第51話 オタクの聖なる夜~番外編~
「解せん……」
「仕方ないですよ~所詮この世界って日本人作家さんが書いた小説の中なんですから」
「分かってる!……だが、情緒が無い」
口を尖らせたヴェスファード殿下が解せん……とボヤくのも無理はない。
街はクリスマスシーズンに突入して大いに盛り上がっていた。
おいっクリスマスだって?異世界にそんな行事ある訳ないだろう?と、お思いの貴女っ!
実はあるんです!そう私の住む世界は小説の中だからです。
小説の中なのでイベントごった煮というか、街の大通りの右を見ればホットワインとチェリソー売っている屋台が出ていて、左側の通りにはクリスマスケーキを売っている屋台が出ている。
まさにクリスマスイベント全部盛りだ。
更に街の中心部の広場では巨大な雪像が展示されていて、某雪まつりのような賑わいを博している。
「殿下の好きなドラゴンの雪像がありますね」
「その横には〇〇モンがいるぞ」
本当に世界観無視のクリスマスだった。
隣に立つヴェスファード殿下が眩しそうな表情で雪像を見詰めている。
この世界に来て随分と時間が経ったなぁ。
「殿下も大きくなりましたね……」
思わず呟くと、ヴェスファード殿下は顔を真っ赤にした。
「急にオカンみたいなことを言うな!ほらっ行くぞ!」
そうして私とヴェスファード殿下は手を繋いで祭へと繰り出した。
屋台でチェリソーを食べて、雪像手作り体験をし、イルミネーションを殿下と並んで見ている……ああ、何だかいつになくロマンティックな夜になってきた。
「リジューナ」
ヴェスファード殿下が優しく微笑みながら、『ぽいっとボックス』から大きな包みを取り出して私に差し出した。
「クリスマスプレゼントだ」
「まあぁ!」
なんとっヴェスファード殿下が私にクリスマスプレゼント!?クリスマスの定番といえばアクセサリー類よね?それにしちゃ包みが大きいけど、ネックレス?まさかのティアラとか?
ドキドキしながら包みを開けていくと、目にも鮮やかな際どい所まで横スリットの開いたミニスカのサンタコスが入っていた。
「……」
ヴェスファード殿下は顔を真っ赤にして興奮しながら叫んだ。
「やっぱりクリスマスといえばサンタコスプレだよなっ!リジューナにはこれを着て欲しいんだよ!」
ロマンティックなイベントを信じた私が馬鹿だった。
「……いやじゃっボケェェーーッ!!」
私の絶叫が異世界の聖なる夜に響き渡った。
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メリークリスマス!! 🎉(*^▽^*)
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