釣クラブへ

1話 入部?

「開けるな! 」

「ふにゃ? 」

部室の扉を開けると同時に一声が跳んできた。

条件反射なのかとっさに扉を閉めていた。

さらに、目の前に銃口が向けられていた。

 「ふえーん、銃口を人に向けちゃだめだにゃ。」

これって私が悪るいの?部室を間違えて何処かの実験室に入っちゃったとか?いやまてまて、部室棟から若干……いや結構離れているけど校舎内には間違いなかった。

扉の前で動けなくなっているのは今年の春から出雲〇陵高校に通うことになった、

三絡 奏。 動けばいいのではと思うのだが、この状況では動こうにも動く勇気がなかった。

その訳は、目の前に高身長な男性?いやいや、女性だよね?身長が190センチ?いや200センチあるのだろうか?結構背の高い女性が椅子に座ってこちらを見ていた。

見ているのはいいのだが、見た目はに違和感があった。

彼女の容姿はサバゲーしているのか迷彩柄を使った女性向きのBDUの他にキュロットや迷彩ショートパンツ、コルセットリグなど、オシャレしてる感じだった。まあ、手にはライフルを持っているのに違和感を感じなかった。


 その奥には、メイド?ゴスロリ?の衣装を着た女性とスーツを着た女性が机で何か作業をしていた。

 二人の会話はないが何か感じるものがあった。

 多分だがゴスロリ姿の女性がさっき叫んだ本人だとすぐに分かった。


そもそも、この部屋……何か臭う。アルコール?いやシンナーだとわかった。

これこそ、来てはいけない場所なのでは? このままいたら拉致されて、何処かへ連れて行かれるか。見たからには、一緒に既成事実で口止めされるのでは。入って数分が結構な時間に思えていた。

 「あう、では失礼しますにゃ」

言うが早いか扉のノブに手をかけようとしていた。

 早くこの部屋から出て行きたかったのは言うまでもなかった。

人間の記憶は意外と覚えていないものだ。

 人間は学習後二十分後には四十二%忘れ、一時間後には五十六%忘れ、一日後に は七十四%忘れ、一週間後には七十七%忘れるってドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスは言ってた。

 さらに、今年の新入生になったらなおさらだ。このまま逃げてしまえば何処かですれ違っても気が付かないはずだった。

 しかしそんな思いがこの一言で消えてしまった。

 「ストップ、ストップ! 逃げることないぞ。たしか、今年入った新入生の…名前は、三絡 奏。確か一年三組だったな」

クラスと名前まで言い当てられてしまった。ここで違いますって言って逃げても後でなにされるかわからなかった。

 「ふにゃあ。そうです」

 「そう、怖がることないぞ。おい、華泉さん。折角の新入部員だから丁重に扱え。椅子と冷蔵庫にある飲み物適当にだしていいぞ」

 「ういー。りょうーかい」

言うが早いか、目の前にいた高身長の女性が近くにあった椅子を持って来た。

 「よく来たな、奏。待っていたからな。」

 「ふにゃあ。」

 持ってきた椅子を遠慮しながらも座ることにした。

 「ふにゃ?・・・この椅子はDODのスワルスエックスハイ?頭を預けられる長い背もたれがあり実際に座ると違うにゃ。」

 大阪のキャンプメーカーで商品名が個性があった。

 冷蔵庫を覗いていた華泉からため息が聞こえてきた。チラッと見えた冷蔵庫の中には、ビールの缶しか見えなかった。

それを知っていたかのように、数秒で冷蔵庫を閉めていた。


あきらめたのは、手早くヤカンでお湯を沸かす間にコーヒーミルで豆を挽いていた。

慣れているのか、手早くセットすると美味しい香りがしてきた。

 しばらくするとウサギのマークが入ったマグカップにコーヒーを入れてきてくれた。

 「おまたせ。わりいなあ。ジュースがあれば良かったんだけど、あいにく冷蔵庫の中はあんな状態だったからなあ。まあ、コーヒーいれたから飲みな。」

 「ふにゃ、あれは放浪ソロリマグだにゃあ。このメーカーうさぎがついていてかわいいにゃ。」

 「そうそう、砂糖とミルクが欲しかったら机に置いておくからいれてくれ。」

 何か言われているが、耳に入らず現在自分がおかれた状態さえ忘れてマグカップを眺めていた。

一段落したのだろうか、私の周りに集まりだしてきた。

 「ゆっきー。冷蔵庫にビールしかなかったわ」

 「そうか? 一緒に買っていたような気がしていたけどなあ。まあ、適当につまみもあるから適当に食べてくれ」

 と、指図していた。

「つまみもあったけど……スルメイカやツナ缶それに、シジミぐらいだな」

 「しじみは良いぞ。これは、宍道湖で取れるヤマトシジミだ。明日の昼に、シジミ汁を作ろうと思って買っていた。まてよ、シジミ汁も良いが、アサリバターではなくシジミバターもうまそうだな。どっちがいいのか迷ってしまうな」

 そもそもなぜ部室にビール? 後で解かったのが、部室で暮らしているようだった。その理由を聞く勇気は無かった。

 「華泉ちゃん。出来たわよ。これは意外に良い出きかしら」

 奥から出てきたのは、ゴスロリなのか?色は全体的に黒で統一し、若干だったか赤でアクセントを入れていた 。その姿と違い手にはライフルを玩具のように振り回していた。

 「ありがとうなあ。」

言うが早いか取るのが早いか素早くライフルを手に取っていた。

 「華泉ちゃん、感想はどうかしら? 」

 「OK!完璧。」

子供におもちゃを渡した時のように大喜びしていた。

 「疲れたー、今回は手が込んだ細工だったからな、次回は同じものは作れないかもなあ」

萌の横に肩を叩きながら声の主が歩いてきた。

 「流石に今回は疲れたわ。道具はケチったらだめだなあ。安くても性能が良い物もあるが長く使うなら無理しても良い物がいいな」

 話しながら、机に置かれたコーヒーを飲みだした。


 そもそも、この部は何部だろうか。周りを見るとガラスの棚が綺麗に並べられて、生理整頓されているのは良いが……。並べられている物は、ロボットから始まりフィギュアまで綺麗に並べられていた。その横にはコスプレ衣装、更にライフルに拳銃などサバイバルに使いそうな道具まで並べられていた。此処って何部なのだろうか?釣り部ではなさそうだった。

 「ふにゃあ……そろそろ私帰りますね。」

言うが早いか席を立とうと行動のほうが早かった。

 「まあ待ちなさいって。奏ちゃん」

部長の声で一瞬体が固まっていた。なんだろう、声のトーン? いや何だろう?  

声の奥から迫ってくる脅迫めいた違和感。

「せっかくですから、奏ちゃんもコーヒーを飲んでもらえたらうれしいいかしら」

 マグカップ片手に話しかけてきた。

「せっかく入れたら、コーヒーを飲みな。」

 華泉もコーヒーを進めてきた。中には流石に睡眠薬が入ってないと思うが、どうにかなれと思いが強かった。

「ふにゃあ、では頂きますにゃ」

 両手でマグカップを持ち上げた。

 ふと…鼻にくすぐるようないい香りがした。

 何だろう、普通のコーヒーなのにとても美味しかった。飲むにつれ心の芯から落ち着いてきたような気がした。

 「どうにか落ち着いたようですわね。さっきまで気が張っていたかもしれませんね」

 「では、落ち着いたようだから奏ちゃん、こちらにサインをどうかしら」

 「ふにゃあ」

 気がゆるんだろう、部長が出した書類に目を通さずサインを書いていた。

「雪香先生。新入部員の入部届ですわ」

 「よし、これで新入部員確保っと。後はお前らに任せるからな」

 「ふにゃ! 」

 部長の言葉に目が覚めた。

 「ふにゃ。ちょっと待ってください。私は釣り部があるって聞いて此処に来たんですよ。見た感じ全く違う部活の様だにゃ」

 「なおさら、此処で良いじゃないか」

 「奏ちゃん大丈夫ですわ」

 「よっしゃー!早速新入部員が入ったということで何かつくろうかなあ。ユッキー外から適当に食べ物取ってくるけど、畑にジャガイモがあったよな。ポテチつくるかな。」

雪香先生を筆頭に3人がが盛り上がっていた。


 あれ、私の聞き違いだったのだろうか。さっき此処で良いって聞こえたような。

 此処が釣り部? 此処にあるはずの道具が見当たらない。竿・リールにルアー。

 「ここって釣り部ですよね! 」

 大声で叫んでしまった。

 「ふにゃ」

 叫んでしまった本人もびっくりだが、騒がしかった周りも一瞬で静かになってしまった。静かになってしまったのは仕方ないと思った。そもそも、釣り部らしくない部室。部屋には関係ないプラモから始まって衣装まで並べられていたら誰も釣り部と思うわけがなかった。

 「うーんと、奏さん」

 「雪香先生、ここは私が話しますわ」

先生の言葉を遮ったのは部長だった。

 「奏ちゃん、安心して釣り部なのよ此処は。若干だけど私物が少し置いてあるぐらいかしら」

 少し? どう見ても少し所か部屋全体が私物の様な気がした。

 「まずは、自己紹介かしら。まずは顧問の雪香先生お願いしますわ」

スルメを銜えながら話しかけてきた。。 

 「あー、専門は美術だ。ちょっと訳あって此処で住んでいる。趣味は此処にあるプラモかな。後は、道具のメンテから始まって修理まで何でも教えてやるぞ。後は、塗装もすきかな。」

 スルメを食べるのか話すのかどちらかにしてほしかった。

 「そうだ、入部祝いだ。大事にするんだぞ。しかも手作りだからな。」

 渡されたのは、ミノータイプのルアー。ミニミノーなのかな?  長さが五十ミリぐらいで、全体に綺麗にメガネの女の子が描かれていた。

 これがいわゆる痛ルアーだった。一般的には痛車が有名かもしれない。中には痛チャリや痛キーボードなど様々な物もあった。素人の目から見ても手の込んだ仕上がりだと分かった。

 「ふにゃあ。良いですかこれもらっても……」

「いいからいいから、見て楽しめって、さらにこれでシーバスが釣れると更にうれしくなるぞ」

 「ありがとうございますにゃ」

 絵柄はともかく、綺麗に仕上がったルアーから目がはなせなかった。

 痛ルアーを眺めていた奏を皆が見ていた。

 「良い目していますわ。二年の稗原 萌。この釣りクラブの部長していますわ。

最近ゴスロリ姿が多いですけど、最近はまったアニメでメイドもありますわ」

 その場で体を一回転回って見せた。もしよろしければ、他にもありますわ。」

話ながら、楽しそうに机の上に衣装を並べていた。

「最近だと、メイドがライフルを持ってサバイバルするアニメがありますわ。その衣装はこちらにありますわ。」

奥の部屋にある衣装ケースから衣装を探していた。

 「萌、今日はそのへんで。」

 「仕方ないですわね。」

部長を止めたのが華泉だった 。

「えーと、二年の中洲  華泉 。一応だが副部長みたいだ。」

照れなのか若干顔が赤かった。

「まあ、見た目どうり、ガンマニアだ。まあ、よろしく。そうだ、このアサルトライフルを持ってみな。」

言うと、奏にアサルトライフルを渡してきた。

「重いにゃ。」

「だろう、良い重量感だよな。エアーガンだけどな。実は国産のアサルトライフルなんだぜ。89式5.56mm小銃は、1989年に自衛隊で制式に使われてるんだ。いいよなこの重量感といいこの形。奏もそう思うよな。」

 ライフルの説明が永遠に聞かされいた。

その横では、衣装ケースから衣装を取り出しては試着している萌先輩。奥のテーブルでは、いつ出したのか、もうすでに沢山のビールの空き缶がならんでいた。

 「ふにゃあ」

ちょっと変わった先輩達に囲まれて部活一日目が終わった。


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