第三章 はじめての海賊(4)
そして船上、一日目の夜が来た。確保した客室は二つ。
ひとつはリスの単独で寝泊まりする部屋。
残りの一部屋を、大小の男たち五人で寝ることになった。
せまい。きっと二人部屋ぐらいの広さだった。確実に、五人では無理な大きさだった。一斉に寝れば身体のどこかが必ず重なるしかない状態になる。
しかも、けっきょく、唯一、この五人の連携係になれそうなリスの船酔いは解消されず、それぞれの人員の説明不在なまま、夜を迎えた。そして致命的なことがあった。
みんな、あまりしゃべらない人たちだった。ホーキングは別のはずだが、船に乗ってから、ずっと何かを考えている表情でしゃべらない。ヘルプセルフと、セロヒキは生粋の無口だった。
だからといって、二人部屋に五人で泊められても、誰も文句も発しなかった。運命をあっけなく受け入れているのか、たぶん、感性が狂っている。
ビットはまだ旅で負った傷と疲れのせいか、そんな狭い船室でもすぐ深く眠ってしまった。もしかしたら、これまで、もっと過酷な寝床で過ごしたかもしれない。
けれど、他。他の大人たちは、従順にこの狭い部屋を受け入れている。どうしても全員が横たわると、ぎちぎちだった。誰かの足に肩が乗っかる、逆に肩に足が乗っかる。心臓の音も聞こえる。それも、よく知り合ってもない者同士。
入ったことはないけど、たぶん、最近の刑務所でも、もっとましな寝床を与えられるのではないだろうか。
誰かの足を枕にしながらそんなことを考えていた。法則性がなく横たわる男たちのなかにいると、放り捨てられた屍の気分だった。
ただ、毎晩の寝床の問題、これはまだ微笑ましいものでしかなかった。
本当の旅の苦しみは別にあった。
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