第56話 あら?こちらにもモブ婚約者が
緊迫した雰囲気のティルバン侯爵家の現場からリポーターはリジューナ、解説はヴェスファード殿下で実況中継いたします!
只今ティルバン侯爵家の門前にて、元聖女の菜花と思われるアラフォー女性が、門兵の制止も聞かずに押し入ろうとして大暴れしております!
「私は聖女なのよっ!やめてっ触らないでよっ!?神の愛する聖女の怒りに触れたいの!?早く、通しなさいって!リカルデとは学生の頃に愛を深め合った仲なの!リカルデェェ!あなたの愛しのナノカが帰って来たわよ!」
このような妄言を大声で叫んでおりますので、門兵も手を出しかねて右往左往しております!
ここで言う神とはあの胡散臭い自称神様だと思われるのですが、あの神力も弱そうなアレが何か出来ると思っているのでしょうかっ?
失礼、少し脱線してしまいました。
ああっと!?ここでティルバン侯爵家の屋敷から誰かが出て来ました!
「あれは……ベルア=ティルバン侯爵夫人だな」
ここでヴェスファード殿下の解説を頂きました!
屋敷から出て来た侯爵夫人と執事の方々……でしょうか?その数名は門の所まで到着しました。
元聖女、菜花はその一団の方を睨み付けております!
ベルア=ティルバン侯爵夫人はスラリとした細身の美しい女性ですね、おっと傍で控えているオジサマ……執事様から何やら耳打ちをされて頷かれておりますね!
「ナノカ様、リカルデと貴女が愛し合った仲とはあなたの完全なる思い違いです」
侯爵夫人はズバーッと菜花の訴えを切り捨てた模様です!
元聖女の菜花はすぐに切り返してきました!
「あなたはその場にいないから知らないだけよ!私とリカルデは学園の皆も羨むぐらいの仲の良さで相思相愛の仲だったのよ!」
「私、学園におりましたけど?」
「え?」
ベルア=ティルバン侯爵夫人が口元を引きつらせているのが見えます!
「私はあなたとシュ・メリアンヌ学園で同じクラスで、ずーっとずーっとっリカルデの婚約者だった者ですけど?」
ぐあぁ!?ここで発覚しました!確かにこの一文で出てました!
『リカルデの婚約者を名乗る女が私達が隠れている教室に乗り込んで来た。あの女は何か叫んでいたけど、怯えている私をリカルデが教室から逃がしてくれた』
参照は大人気小説『聖☆ジュシュリア~夢♪と希望★を抱き締めて~』で御座います!
「そうか、小説でリカルデの婚約者だと名前の無いまま説明があった、あの婚約者がベルア夫人なのか!」
はいっヴェスファード殿下のご解説の通りで御座います。まさに一行だけ登場の婚約者……そのモブ婚約者がベルア夫人でございます!
ベルア夫人は口元を引きつらせてはいるが、なんとか微笑みを浮かべています。
「以前からナノカ様は殿方にしか興味がないのでしょう、私やフレデリカ様のことなど、記憶に残っていないのは当然でしょうね」
菜花は肩をブルブルと震わせています。また反撃に出るのでしょうか?
ベルア夫人は一歩前へ出ると、大きく頭を振っています。
「正直な所……リカルデと良い仲だったとか、リカルデとの間に子供がいるとかなどと言って、押し掛けて来る方はあなただけではないのですよ?」
な、なんとベルア夫人の爆弾発言来ましたーー!!
「リカルデは女性に対して優しすぎるので、勘違いした方が話せば助けてくれると思い込みがちなのです。あなたもお困りごとでもありますか?それともお金の無心かしら?」
おおっとぉ!?ここでベルア夫人が菜花を蔑みながら鼻で笑いました!
流石の菜花も押し掛ける女の一人と言われてしまって、ぐうの音も出ないようです!
さあ、どうする菜花!?
「あ、あなたなんて……リカルデから真実の愛を貰ってないくせにっ!私はマクシミリアンやリカルデもローウエだって、皆っ皆……私に夢中なんだから!」
うぉ~~い!!それは菜花の完全なる妄想です!
これを聞いたベルア夫人が怒りのせいで、雷属性の魔力を放出している模様です!ああっ!?髪の毛が放電しながら広がっています!
さながらその姿は某神話で有名なメドゥーサのようです!
ああっと!?ここで菜花が急に走って逃げました!
「あ……ティルバン侯爵が帰って来た」
おおっ?ヴェスファード殿下の指し示した方角に一台の馬車が見えます!
走り去った菜花とは逆方向から、リカルデ=ティルバン侯爵が乗っていると思われる侯爵家の馬車がやって来ました!
メドゥーサ、違……ベルア夫人が怒りの放電をしながら、近付いて来る馬車を見詰めています。
そして馬車から慌てて降りて来られたティルバン侯爵に向かって、メドゥーサが吠えました!
「リカルデッ!今までどこにいらしたのですか!」
ティルバン侯爵がメドゥーサに睨まれて石化……はしてませんが、恐怖で固まったようです!
「す、すまないっ!急遽来訪されたローウエ殿下も交えてマックス達と作戦会議を……」
「そんな吞気なことをしている場合ですかっ!!」
「ひええええっ!!!」
メドゥーサが咆哮と共に雷撃を落としました。
通り一帯の街灯の魔光ランプが雷撃のせいでショートしてしまったようで、きな臭い臭いが漂っています。
おい…………おっさん達。
妻のピンチになにを吞気におじさん会議をしているのかね?
…………現場からは以上ですっ!リジューナがお届け致しました!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます