクアブルーの瞳。

どう見たって日本人ではない彼女。



ふとそんな彼女と視線が合った。



今日はよく誰かと視線が合うなぁと思いながら、俺な彼女から視線を反らせずにいた。
















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