第2話 釣クラブへようこそ

「ふにゃあ…足が部室にむかわないなあ」

授業が終わった放課後。部室棟から離れた場所にある釣りクラブの小屋に向かっていた。

青空が見える快晴な天気だったが奏の周りは暗く見えていた。

 「どうしようかにゃ、このまま海へ行こうかなにゃあ。いや、行かなかったら後で何言われるんだろうにゃあ。いやまて、仮入部ということでやっぱりやめますってありなのかにゃあ。でもなあ、釣りクラブはここだけだからにゃあ。そもそも、あの状態でしかも部室でビール飲んでる顧問の先生は何?あり得るの?うーん…」


 「どうした、三絡さん。」 

 「ふにゃ!」

突然、後ろから話しかけてきたのは、顧問の雪香先生だった。

 職員室ではスーツ姿でカッコイイ雰囲気で、いざ美術の授業では、スーツの上から白衣を着ていた。背の高さは華泉 先輩より若干だが低いが全体的にいい感じだった。

 しかし、釣りクラブの小屋での第一印象があったので違和感があった。

 「何びっくりしてる。さっきから部室の周り何周してるんだ。いいから入るぞ。」

 「はいにゃ。」

雪香先生に押されながら入っていった。


小屋の中に入ると、先輩二人がすでに来ていた。

 「あら、奏ちゃん遅かったわね。迷子になったかしら。」

 「奏、明日は迎えに行こうか?そんな所で立ってないで座った。」

言われるがまま、椅子に座ることになった。

改めて、小屋の中を見た。小屋の大きさは意外に大きく、以前は物置で使わなくなった物が置かれていたそうだった。部屋の壁には洋服ハンガーに綺麗に並べられたゴスロリなど衣装があり、その横には、ピストルなのだろうか?壁に並べられていた。

そんな、状況だが、ログハウスの様にアウトドアグッズで気にならないぐらい綺麗にまとめられていた。

そんな小屋を顧問の雪香先生がリノベして今にいたるようだった。


しかし…、

この中に、釣道具らしきものは見えなかった。


 「中洲さん、私にもコーヒー頂けない。ちょっと休憩させて。」

小屋に入るなり、椅子に座り込んだ。

 「ユッキー、ブラックでいいよな。奏はどうだ?砂糖とミルクあるけど。」

 「はい、いりますにゃ。」

 「りょーかい。ちょっと待ってな。」

聞くと、奥の部屋に入っていった。

 「お疲れですわね、雪香先生。」

 「ああ、こう見えて忙しいんだぞ。会議はあるし、顧問の美術部へ行かないといけないしな。」

 「そんなユッキーにブラックをおまたせ。奏はこっちな、砂糖とミルク自分でいれてくれよな。」

 「はいにゃ」

 「いやー助かるわ。飲んでから美術部に向かうかな。冷蔵庫の中の物適当に作って食べていいからな。ついでに晩飯のオカズを適当に作っておいてくれ。」

 「ういー、了解。」

 「雪香先生。頑張ってくださいね。」

コーヒーを飲み終わると雪香先生は出て行った。


 「ふにゃ?」

と、叫んでしまった。

奏の頭の中に色々と疑問が出てきた。

美術部?顧問は釣クラブ?では美術部も顧問?確かに美術の先生だから顧問は当然美術部だった。そんな、奏の様子を見て何か感じたの二人から話しかけてきた。

 「奏ちゃん、多分だけど雪香先生のことですわね。実は、顧問は両方ですわ。」

 「そうだぜ、実際は釣クラブは同好会だけどな。」

 「同好会?」

 「そうですわ。本職はあっちでこっちは趣味ですわ。」

 「そんな、ユッキー先生と打ち解けて、この釣りクラブができたわけだ。」

釣クラブが出来たきっかけはわかった。わかったんだけど、塗装関係は美術の先生だからしかたないとして、ゴスロリ衣装・ガンコレクションは何?関係ないのでは?

せめて、釣道具があればだけど部屋を見渡す限り見当たらなかった。

そんな部屋に一か所だけ厳重に管理された部屋があった。

 「気が付きましたわね。」

 「ああ、そうだな。」

 「先輩。あの部屋は何だにゃ?」

 「どうぞですわ。開いていますから入っていいですわ。」

二人から入っていいと了承を得て、恐る恐る扉を開いた。中に入ると、そこには綺麗に並べられた釣道具があった。

店のショールームにあるような棚にリールなどが並べられ、壁には孔子ボードを張り付けてあり、ルアーなど小物がかけてあった。奥には竿立てに釣り竿が立ててあった。

 「先輩これは…」

 「正式に釣クラブ入部おめでとうですわ。」

 「おめでとうだな。」

 「釣道具って結構な値段ですわね。だから厳重にしてるんですわ。」

 「先輩…本当に釣クラブだったんですにゃ。」

目の前に、綺麗に並べられた釣道具を見て実感した。

 「では、改めて同好会のはなしでもしますわよ。」

 「了解。コーヒー冷めてるっぽいから淹れなおすわ。そうだなあ、紅茶でいいかな?二人ともテーブルでまってて。」

 飲みかけのコーヒーを回収すると奥に向かった。

 「あんな感じだけど、華泉 ちゃんの作るものには定評がありますわよ。」

 「はいにゃ。」

 しばらくすると、華泉 が出来上がった物から順番に持ってきた。

テーブルに、紅茶とお菓子がならべられていった。

 「ふにゃあ…華泉 先輩。すみませんにゃ」

 「奏ちゃん。まずは紅茶飲みませんか?落ち着いたら話しますわ?この同好会のことを。」

若干だけ、声に力が入っていた。

 「奏ちゃんは、釣り道具はもっているのかしら」

 「えーと…」

 「奏、緊張しなくていいぞ。別にライフルで狙ったりしないからな。」

モデルガンを人に向かって打つのは危険なのはわかるだろうと思ったが言わなかかった。

 「えっと、家族が持っているのを借りたりしてます。私個人の物は磯靴とライフジャケットです。」

 「奏いいねえ。釣場は何がおきるかわからないから常に装備だ。最近の漁港も必須になってきてるからな。」

 「そうねえ。種類は四種類あるかしら。フローティングベストタイプ。肩掛け方ライフジャケット。ベルト型ライフジャケット。ポーチ型ライフジャケットですわね」

 「そうだぞ、平成30年2月1日以降ボートアジングなど着用を義務付けられたからな。桜マークのタイプÅを使ってるならいいな。奏のはどんなのだ」

 「ふにゃあ…えーとTHIRTY FOURの腰巻タイプです」

 「なに‼」

部室から2人の声が響いた。

 「ふにゃ‼」

 「THIRTY FOURならいいな。問題ないな。」

 「家族がお前はチョロチョロするからって買ってもらったんです。磯靴も一緒に。磯靴はフェルトタイプです」

 「それなら、明日は魔界に行ってみませんか?」

 「いいねえ」

 「ふにゃ?魔界って?」

 「ふっふっふっふ」

先輩たちの怪しい笑い声がこだましていた。


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