Kapitel 2 二年生編

誰かの記憶




少年は気を失った少女を抱えて走り続ける。魔女との戦闘で負傷した彼女の胸には十字に切られたような大きな傷がある。


齢十歳ほどの少年は泣いていた。


(……俺があんなこと言ったから)


駆け抜ける。フィンゼル魔法学校の広大な敷地からできるだけ距離を置くために。


“魔女の魂”は本当だった。その魂は少年の大事な人の意識を奪った。


(あの魔法学校に侵入しよう、なんて言ったから――)


いくら離れても少女は目を覚まさない。ぐったりと死体のように眠っている。


(死ぬな、死ぬな、死ぬな死ぬな死ぬな死ぬなっ……死なないで……!)


いくら願っても少女が目を覚ますことはない。





  少年は走り続ける。

  呪いにかかった少女を抱えて。






   【 二年生編、開幕 】




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