魔界に行く?

3話 ここが魔界?

 「魔界~まっかいー。悪魔召喚~。」


歌なのか、語りなのか分からないが奏の歌声が小屋の中で響いていた。


 「語ってるなあ。」


 「歌ってますわねえ。」


小屋の入り口に二人が立っていた。

二人が来てることに気が付かず、洋服を整理していた。


 「気温がポカポカで温かくなってきたから、冬服はやめて、少し夏服を用意かな。でもなあ、夕方から冷えてきたら困るから少しは冬服を置いておきたいなあ。」


何着あるだろうか、ハンガーの前には沢山並べられていた。

すべて、巫女衣装だったが、見た目の違いは分からなった。


 「沢山ありますわね。」


 「全部一緒なのか?」


 「ふにゃ。」


突然二人に話しかけられ、手に持っていた衣装が落ちそうになった。


 「びっくりした。急に声掛けないでください。先輩がた。」


 「わりいわりい」


 「なれたのかしら、話し方が変わったみたいですわね。」


 「本性を現したな奏。」


 「いやー、ぽりぽり。」


褒めたわけでもないが照れていた。


 「何着持ってきたのかしら。ぱっと見、一〇着以上ありそうですわね。」


 「見た目変わんないな。同じ服なのか?」


 「えー、見てくださいよ。ここの所のステッチが違うんですよ。こっちとあっちで

は生地の薄さも違うんですよ。夏は若干透けてますけど。」


 「これで若干なんだ。ほぼ透けてるんだが。」


 ハンガーに掛けた巫女衣装を手に取っていた。


 「えー、華泉 先輩ひどい。萌先輩はわかりますよね。」


 「うーん、私も何着かは…。えーまずは、片づけましょう。」


 「持ってるにゃ」


 「もってるな」


 「片づけて魔界に行きますわよ。」


言葉に、圧力を感じてこれ以上突っ込めなかった。片づけること数十分で片付けが終わった。並べられた衣装をハンガーに掛けるだけだった。


 「萌先輩。魔界には何処から行くんですか?あっちの世界は巫女衣装は天使になるのかな?巫女衣装で行っても大丈夫ですか?ゴスロリ衣装で行かれるんですよね。ゴスロリ衣装は黒だから悪魔で通用するんですか?」


 「奏ちゃん、巫女衣装でも大丈夫ですわ。」


 「え、魔界ですよね?魔法陣描くんですか?」


 「魔法陣?」


 「ん?」


三人の会話がかみ合わなかった。

魔界とは悪魔の世界。仏教においては「仏界の反対概念」であり、「欲界の上四天」のことを指す場合もある。悪魔召喚で使う魔法陣はヨーロッパで流布した魔術書つまり西洋の古いグリモワールに載せられている。別名、奥義書、魔導書、魔法書ともいう。類義語に黒本。

そもそも、奏の勘違いなのだ。


 「あのな奏。」


 「奏ちゃん。魔界っていうのはね釣具屋さんのことですわ。」


 「ふにゃ?」


三人の会話にわりこんできたのは雪香先生だった。


 「魔界は、本当に危ないな。軽く行って帰る頃には財布の中少なくなってるから本当に魔界だ。」


 「正確に分かりませんが、目的の物を買ってついつい違うものまで買ってしまうからですわ。」


 「そうだぞ、その時は良かったが帰ってから後悔するからな。他にはキャンプ沼ってあるな。これはキャンパーがキャンプ道具をどんどん買っていって沼にはまるって処からついたみたいだな。」


 「ユッキー先生。時間大丈夫ですか?」


 「ああ、そうだな。そんな時間か。稗原さん、魔界に行くならこれかってきてくれない。後は必要なものあればかってもいいから。よろしくね。」


買い物のメモ用紙を部長に渡して、会議に向かった。


 「萌部長?」


 「萌?」


 部長が見ていたメモ用紙を覗き込んだ。そこには、週末使うのだろうか、仕掛けや餌など書かれていた。しかし、後半になると、ビール、醤油、バターなど釣道具屋さんにはなく、スーパーで買うものまで書かれていた。


 「…」


 「…」


 「…」

書かれたリストを見て暫く固まっていた。

仕掛けなどはわかるが、ビールって。醤油などは買いにいけるがビールはどうする?そもそも高校生がビール買っていたら補導?されるようなきがした。

そんなことを気にしていたが先輩方は違っていた。 


 「いつものことですわね。」


 「そうだな。買える範囲で買ってくるか。」


 「え、いつものことなんですかにゃ!」


 「まあな。」


 「それでは、着替えて出かますわ。」


 「はーい。」


皆、三様私服に着替えていた。奏は巫女衣装。萌はゴスロリ衣装。華泉 はサバイバル服。はたからみて異様な風景だったが三人にはいつもの風景なので違和感なかった。

学校から釣具屋まで片道5キロあった。先生の車があれば十分程度で到着するが自転車なので三十分はかかりそうだった。


 「さあ、着きましたわ。ここが魔界ですわ。」


 「とうちゃーくう」


 「早速入りましょう先輩。」


早く入りたいのか自転車を停めると素早く入っていった。


 「はやいなあ。」


 「私達も入りますわよ。」


少し遅れて奏の後を追うように入っていった。


 「どこ行った?」


 「奥の釣り竿の所ですわ。」


奥を見ると、並べられてる釣り竿を見ている奏がいた。

棚には、アジングロッド・エギングロッド・シーバスロッドなど色々なメーカーの竿が並べられていた。それを見ている奏の目もキラキラ輝いていた。


 「先輩、どれを買うんですか?」


 「いやいや、今回は違うから。」


 「奏ちゃんこっちですわ。」


釣り竿のコーナーから離れそうにない奏を仕掛けのコーナーに移動させた。


 「うわー、いろいろな仕掛けがありますね。今回はどの仕掛けを買うんですか?」

目の前には、チヌ・アジなど専用の針単体や仕掛けを作ってあるものまで色々なものが並べられていた。


 「今回は、サビキ仕掛けですわ。」


 「こっちの棚にあるな。」


 「へー、沢山ありますね。どれを買うんですか?」


 「そうだなあ、小さめの針だな。」


 「最近のアジの大きさは色んなサイズが混じってるようですわ。なので、小さめの針を買いますわ。」


 「アジのサイズで針の大きさもかえるんだ。」


 「ほへー。カレーライスのスプーンが大きいと口に入らない事と同じですね。」


 「まあそうだな。」


奏の例えが変わっているが二人には話が伝わっていた。


 「あとは、籠と餌ですわね。」


 「籠はこれですね。」


 「そうだな、餌は冷凍庫にあるから後で買うとして、萌、何か忘れ物ある?」


 「そうですわねえ…。」


 雪香先生のメモを見てる最中、買い物籠の中にお菓子を入れている奏。

釣道具店には、小さい子供向けにお菓子など売られている店舗もあった。


 「奏ちゃん。」


低音で萌部長が奏を呼んだ。


 「ふにゃ!」


流石に怒られると思ったのか、部長の声のトーンでびっくりした。


 「奏!!」


 「はいにゃ。」


二人から怒られるかと思い小さくなっていた。


 「おやつは1個までだぞ。」


 「そうですわ。買い物のお駄賃で何か買ってもいいと言われてますわ。」


 「びっくりした。怒られるかと。」


 「さすがに、量が多いですわ。」


籠の中には、チョコレート・クッキー・ジュースなど小学生が遠足に持っていく様な感じで詰め込まれていた。


 「ここでの買い物が終わったら隣のスーパーに行きますわよ。」


 「結構な荷物になるから今回は早めに撤収だな。」


 「奏ちゃんはお駄賃はこれでいい?私たちは、マク〇ナルドに行こうと考えてますけど。」


 「えー。」


マク〇ナルドという言葉を聞いて、30円だろうか?小さな子供向けのお菓子を元の位置に置きなおしていた。


一通り、買い物を済ませた三人は自転車の籠一杯のに荷物を小屋に持ち帰っていった。



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