第2話 彼氏が訴えられてヒコクになっちゃったの!

「ちょっと法夫のりおくん、大変なの! カレシが訴えられちゃったのよ!」

「どうしたんだい、律子りつこちゃん、そんなことで血相を変えて」

「そんなこと!? そんなことって言った!? 一大事じゃない! わたしの彼氏がヒコクになっちゃったのよ!?」

「あ、よかった、被告って言葉は理解してるんだ」

「ぜんぜんよくない! 早く、早くメンカイに行ってあげなきゃ」

「はい?」

「ほら、法夫くんも一緒に行くわよ! 色々差し入れして支えてあげなきゃ!」

「行くってどこに? 差し入れってなにを?」

「コーチショってとこに決まってるじゃない! 捕まってヒコクになった人はコーチショで裁判を待つんでしょ!?」

「え、ちょっと待って、律子ちゃん、彼氏さんの件って刑事事件なの?」

「へ?」

「彼氏さん、何か悪いことしたの」

「するわけないでしょ!? エンザイよ! 前に別れた女から婚約ハキのイシャリョーを払えって言われてるのよ!」

「……はぁぁぁぁ……」

「何よ、大げさな溜息なんかついて! 彼は悪い女のせいでひどい目に遭わされて大変なのよ!?」

「律子ちゃん、君は一体どこまでのレベルで法律をわかってないんだい?」

「何も知らないけど一大事なのはわかるわよ! 早くメンカイに行きましょ!」

「大丈夫、彼氏さん拘置所には入ってないから」

「え……? でもだって、もう訴えられてヒコクになってるって弁護士さんから電話があったもん!」

「……なんで自分で電話してこないのかはわからないけど……民事訴訟の被告は、律子ちゃんの大好きな『牢屋』に入れられたりはしないから」

「え? だってヒコクでしょ?」

「民事と刑事の違いっていうのは……その分だとわかるわけないか……そこからか……はぁぁぁ……そこからか……!」

「悪いことしたヤツが警察にタイホされてヒコクになるんでしょ!? テレビで毎日のように見るじゃない! でも、彼はエンザイなのよ、その女と婚約なんてしてないのよぉ!」

「わかったから、あとは弁護士さんに任せておきなよ」


【問題】

・律子ちゃんがどのレベルで法律をわかっていないのか検討してみましょう。

・法律用語が報道で正確に使用されていないことについて、法律知識の啓蒙と報道の利便の双方の観点から是非を検討してみましょう。

・訴訟の濫用の問題について実務の観点から検討してみましょう。

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