第11話 解毒方法

「どうすれば、アリアさんのこの状態を回復出来るのでしょうか?」

現在は、宿屋「旅は道連れ」に着き、ラルクの部屋に皆で集まっています。


「あ、あの……」

ロイが遠慮がちに、手を上げました。


「わ……私も、一応は魔法の使い手です。い、一度……魔法を試してみても良いですか?」

「もちろんです」

「は、はい……。では、アリアさん。ちょっとだけ……し、失礼しますねっ」


ロイが、アリアの側に移動し、目の前で膝を付きました。

そして、右手をアリアの右の顔に向かって、かざしました。


解毒魔法アンティドート!」


ロイの白い手から、緑色の蜃気楼のような光が現れ、アリアの右半分の顔を覆いました。

しかし、数分後。


「ダ、ダメです……っ。ごめんなさい」

ロイは、しゅんとして、右手を下ろしました。


「謝ることはないですよ。ありがとう」

そう言ったアリアの顔は、相変わらず右半分が毒により、黒みがかった紫に変色したままです。


「確かな情報じゃねーが……」

ラルクが口を開きました。


「前に旅の途中で、聞いたことがあるんだが、蜥蜴王バジリスクの毒はスゲー強力で、並の解毒魔法や、解毒剤じゃ解除できねーらしい。解毒の方法は、蜥蜴王バジリスク自体が持ってる、とかなんとか?」

蜥蜴王バジリスク自体が、ですか……」


その時、テーブルに置いていた女神から預かった魔法書が、淡い水色に発光し始めました。


「お?」

「……わわ!」


皆が驚きに小さな声をあげる中、魔法書が、自然にパラパラと捲れ始めました。

そして、あるページで、パタリと止まりました。


「カキザキ。そのページ読んでみてくれね?俺らには見えないからさ」


そうでした。限定魔法リミテッドによって、私しか読めない設定になっていましたね。

私は、魔法書の見開いたページを読みました。


蜥蜴王バジリスクとは、蛇と蜥蜴を混ぜたような容姿で、頭頂部に、まるで王冠のような形状をした鶏冠とさかがあるのが特徴。猛毒を持っており、直接触れずとも、近くにいるだけで、空気を伝わり、毒が回り、命に危険を及ぼす。

その毒は、致死性が高く、一度毒を浴びると、一般的な解毒魔法や解毒剤では、解除できず、やがて全身に毒が回り、死に至る。解毒薬は、蜥蜴王バジリスク自体の胃が分泌している」


「俺が聞いた、蜥蜴王バジリスク自体が持ってるっていうのは、そういうことか!」

ラルクが言いました。


「ということは、いずれにしても、蜥蜴王バジリスクと一戦交える必要があるということだな」

ずっと黙っていたジルも、口を開きました。


「そういうことになりますね」

まずは、私達冒険仲間が最初になすべき事が決まりました。


「彼女の毒の回る速度が気になる。早めに討伐に向かった方がいいだろう」

「そうだな」

ジルの言葉にラルクも頷きました。


「その状態では、戦闘に加わるのは厳しいだろう。さらに負傷する可能性もある。アリア、貴女はこの街で待機していた方がいい」


ジルが言ったことに、私も頷きました。

しかし。


「いえ、私も連れていってください!」

アリアが言いました。

驚いて視線を向けた私達に、彼女は続けました。


「元はと言えば、私の行いで、こうなりました。その私自身が、1人で安全に待っているなんて、虫のいい話です!それに、敗れはしましたが、一度、蜥蜴王バジリスクと実際に戦っています。微力ながら、アドバイスも出来るかもしれません。どうか、私も連れていってください……!」


アリアは、深々と頭を下げました。

責任感が強く、本当に真面目な方です。


「カキザキ。どうする?」


ラルクの声に、他のメンバー達も私を見つめました。

私も当初は、皆と同じく、彼女には、この街で待っていてもらおうと考えていました。

でも、彼女の熱意に打たれました。


「ここで断って、貴女が単独で密かに向かう方が危ないですね。それよりは、私達と一緒に向かいましょう。もう貴女を傷つけさせません」

「勇者様……」

「そうと決まれば、明日、討伐に向かおう。今日はそれぞれ休もうぜ。解散!」


ラルクが取り仕切ってくれて、ひとまずは解散ということになりました。


「カキザキ、ちょっといいか」

各々が部屋に戻っていく中、ラルクに声をかけられました。


「アンタが強いのは分かったが、さすがに丸腰ってわけには、この先いかねぇ。女神から、アンタの装備を見繕うよう頼まれてる。今から装備を買いに行こうぜ」

「分かりました。お願いします」


私とラルクは宿屋を出て、武器屋や防具屋に立ち寄ることにしました。


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