五景

雨が降っている

念仏

青いライト

各所で噂話をしている

女生徒たちにサス


女生徒B いつかこうなると思っていた。

女生徒C なんかおかしかったもんね。

女生徒D 私、あまり悲しくないわ。

女生徒B 私も。

女生徒C 帰ろっか。

女生徒D それはまずくね。

女生徒B いくらなんでもね。

女生徒C 早く帰りてぇ。

女生徒BCD ねー。


女生徒サスライト消える

先生たちにサスライト


男の先生 山田先生、貴方は悪くありません。

女の先生 私、気づいていました。彼女のSOS。どうすることもできなかった。無力です。

男の先生 こういうことは時々起こるんです。運が悪かったのですよ。

女の先生 そうかしら。

男の先生 そうですよ。

女の先生 あの子がかわいそう。

男の先生 仕方ありません。


先生のサスライト消える

親族にサスライト


親族A 学校もろくに行かず遊びまわっていたんだろ。

親族B 何人も男がいたようだ。

親族C 一族の恥だよ。

親族D 自殺してくれてむしろ良かったかもな。

親族B 幸恵さんには悪いがな。

親族A せいせいするよ。


親族のサスライト消える

男子生徒Aにサスライト

ベンチに座っている

男子生徒A震えている。嘆いている。

数拍後に三島さんが登場

傘をさす三島さん男子生徒Aに傘を差し出す

舞台全景のライトチェンジ

二人以外は退場


三島さん 自分を責めすぎだよ。

男子生徒A うるさい。

三島さん 若いなぁ。キミは。

男子生徒A 何様だ。

三島さん キミのお姉ちゃん様だよ。

男子生徒A 久しぶりだな。何処へ行ってたんだ。

三島さん 長い、ながーい海外旅行だよ。

男子生徒A 僕と彼女のなにを知っているんだ。何も知らないだろ。

三島さん 私はエスパーだよ。キミと出逢う女の子ぐらいわかる。私はキミのファン第一号だから。

男子生徒A 勝手にしやがれ。

三島さん 私の言葉があなたに届かないように、キミの言葉も彼女に届かなかった。

男子生徒A 届かなかったんじゃない。届けられなかったんだ。

三島さん キミは誠実だね。えらいねぇ。彼女はとても幸せものだよ。それだけ愛されて。

男子生徒A 愛されていたところで死んでしまったんじゃあ意味がないじゃないか。

三島さん そうかな。私はそう思わないよ。

男子生徒A 僕はそう思うんだ。

三島さん キミは生きることを選んだんだね。えらいよ。

男子生徒A そんなのわからない。僕はただ悲しいだけなんだ。


三島さん、男子生徒Aの頭を撫でる

男子生徒A、微動だにしない

男子生徒A、三島さんを振り払い退場する

三島さんベンチに座る

三島さん小説を取り出す

朗読が始まる

舞台前では朗読の再現映像が始まる

猫Aと猫B、そして車、血が登場する


三島さん  あのこはそういうとついてきてといった。ついてきてってそんなひどいこといわないでくれよ。だれがついていくもんかい。

 とはいってもついていくしかない。あのこはだれのいうこともきかないただひとりのあのこなのだ。どうのしようもない。

 あのこは道にいった。あのねこのつぶされていたみち。あぶないみち。あぶないもののためのみち。

 あのこはぼくたちのみちからはずれそちらへと移った。そして道の真ん中に立ち両手を肩に水平 顔をまっすぐに前を見据え目を心に軽く預けた。

 車 車だ。あぶない。あのこは動かない。車はただ走る。それだけ。車だけの道だからそれ以外はない。

どーん

 軽くとんでいった。地面にぶつかった。頭が割れた。血がとびでた。つぶされた。ちまみれだ。車は一台だけではない。そこは車の道。何台も何台も走っていく。ただ走っていく。

 あのこだったものはどんどんつぶされていく。あんなにおおきかったあのこがどんどんつぶされていく。ぺっちゃんこ。タイヤにあのこがのこされていく。道にあのこがのこされていく。あのこだったものがどんどんぼくのまえから消え去ってゆく。ぼくはただぼくたちのためのみちにたちつくす。


 車の道にはもうあのこはただ飛び散った血痕。ぼくたちの道にもほんの少し。ぼくはその血痕に触れる。なにも なにもなかった。

 ぼくたちのみちも。くるまのみちも。どのみちにも。ただそれぞれが歩いてゆくだけ。ぼくとあのこの血痕はただたちつくす。


暗転

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