第7話 特定芸能人信用毀損罪

幸籤29年11月1日宣告 裁判所書記システムCOC-K15

幸籤29年第926号 強制猥褻致傷、特定芸能人信用毀損被告事件


 判 決


被告人 黒笹三好

幸籤元年12月1日生

国民識別番号20-ASKBB-07


 主 文


被告人を懲役1826日に処する。

未決勾留日数中2日をその刑に算入する。


 理 由


(罪となるべき事実)

被告人は、幸籤25年10月1日から、特定営利法人オータムKSに雇用され、マネージメントスタッフとして稼働していたものであるが、

第1 幸籤29年10月25日午後9時20分頃、中京第二首都名古屋特別区セントラルドミトリー第48ブロックJ-97、JMセントラルホテル3800号室において、金山千草(幸籤12年10月27日生、国民識別番号20-TAGOB-11、特定芸能人管理番号S-200-805-301、当時15歳)に対し、同女が当時特定営利法人オータムKS東海million事業部に所属する特定芸能人であったことを知りながら、自身の職務上の立場を利用して同女に猥褻な行為をしようと考え、芸能活動の打合せと称して同女を前記個室に呼び出し、同女の腕を掴むなどして猥褻な行為に及ぼうとしたが、同女に抵抗されその目的を遂げず、その際、被告人の腕を振り払おうとした同女の右手首に全治約2日間を要する擦過傷の傷害を負わせ、

第2 同日午後10時35分48秒、前記ホテルエントランスロビーにて、ホテルから退出しようとする同女を追走し、同女に随伴して身体を密着させるなどしたところ、当該状況を特定営利法人BGスプリング所管の全域監視システムに捕捉され、同女との身体接触の事実を同システム上に電網的に記録させしめ、もって同女の特定芸能人としての信用を毀損したものである。


(法令の適用)

判示第1の罪につき、刑法第181条8項但書(常廻28年6月1日法律第13号)

判示第2の罪につき、特定芸能人の信用を毀損する行為の処罰に関する法律第23条11項(冠馬12年10月1日法律第48号)


(量刑の理由)

判示第1及び第2の罪の各事実については、当公判廷に電網申請された関係各証拠により明らかである。

本件は、犯行当時、特定芸能人のマネージメントスタッフの職にあった被告人が、自身がマネージメントを担当していた被害者に強いて猥褻な行為を迫り、また当該犯行後に被害者に随伴する姿を全域監視システムに捕捉されることによって、特定芸能人たる被害者の信用を著しく毀損した事案である。

弁護人は、犯行当時被告人と被害者はひそかに交際関係にあり、被害者が被告人の誘いに応じてホテルの個室を訪れた時点で被害者には被告人との性的な行為に応じる意思があったこと、ゆえに判示第1の犯行は行為の寸前でおじけづいた被害者から突発的に意思を翻され抵抗されたに過ぎないのであって強制猥褻致傷の罪の要件を満たさないことなど主張するが、仮に被害者から被告人に恋愛感情を含む何らかの特別な感情があったとしても、当時15歳の被害者に対し、自身の職務上の立場を利用し、有無を言わせぬ形で性的な関係を迫った被告人の罪責は強い非難に値するものであり、弁護人の主張は採用できない。また、被害者は本件から3日を経た10月28日、特定営利法人オータムKSの内規に基づき特定芸能人籍を剥奪され、約3年間にわたり生活の拠点としていたセントラルドミトリーからの退去処分を下されており、被告人の身勝手な犯行によって被害者が被った経済的、社会的、精神的損害は多大なものである。弁護人の主張するように犯行当時被告人と被害者が交際関係にあったとすれば、特定営利法人オータムKSの内規に違反する自由恋愛を自らの意思に基づき行っていた被害者にも一定の過失を認めることができるが、被告人は本来ならばマネージメントスタッフとして被害者の生活態度を管理監督する責任を果たすべきところ、その職責を放棄して被害者との自由恋愛に及んでいたというのであるから、被害者から被告人への恋愛感情の存在は被告人の所業を何ら正当化する理由にはなり得ない。さらに、被害者が当時人気投票で2万位程度の地位にいた人気アイドルであった事実を鑑みると、被告人の犯行が社会に与えた影響は無視できない程度に大きいというべきである。

被告人に同種前科がないこと、また被告人が本件各犯行の翌日に勤務先を自主退職しており一定程度の社会的制裁を既に受けていると認められることなどを最大限考慮しても、執行猶予の選択をなお躊躇する程度には被告人の罪責は重大であるというべきであり、被告人には懲役刑の実刑をもって臨むのが相当である。

よって、量刑判定システムの合議により被告人を主文の通りの刑に処するを妥当と判断し、裁判官の認証のもと主文の通り判決する。


中京普通裁判所

刑事第15部所管 量刑判定システムK11からK14、同K20

裁判官 伊藤中丸

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