6話 サビキ釣2

 「ふにゃあ」


大社漁港まで、どのくらいで着いたのだろうか。


車の操作に自信ある感じで各コーナーなど綺麗に曲がっているのが素人目でも分かった。


今回でハンドルを握ると性格が変わるということがこんな感じだとつくづく分かった。


 「着いたぞ。」


 「着きましたわね。」

 

 「いいねえ。早速アジ釣るぞ」


先輩方は慣れているのか、いつもの事なのだろうか誰も突っ込まなかった。


 「奏、早速始めるぞ。道具を持って移動」

  

 「わかりましたあ。」


華泉 と奏は荷物もって湾内へ歩き出した。


 「待ってください。華泉 先輩」


 「沢山釣って、南蛮漬けだからなあ」


 「はーい。」


二人の後ろ姿を見て、二人の近場に車を移動した。


 「ゆっきーちゃん。釣りは二人に任せて私たちはこちらの準備ですわね」


 「そうだな、まずは準備だな。」


車のルーフレールに取り付けてあるタープをひっぱりポールで固定した。


ペグは打てないからクーラーボックスでロープを固定した。


若干頼りないが今回はこれで代用するこになった。


 「そうですわねえ。今日は日差しが強そうですわね。」


 「うーん、その時になったら移動するかあ。」


 「ユッキーちゃん。その服装大丈夫?まあ、似合ってますわねえ。」


 「ああ、近くにあった華泉 の服をかりたからなあ。本人には確認してないけどな。」


確認してないのが気になったが、改めて容姿をみると似合っていた。


上着はTシャツの端を結び、下は、巻きスカート風ショートパンツをはいていた。


華泉 より雪香先生は少しだけ背が低いがショートパンツを履いたことによりスラっとした足が目立っていた。


そもそも、ユッキーちゃんは何歳なのか分らないが、高校生の服を着ても違和感がないので似たり寄ったり・・・年寄りの若作り・・・。

 

 「三絡 奏さん・・・」


 「ユッキーちゃん、どうなされました?急に奏ちゃんの名前を呼んで?」

 

 「あー、急に悪口言われたような感じがしてな。」


 「気のせいですわ、まずはコーヒー作りましたからどうぞですわ」


 「ありがとうなあ」


礼をいうと雪香はコーヒーを受け取った。

 

 

一方、華泉 と奏たちは、船の横で準備していた。


ビク!!


一瞬背中に悪寒が走った奏だった。


「奏、サビキ釣したことあるかな?」


「あのお、華泉 先輩、馬鹿にしてるんですか?まあ、釣は見ていただけですので何となくしかわかりませんが。」


 「そっかそっか。まずはライフジャケット着てから準備開始だな。」


 「出発前から着ています。」


華泉 が言うとこれでもかという具合に見せびらかしていた。


 「はいはい解ったからこのバケツに餌入れて。」


 「了解です。」


言われるままに、バケツに買ってきた餌を入れようと袋をを開けた。


 「臭い!!」


 「餌だからなあ。この匂いが良いんだ。よーく見たらこれエビだから。」


 「あー本当だあ。だから餌なんだ。美味しそうな餌ですよー。海水いれてもう少し溶かしますね。海水入れて溶かーす。あれ、このバケツ真ん中穴が開いてますね。」


 「これは、サビキ用のバケツだな。籠に餌が入れやすい構造になってる。まあ実際使ってみたらわかるから。早速仕掛けの準備だな。」


 早速仕掛けの準備に取り掛かった。


 「まずは、釣り竿にリールを取り付けラインをガイドに通す。ラインは糸のことだな。」


 「華泉 先輩出来ました。」


 「次は、クリップにラインを結ぶ。」


 「ライン結べました。可愛く結べますよ。」


奏が華泉 に結び目を見せた。そこには蝶々結びされたクリップがあった。


 「うーん…。綺麗に結べてるなあ」


自信満々に華泉 に見せつける奏だった。そんな姿に何も言えなかった。


 「釣りには色々な結び方があるがまずはクリンチノットだな。」


 「クリンチノット?」


 「うーん、初心者にはこれからかな。簡単な結び方だな。色々な場面でも使えるから覚えていたほうがいいな。」


 「適当に結んだらどうですか?」


 「糸がほどけたりするから、結び方は大事だな。今回はサビキだからルアーになると結構引っ張られるから結び目は大切だな。」


 「へー」


 「まずは、結んでみるからな。まずは、クリップにラインを通して、通したラインをメインラインに4回か5回まわして、最初の穴に通して、最後に大きな輪っかに通して思いっきりラインを引っ張って締め付けると出来上がりだな。」


 「へー、凄いですね華泉 先輩。じゃあこっちも結んでみてください。」


 「いいぞ、まずは、クリップにラインをとおして巻き付け最後は輪っかに通して引っ張ると完成だな。」


 「ありがとうございます。私の方も結んでもらえるなんて。」


 「あー、ついつい結んでしまった。まあいいかあ。この結び方使う場面あるから覚えておけよ。」


 「はいな。」


 「次は、サビキの針を取付けて下に籠を取付けて終了だな。」

 

 「華泉 先輩できました。」


 「よし、早速実釣だな。」


 「はいな。」


 「まずは、さっきの餌をいれたバケツに籠を鎮めるとあら不思議餌が籠に入るではないか。」


華泉 はマジシャンの様に説明が始まった。

ようするに、バケツの中央に籠サイズの穴があって、籠を上下鎮めると籠に餌が入る仕組みになっていた。


 「籠に餌がはいりますねえ。」


 「そうだろうそうだろう。籠を上下するたびに餌が籠に。ふっふふふふ。」


 「?」


華泉 の様子が変わってきていた。


 「これを見ていると、弾倉に弾丸を詰めてるように思えてきた。」


いやいや、どこをどう見ても弾倉には見えなかった。

餌が弾丸で籠が弾倉?まったく違うだろうと突っ込みたかったが言えない奏だった。


 「弾倉に弾丸を詰めるのも大変だからなあ。弾倉って英語でマガジンとも言われてる。実は、弾倉に弾丸を詰めるのも力がいるからなあ、確かに、弾が弾倉から持ち上がるためには、バネが内蔵なれていて、上への力が強くなっているから仕方ないが…」


 「あのお。華泉 先輩。」


 「この弾倉を…」


 「華泉 先輩!」


 「ああ、悪い。」


正気に戻ったのかいつもの華泉 に戻っていた。


 「後は、サビキ仕掛けを海へ。籠を沈めていくと餌が籠から出ていくので針を持ち上げて餌の周りに移動して上下動かすとあら不思議。アジが釣れるではないか。」


 いかにも、before, after, in, agoの様に解説しだした。


 「どんなもんだ。こんな感じでいかがかな?奏。」


 「私も始める。」


 いかにも釣れた表情で奏に見せつけていた。そんな華泉 に負けないように意気込んでいた。


 「まずは、餌が入っている籠を沈めて、餌の周りまで針を動かす。」


 「…」


餌の周りには魚が集まりだした。

針を持ち上げるとそこには、何も釣れていなかった。再度試しても同じ結果だった。


「華泉 先輩…」


奏は、華泉 に向けて子猫の様な眼差しで見つめていた。

そんな姿をみた華泉 は照れ隠ししながら説明しただした。


 「そうだなあ。アジが集まっているから違うのは、アジを誘うアクションかな。」


 「アクション?」


 「アクションだ。人間だと匂いや見た目が綺麗だと食べたくなるだろう。更に、沢山あるアイスの中に、一個だけ違う物があったらどうする?食べたくなるだろう。」


 「確かに、私だったら真っ先に取るかも。」


 「それと同じように、餌の中に針が美味しそうに見えるように操作するんだ。むやみに動かすんじゃなく、たまに止めたり、動きをゆっくりするなどだな。」


 「わかりました。」


 言うが早いか、餌を籠に入れて、言われたことを確認しながら再度始めた。

 

「籠を沈めて針を移動してアジが寄ってきたら、美味しそうにアクションする。あれ、何か引っ張られる感じがする。何?釣れてるの?」


 「奏、そろそろ釣り竿を上げてみな。」


奏が慌てているのが分かったのか指示をだしていた。


 「はいな、わかりました。」


釣り竿を上げると針にアジが釣れていた。


 「華泉 先輩。アジ。アジ釣れました。」


そこには満面の笑顔の二人がいた。




一方・・・


雪香先生と萌先輩は何やらごぞごぞしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る