■08 晩御飯
俺達は昇降口で靴を履き替えると校門へと向かう。
校門を出ると桜並木が続いており道路脇には貯まっている桜の花びらが目立つ。
そんな中、愛花と桜並木の風景を堪能している様子だった。
「桜、気に入ったのか?」
「はい! 桜って短い期間しか見れないですから、今のうちにしっかりと目に焼き付けておきたいです」
「いい心がけね。私も去年一度見たっきりだし、改めて見るといい景色よね」
愛花も桜の葉が散っている事を気にしている様子で、豊崎も同様に桜の木を見ながら
「ふふ、限られた期間だけ
「だな!」
桜並木を通り終えると愛花から買い物に行こうと言われていたことを思い出す。
「……あ、そうだ愛花。買い物だけど、ここら辺の店ってわかるか?」
俺たちが通う高校は丘に面してる地形なため、あまり立地条件がよろしくない。
そのため、学校帰りに娯楽施設や買い物に行くには適していないのだ。
「えへへ……私もここら辺はあまり詳しくないんですよね」
愛花は照れながら答える。
「ちょっと待ってね、私が調べてみるわ」
豊崎はスマホを取り出して検索をしていた。
「え~っと、一番近いスーパーだと……ここね」
豊崎はスーパーの地図を愛花に見せる。
「ここですね! わかりました!」
愛花は自分のスマホを取り出し、豊崎の探したスーパーを再度検索を行う。
「えぇ、このスーパーだと別方向だからここでお別れね」
「うむ、私も別方向になるな」
「……そっか。それじゃまた来週な、2人とも」
「ありがとうございます。良い週末をお過ごしください!」
「えぇ、また来週会いましょう」
「また来週、宿題頑張れよ和樹!」
「お前もな!」
俺と愛花は2人とお別れをした後、豊崎が見つけたスーパーへと向かった
スーパーに到着した俺はショッピングカートにカゴを乗せて、愛花と店内に入る。
「兄さん、今晩は何が食べたいですか?」
愛花は振り返りながら訪ねてくる。
「そうだな……あ、グラタンとか食べたいかも。チーズ増し増しので」
「チーズ増し増しのグラタンですね! 了解です!」
愛花はビシっと敬礼のようなポーズをしてくる。
軽く
「兄さん、週末の食材もついでに買っておこうと思います。何か希望はありますか?」
「激辛カレーが食べたいかな、あとはおまかせで」
「兄さん辛いの好きですもんね! まかせてください」
愛花は胸の前にグッと握りこぶしを作って答えてくれる。
程よく買うものがそろった段階で俺たちはレジへと進んだ。
俺たちの家計は、親の保険と芳樹おじさんの収入でやりくりをしている状態だ。
両親が事故で亡くなった時、芳樹おじさんは日本にいない状態だったため引き取り先がなかった
だが、そのおじいちゃんも病気が悪化し亡くなったことで芳樹おじさんに引き取られて今にいたる訳だ。
お金も食事を担当している愛花が管理することが多く、俺は月初めに決まったお小遣いをもらう程度だ。なので、必然的にお金を払うのは愛花となる。
俺達は買い物を終えて買い物袋を愛花は1つ、俺が4つ抱えながら家へと足を進めた。
家に到着するとリビングにあるテーブルに買い物袋を置き、既に足がパンパンになっていた俺はすぐそばにあるソファーにダイブした。
「すまん愛花、ちょっと休憩させてくれ……」
「ふふっ、それじゃ私はその間にちゃちゃっと晩御飯の用意でもしてますね」
愛花は苦笑を浮かべながら台所の方へと向かっていった。
エプロンをつけて戻ってくると、買い物袋から晩御飯に使う食材をテーブルにそろえ、それ以外の食材を冷蔵庫の方へと移動させた。
「手伝うよ、何をすればいい?」
休憩して足も回復したので、立ち上がり愛花の手伝いをすることにした。
「ありがとう兄さん、それじゃ――」
俺は愛花の指示通りに晩御飯のお手伝いを行った。
朝など少し寝過ごしてしまった時などは手伝えないが、当然ながら俺も余裕があればいつも食事の用意を手伝っている。
ほどなくして、グラタンの香ばしい香りが台所に広がり俺の食欲を刺激してくる。
「おまたせ兄さん、それじゃ早く食べましょう」
「おう!」
「「頂きます」」
俺はすぐさまグラタンに頬張りつく。
やっぱりめちゃくちゃ美味い、見た目も匂いもよく味も神がかっているこの美味さ。
愛花も一口食べるが、頬を赤らめて美味しそうに食べている。
グラタンを一瞬で食べ終わり、お互いに満足感に満たされた状態になる。
「そういえば、愛花は週末に何か予定は入れているのか?」
ふと気になった事を尋ねてみる。
「特にはないですね。溜まってる洗濯物を洗っておくぐらいだと思います」
俺の家では役割分担があり、食事と洗濯物は愛花が担当し、掃除やごみ捨てなど雑用は俺が担当している。
まぁ、特に予定がないのなら愛花に朝考えていたことを話してみるとしよう。
「週末なんだけど、花見……してみないか?」
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