短編作品6 妹はヤンデレ変態さんでした。

 授業が終わり愛千満あいぜんみちるは自宅へ着き、リビングに入ってソファーにぐったりと身体を落とし休む。

 ふとテーブルに目を向けると青いパッケージのDVDらしきケースがある。

 気になり手を取るとそれはDVDではなくゲームソフトのパッケージだった。――しかもレーベルが18、と記入されている。


(つまりこれは……エロゲー!? 誰がやっているんだ? 家族がやっている感じがしないし……それにこのジャンル……)


 普通のエロゲーならともかくこのエロゲーのジャンルは兄妹系だ。

 妹が兄に恋を抱く物語。

 内容を見てすこし吐き気がした。

 満の家庭は自分を含めて両親と妹の四人家族で特殊な性癖を持っている奴はいない。

 両親は機械音痴だしアニメやゲームなんて興味なんて無い。妹はむしろ兄である満のことは死ぬほど嫌っているため、こんなゲームをしてる想像はつかない。

 ソフトをじっくり眺めているとリビングからもう一人入って来た。

 

「ただいま~、て……なんだおまえか」

「兄に対しておまえ呼ばわりかよ」


 満を睨め付けてくる高身長の可愛らしい人物は妹の愛千千晶あいぜんちあき

 黒髪のツインテールでそこそこ美少女のスタイル抜群。

 だが、いくら美少女とはいえ、血の繋がった妹、好意を抱くよりは生意気な性格のため殺意の方が湧いてしまう。

 とりあえず手に持っているエロゲーのソフトを千晶に見せる。


「なあ、千晶。これ、もしかしてお前の物か?」

「なにそれ? はっ!? そんな気持ち悪いソフト私のじゃないわよ! まじキモい、それアンタのじゃないの?」

「俺がこんな卑猥なゲームやるわけないだろ。もういい、両親に知れたらマズいから一応、第一発見者である俺が責任を持って処分しておくよ」

「そう言って、自分の部屋でこっそりプレイするんでしょ」

「するか!!」

「妹系のエロゲーでチンコをててプレイしているなんて……キモい」


 最悪な言葉を吐き捨てて千晶はリビングから出て行く。

 千晶に勘違いされてはらわたが煮えくり返り、ここに置いた犯人を絶対に見つけ出すと満は決意した。



 パートから帰ってきた母親が夕食の準備をしているとき満は自室で同じ学年で仲が良い少女の牧原花純まきはらかれんと通話をしながら宿題をしていると、壁の向こうから『ドンドン』と壁を強く叩く音が聞こえてくる。

 叩く音の向こうは千晶の部屋で何が気に入らないことがあったのか、満の勉強の妨害をし始める。

 途中で花純との通話を切り、こちらも負けずに足で壁を蹴飛ばすと千晶の部屋のドアが勢いよく開く音が聞こえて地響きするような激しい足音が近づく。


「バカ兄貴 ! あんたさっき壁叩いたでしょ! それと通話してるときの声がこっちまで聞こえてくるからうるさいのよ!」


 先に壁を叩いてきたのは千晶なのことと、通話の話し声が漏れてるだけで、ここまで理不尽行動をしてくる彼女に余計に腹の虫が治まらない。


「はぁ~っ! 先に壁を叩いてきたのは千晶だろ! それに通話してるときもそんなに大声をだしていないだろ」

「うるさい! 彼女とイチャイチャする通話を訊かされて不愉快なのよ!」


 目頭を熱くするほどムキになった千晶は部屋のドアを勢いよく閉めて出て行った。


 何か誤解をしていると思った満だったが、相手が妹だったので気にせず宿題の続きを再開する。



 明日提出する宿題を終えると同時に階段の方から母親が夕食を準備ができた、と呼ばれて満は部屋を出てリビングに向かう。

 食卓に座り、食事を始めたとき家族全員に満は学校から帰ってきたときリビングのテーブルに置いてあったを見せ、誰の私物か質問した。一応十八と記入されているシールは剥がしておいた、

 両親たちは知らないと答えて妹の千晶はその質問には答えず黙って食事をしている。


「なあ、千晶ひょっとしてこのゲームお前のか?」


 すると殺意のある鋭い目つきで千晶は満を睨み付ける。


「マジキモいんだけど、それお兄ちゃんのだよね。わたしがそんな如何わしいゲームするわけないでしょ」

「ばっ。ばか!」


 如何わしいという台詞に両親達の視線は満に向かう。


「如何わしいゲームとは一体どういうことだ?」


 父親の投げた質問に千晶は答えた。


「これ妹とエッチっチなことするゲームだよ。しかも私が隣にいるのに平気でそういうゲームを毎日しているからね。ゲームの音が漏れててマジで不愉快なんだけど」


 千晶の発言に両親の眉間みけんに無数の青筋が浮かび上がる中、―― 一方で満の場合は額がらすだれのように汗が流れる。


「誤解だよ母さん父さん。――ていうか千晶変な誤解を招くような嘘をつくな! さてはお前のだな?」

「わたしがそんなゲームするわけないでしょ。食事も終わったし、わたしは部屋に戻って勉強してくるね」

「ちょっと待て千晶!」

「――待つのはお前だバカ者!」


 テーブルを叩き激昂げきこうしている父親に長時間満は叱られるのであった。



 後日、満は学校に向かうと何故か学年中の生徒からの視線が集まる。

 少し気にしながら自分のクラスに入ると心配そうな眼差しで花純はこちらに向かい満の手を引っ張り屋上へと連れて行かれた。


「どうしたんだよ急に?」

「満君。あのねさっき全校生徒のスマホに一通のメールが届いたんだけど……」


 花純の持っているスマホに目を向けると、そこには信じられない文章が書いてあった。

 その内容は『○○高校の二年生愛千満は妹の愛千千晶に強姦した』と書かれていたのだ。

 無論そんなことは一切満はしてない。

 こんなデタラメな内容文を書いて全校生徒に送ったのは誰かと満は怒りを露わにしていると。花純は心配そうにこちらに向ける。


「私は満君の事を信じるよ。でも、何人かの生徒が千晶ちゃんの通う中学校に弟や妹がいて連絡を取ったらみな真実だと言っていたみたい……」


 その言葉を聞いて満は確信した。昨日のエロゲーといい、この嘘のメールの文章は全て

 犯人は千晶だと確信した満はこのままクラスには戻らず、自宅に戻ることにした。



 学校を早退し満は自宅へと帰ると、そのまま千晶の部屋へと向かう。

 部屋の中に入り、机の上や引き出しを開けたり証拠の物を探してみるが一向に見つからず最後にクローゼットの取っ手に手を掛けて引いてみると、思わぬ物を見つけてしまう。


「これって、エロゲー……?」


 そこにあったのはクローゼットの中にギリギリ収まるほどの大量のエロゲーのソフトが山積みになっていた。

 恐る恐るソフトを手に取りパッケージの絵を確認すると二人の男女が嫌らしい行為をしている。

 他の物を調べるとどれも同じで、タイトルを見るとどれも兄妹系のエロゲーだった。

 どうしてこんなに沢山の兄妹系のエロゲーを買っているのか疑問に思っている満はその場で考えていると急に背後から気配を感じ、恐る恐る背後をゆっくり振り向くと。


「勝手に妹の部屋に入るなんてダメだよ、お兄ちゃん」


 そこにいたのは薄気味悪い笑いをしている千晶が立っていた。


「千晶これは一体どういうことだ? どうしてこんなに山積みのエロゲーがあるんだ?」

「決まっているじゃん。私はお兄ちゃんが大好きだから兄妹系のエロゲーを買っていたの。いつ、お兄ちゃんとそういう行為をする練習として」

「じゃあリビングにあったエロゲーはもしかして……」

「――そう私の私物だよ。ちなみに置き忘れたわけじゃなく、わざと置いていたの。お兄ちゃんの私物だと両親に勘違いさせるために」


 いつもの千晶ではなく思い、満は恐怖で腰が抜けそうになる。


「どうしてそんな事をしたんだ? 学校の全生徒に送ったメールもお前の仕業か?」


 千晶の表情が笑顔で満ちあふれながらコクリと首を縦に振る。


「正解。もしお兄ちゃんが私の言うことを訊かなかったらお父さんやお母さんに助けを求めなくさせるためにしたの。学校の件はお兄ちゃんに悪い虫が付かないようにするためだよ」

「そんな事を考えていたなんて……。じゃあ千晶は俺の事を好きなのか?」

「うん、もちろんだよ。愛しているよお兄ちゃん。あとは花純という女狐を潰すだけ」

「花純に危害は加えるな」

「じゃあこれから私の言うことを訊いてくれるなら危害は加えないよ」

「……わかった。いうことを訊いてやるよ……」


 花純に手出させないため泣く泣く千晶の条件を呑むことにした。


「契約成立ね。これからたっぷり可愛がって上げるよ。お・兄・ちゃん」


 花純の身の保証と引き換えに、千晶の重度な愛を真は受け止めることとなった。

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