4・迷走からの現実逃避
ママが落ち込んでいるのを見て、わたしまで気分がダウンしていった。
そして、わたしたち親子は、また病み期へと入っていった。
将来への悲観と、絶望。
そして、自分への嫌気…。
こだわりさえしなければ、仕事なんていくらでもあるんだろうに、
わたしたちにはそれが出来ないのだ。
ああ、いつになったら、脱け出すことが出来るのだろうか。
これぞ、迷走という現象。
これに親子揃って陥ると、なかなか抜け出せなくなるから、注意が必要だ。
世界中の仕事を失おうとしている親子たち、気を付けてね!!!
しかし、ご存知の通り、
わたしは人にアドバイスなどしていられる立場ではない。
わたしは、ずっと、「わたしたち無職の親子」と言ってきたけれど、
ママとわたしとでは、全く状況が違うのだ。
というのも、ママはあくまで、家庭の切り盛りをする主婦であり、
キャリアウーマンなどがしている仕事よりも、よっぽど大変なことを、
日々こなしている。
それに比べ、娘のわたしは…
ママが甘やかしてきたせいというのは間違ってはいないけれど、
それにしても、酷いレベルだ。
最近気に入っている言葉を使うと、レベチ(レベル違い)の過保護。
ママを中心に、ほとんど身内の全員に甘やかされて育ってきたわたしの結果は、
このニートという最低の身分である。
けれど、こんなこと言いながら、
わたしは自分がたくさんの愛情を受けて育ってきたこと自体は良かったと思う。
子どもにとって、溢れるほどの愛情を受けるということは、最も大切なことだし、
両親や周囲の人々に可愛がられて育った子どもは、
いつかはちゃんと恩返しなり何なりするために戻ってくるはずだ。
少なくともわたしは、そのつもりでいる。
今はニートだけど、いつかは、
ママをはじめ多くのお世話になってきた人々に恩返しをしたいと思っている…
まだ、仕事は見つからないけれど。
きっと、ママと日中に二人きりでいるのが苦痛だったら、
仕事なんてちゃっちゃと始めちゃうんだろうけど、
これが、案外、けっこう楽しいというのが問題なのだ。
もしかすると、バレているかもしれないけれど、
わたしとママは、かなりの仲良し親子だ。
お互いに信じられる存在は、お互いだけ。
お互いに、お互いの幸せを願っている。
それで、いろいろと口出しもしがちなのだと思う…特に、ママに関しては。
「いろいろな経験を積むためにも、何かしらバイトはするべきよ。
何でもいいから、そろそろ始めなきゃ」
そう言ったかと思えば―。
「こんなにバイト探しに迷うんだったら、
もういっそ、正社員を探した方がいいかもね」
だけど、これは、比較的元気な時のママの言うことであって、病み期になると―。
「もう、さっさと結婚すればいいじゃん。
もしも相手が裕福な人だったら、働かなくてもいいじゃない。
ママにも孫ができて、まさに一石二鳥♪」
ついには―。
「ていうか、思い切ってママと二人で開業しちゃう?
アンタが社長で、ママがアンタの補佐役で」
いや、病み期になると、突拍子もないこと言い過ぎだろ(笑)。
そりゃあ、そんな夢のようなことが現実に起きたら嬉しいけれど…
十九にもなって恋愛経験ゼロの娘が、若くしてデキちゃった結婚?
いや、ないでしょ。
それに、いつもゴロゴロして、
お菓子を食べながら映画鑑賞しているような親子が開業とか、現実不可能。
と思いきや…みたいな、そんなサクセスストーリーは、なかなか身近にない。
時に現実逃避さえしながら、
やる気になったり、萎えたり、立ち上がったり、座り込んだり…
そんなことを繰り返す、本当に忙しい親子。
それが、わたしとママだ。
そんなわたしたち無職の母娘は、これから先、一体どうなっていくのだろうか…。
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