第68話 模擬戦[一日目夕食&終了]
結局……ビッグホーンの解体方法が分からないまま、担任のノーガス先生が来てしまった。
「リジューナ=オーデンビリアさん、怪我はありませんか?」
ノーガス先生は紺色の髪色の楚々とした雰囲気の女性教師だ。
そんな先生が鬼ごっこの森に来るのは危ないんじゃないかと思って見ていると、先生は腰に下げた鞄の中からピラミッド型の小さな箱を取り出して、洞窟の入口に置いた。
箱を地面に置いたら箱が薄紫色に輝きだした。
「これは魔物避けのお香です」
おおっ魔物避け!先生、準備いいね!
「さて、ベルフェリア=クシアラさんはまだ戻ってませんか?」
「……ハイ」
もうぅベルフェリアどこまで行ったのぉ~
はっ!?ノーガス先生がビッグホーンの亡骸をチェックしてる?
「これはオーデンビリアさんが?」
「まさかっまさか!!クシアラ様が倒してました」
「そう……流石、ヘルベェルの破壊姫ね」
ひえぇ……先生の口からベルフェリアのヤンキーの通り名のような異名が!
そこへ、噂の破壊姫が血みどろになったミスリルハンマーを携えて帰って来てしまった。
洞窟の入口に現れたベルフェリアを見た瞬間、楚々とした雰囲気のノーガス先生から激しい怒気が立ち上がった。
「クシアラさん今までどちらへ?生徒には待機の指示が出ていたと思うのですが?」
ベルフェリアは血みどろのハンマーを慌ててマジックバッグに仕舞うと、秒で私の隣に飛んできた。
「ベルフェリア=クシアラ、戻りましたぁ!」
ノーガス先生は私とベルフェリアを交互に見て溜め息をついた後、自身の腕の腕章を叩いて会話を始めた。
「こちらノーガス、リジューナ=オーデンビリアさんとベルフェリア=クシアラさん、両名の無事を確認しました」
『ノーガス先生、了解です。只今理事長と職員の緊急会議の結果、課外授業の鬼ごっこは中止となりました。至急生徒を連れてご帰還下さい。鬼ごっこの各生徒の評定は現段階での採点を基準にします』
現段階の採点……しまった。私ってば誰も鬼ヶ島送りにしてないんじゃ……あっ!そいえば、偶然腕章を叩いてルナセイルを送ってたんだ!
「やった~棚からぼた餅だね~」
「タンカラボテモミュ?何ですって?」
「何でもないよ~ベルフェリア帰ろうか!」
°˖✧ ✧˖° °˖✧°˖✧ ✧˖° °˖✧°˖✧ ✧˖° °˖✧°˖✧ ✧˖° °˖✧
夜を徹して、課外授業の演習場の魔獣討伐が行われるらしい。
学園の校庭に集まった生徒達に、先生からのそのように注意事項が伝えられた後、各自解散となった。
私も疲れて欠伸を連発しながら寮の部屋に帰った。
そして自室に入るなり
「…………はぁ?」
「リジューナ様のお顔、淑女にあるまじき不細……失礼しました」
「途中で言いかけて止める方が失礼だよっ!」
そしてエアルが去った後、ぐぬぬな気持ちを手紙を見詰めて耐えていたが、ビッグホーンのことを思い出して気分が持ち直してきた。
ビッグホーンは……なんと、ベルフェリアが2頭も倒して捌いて持って帰ってくれたのでそのお肉を有難く受け取り、再びリジューナ特製漬けダレに漬け込むことにしたのだった。
「棚からぼたもち、連発ぅ~」
こうなったらこのビッグホーンで一人焼肉しちゃうもんね、早速明日しちゃおうか?寮の部屋の中だろうと炙って焼いちゃうもんね。
そうして次の日……
鬼ごっこは中止となって、通常授業に切り替えるとのことで寮を出て学園に来たのはいいが……なんだか皆、ソワソワしている?
「何かあったのかしら?」
その答えは教室でのお喋りの最中に、ルミエラ=ファーモル公爵令嬢からもたらされた。
「昨日、父から聞きましたの。エスカレイド帝国のジャニーイル殿下が留学でお越しになるとか」
「エ……エスカレイド帝国?」
えぇぇ……今度は旧帝国のエスカレイドの殿下がぁ?え~と確かジャニーイル殿下って第二皇子で……うわぁぁ、私と同じ年だった。
「帝国の殿下が何故わざわざヒルジアビデンス王国に来られるの?あちらには歴史のあるガレリアンデル学園があるじゃない」
はい、ベルフェリアさんの仰る通り!
するとパメラ=ティルバン侯爵令嬢が、あっ!と声を上げた。
「もしかして……あの、私の伯母がエスカレイド帝国の伯爵家に嫁いでいるのですが……その伯母の義理の姉の子がガレリアンデル学園に通っていて、騒動があったとか」
私を含め、同じクラスの女性徒と男子生徒達がガッと近付いて来て、パメラを取り囲んだ。
良くも悪くも下世話な話は好きだよね、え?勿論オバサンの私も好きだけど?
「どんな騒動だったの?」
私が尋ねるとパメラは思い出そうとしているのか、目を瞑りながらゆっくりと話し出した。
「ガレリアンデル学園に通っていたジャニーイル殿下には婚約者がいたのだけど、殿下が男爵令嬢と恋仲になってしまって婚約破棄の騒動があって……ジャニーイル殿下はガレリアンデル学園を辞められたとか」
「あ~」
「そう……」
周りにいたクラスメイトの皆が深い溜め息をついた。
男爵令嬢とか今の私達にはとんでもないパワーワードだよ。
あのピンク髪の女子生徒の顔が浮かんでいるのか、クラスメイト達は渋い表情を浮かべている。
あっ!もしかして、ジャニーイル殿下とその男爵令嬢も一緒にジュ・メリアンヌ学園に留学して来たりしないよね?
ダメダメ!こんなこと口に出したら言霊になって、現実になるかもしれない。
……と、思っていたのにヴェスファード殿下がさぁ~ガゼボで会った瞬間に叫ぶんだもんよぉ~
「おいっ知ってるか?旧帝国のジャニーイル殿下が、男爵令嬢と駆け落ちしてくるって」
おーい、おーーーいぃ!!ガゼボでデカい声で叫ぶんじゃないよっ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます