第18話 蜥蜴王《バジリスク》討伐5
「くそ……っ!攻撃は効かねーし、毒で迂闊に近づけねーじゃ、どうすんだよ!?」
ラルクの悔しさの滲んだ声が、すぐ隣から聞こえてきました。
先程、地面に置いた魔法書に視線を移しました。
また発光し、何かの助けを示すかと思いましたが、何の音沙汰もありません。その必要がなしという判断なのか、
いずれにしても、
「また僕の美技が必要かな?」
……その前置きは、必要なのでしょうか?
すぐ後方で、またも艶やかな声が聞こえてきました。
そして、滑らかな詠唱と
「
すると、
「ふふ。これは、幻惑、防御力・攻撃力ダウンのトリプ……」
「邪魔だ、どけ!」
オーディンが言い終わらないうちに、ジルが素早く動き、体が当たった反動で、オーディンの持つ
ジルは、疾風のような速さで、
「
叫びと共に、風を切りながら煌めく刃が、灰色がかった茶色の巨体を斬りつけました。
「ギィェェェェ…………ッ!!」
バジリスクが呻き声をあげましたが、その鋼鉄のような体には、浅い傷が走ったのみでした。
「……っ!」
そして、ジルのすぐ側の空間が焼けるように「ジュッジュッ!」と音を立てました。
「
何メートルか後方から、ロイの詠唱が響いてきました。それと同時に、
「ゴホッ……ゴホッ!」
彼は、
「大丈夫ですか?」
私の問いかけに、ジルは咳が少し収まった後に答えました。
「
彼の額には、うっすらと汗が流れ、顔色も悪く見えます。
オーディンの魔法のおかげか、攻撃の気配が弱まりましたが、猛毒のため接近できず、依然、
こちらが圧倒的に不利な戦況です。
(何か、秘策はないか……)
「アリア。前に
ラルクが後方のアリアに投げ掛けました。
彼女は苦しげに呼吸を乱しながら、答えました。
「……ぼ、防御壁を張りながら、……その時の、
頭頂部とは、あの鶏冠のような王冠のような突起部分ですね。
私は、この辺り一帯を見回しました。
「……」
この圧倒的不利な状況で、どうすれば勝てるのでしょうか。
昨夜、宿屋で開いた魔法書を記憶の中でたどりました。
「ハァ……ハァ……」
後方から、苦しげな呼吸が漏れてきます。
見ると、アリアが胸を押さえながら、今にも倒れそうな様子です。
「大丈夫ですか、アリアさん!」
ロイが、アリアに駆け寄り、その肩をそっと支えました。
アリアの乱れた金髪に隠れがちな、その顔は、ほぼ全面が浮き出た血管により、ひどく変色しています。いよいよ、全身に毒が回っているのでしょう。
もう猶予はありません。
「アリアとロイ。お願いがあります」
私は背中越しに、二人に呼び掛けました。
「勇者様!何でしょう!?」
ロイが聞き返しました。
「お二人の力で、私に、注げるだけ防御魔法と、攻撃力上昇の魔法をかけてください」
「えっ……?」
ロイが驚いて、小さな声をあげました。
「カキザキ!そんなことしたら、二人とも、もう俺達全員にかける魔力が無くなるぞ!」
ラルクが反論しました。
「そ、そうですが……でも、勇者様……何か秘策があってのことですよね!?」
アリアを支えながら、ロイが聞いてきました。
私は静かに頷きました。
「ハァ……ハァ……ハァッ……ロイ、さんっ。ゆ、勇者……様を……信じ、て……魔法を……っ」
「……わ、分かりました!」
ロイは頷くと、一度アリアから離れ、立ち上がり、私に向けて両手をかざしました。
「ハァッ、ハァッ……!」
アリアも苦しげに表情を歪めながら、ゆっくりと立ち上がり、両手を組みました。首もとには、神職の証である
そして。
「
「
「
「
黄色の光の壁のような物と、黄色の真っ直ぐな閃光が、力強く上に向かって走り、共に、バシュッ!と短い音を立てて、空間に消えました。
再び、体の内側から今まで以上の膨大な熱量が上昇していくのを感じ、エネルギーが、押し寄せる波のように迸りました。
連続して、雪のような光が大量に降り注ぎ、青の光の壁が現れ消えていきました。
各魔法が自分の体に行き届いたのを確かめた後、私は
「それでは、私は
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