異例のコンビ ③




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「へえ。ちゃあんと3分以内に買って帰ってこれるようになったやん」



ミアのバイト先、【魔法使いの弟子】。


ミアは変わらずスヴェンにこき使われているが、最近は要領を得てきたため、時間内に指示されたことを達成することができるようになっている。


スヴェンは自分の教育の賜物だと思っているが、ミアは自分が努力した成果だと思っている。



今日はオーナーが不在のため代わりに調理をしながら、スヴェンがちらりと向こうにあるテーブル席の方へ目をやった。



「あいつらはなんなん?」



今日は新聞部の生徒たちがいない代わりに、カトリナの信者たちが店の隅の大きなテーブルに集まって勉強をしている。


探索魔法の教科書や、歴史書、セオドラについての文献などを広げて、少しでもカトリナを探すための手がかりを見つけようとしているようだ。



「私の友達」

「なんなん、探索魔法とか僕がつい最近習った範囲やん。君ら一年生やろ?予習にしては早すぎん?」

「私のクラスで行方不明になった子がいて、みんなで探してるの」



ただ話しているだけでは「口動かしつつ働けや!」と怒られることが目に見えているので、ミアは手を止めないようドリンクを作りながら答えた。


そして、昨日どのようにカトリナを探していたか、保健室のゴーストに聞いた話も加えてかい摘んで話した。より具体的に言うならば、魂に干渉されているため探索魔法では限界があったという結果についてだ。



「それ、君が決闘ドゥエルした相手やろ?昨日のオペラ定例会議で話に上がったわ」

「……! オペラに話がいったってことは、オペラもカトリナを探してくれるの?」



学園内で最も優秀な魔法使いたちが味方につくとは有り難い、と喜んだミアは思わず手を止めて顔を上げたが、


「口動かしつつ働けや」


と冷たく言われたので慌ててレモンを絞った。



「まあ、すぐ動くかって言われたら微妙やな。事件性があるって確定したわけちゃうし、他にも行方不明になっとる奴はおるわけやし。加えてこの件に関して第一責任者になったんがイザベルやし。探すにしてもカトリナは後回しにされるやろ」

「イザベル……って、誰?」

「君ほんまにこの学園の生徒か?イザベルはカトリナの姉。」



スヴェンからの的確なツッコミを受け、ミアはぎくりと分かりやすい反応をする。が、スヴェンは自分の手元を見ていてミアの様子は見ていないのでセーフだった。


周りの反応からして、この学園の生徒はオペラの名前も顔も全員分覚えているのが普通なようだ。


この件が落ち着いたら覚えようとしてみよう……とミアはしっかり心に決めた後、気になったことを質問する。



「お姉さんだったらむしろ探してくれるんじゃないの?」

「イザベルはイーゼンブルク家と関わりたがらへんから。それは妹も例外ちゃうよ」

「……ちなみに、スヴェンが探してくれたりとかは……」

「めんどい。」

「……」



オペラはこの学園の治安維持チームだという話だったが自分の認識が間違っていたのだろうか、とミアは遠い目をした。



「ちゅうか、君、ドゥエルの対戦相手を心配するんやな。仲悪いからドゥエルしたんちゃうん」

「向こうは私のこと気に入らないと思ってるよ。……だから、友達になってって約束したのに。いなくなられたら困る」



ぶすっと不貞腐れたように唇を尖らせるミア。


その様子を横目に見たスヴェンは、急に自分の持っている包丁の刃先をビシッとミアの方に向けた。


本人としては両手が調理器具で埋まっているが故の指をさす代わりの動作だったのだが、ミアは殺されると思って青ざめる。



「僕、何年やと思う?」

「……よ、4年」

「そ。高度な探索魔法も追跡魔法も履修済みや。魂に干渉されようが、ある程度なら見つけられる。ただし、条件付きでやけど」



包丁の刃先を向けられてビビり散らかしていたミアだが、その発言を聞いて顔つきが変わった。


その態度を見てスヴェンは面白そうに笑みを深める。



「ほんまに覚悟あるなら手伝うたる。そのお友達もどきのために自分を犠牲にする覚悟があるならな。――僕、口だけの女嫌いやねん」

「……あるよ。私が誰だか分かってるの?」



ドゥエル後、“僕が誰だか分かってるん?”と脅してきたスヴェンを真似して、ミアが言った。




学園で最も優秀な魔法使いの集団“オペラ”の4年生と、まだ入学したての1年生。


異例のコンビがタッグを組んだ瞬間だった。



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