第11話 もう1人の王子様

私、リジューナ=オーデンビリアは6才になりました。


本格的に淑女教育が始まったのと並行して、最初の難関と思われる『王家主催のお茶会(チビっ子限定)』の出席が決まりました!


やって来たねぇ〜とうとう正式に聖ジュ続編のメインヒーローの、第二王子と接触する機会がやって来ましたぞ。


なのにさ……なのにさ……


私はマグリアス叔父様に手を引かれて、茶会より前に王城に来てるんだよね。


「やあ、よく来たね」


王城で私を迎えてくれたのは、私より二つ年上のヴェスファード=キールドラド第一王子殿下だった。


いや知ってますよ?勿論、知ってますよ?


聖オトメ☆ジュシュメリ~愛♡も正義⚔も独り占め~のメインヒーローのジルファード=キールドラド第二王子殿下は第二王子……だから上に第一のお兄様がいることぐらい当然、知ってましたよ?


その第一王子のヴェスファード殿下、御年8才に呼びつけられたんだよ!


マグリアス叔父に


「ヴェスファード殿下がリジューナに会いたいって言ってるんだけどぉ」


なんて殿下からの招待状を貰った、私やパパンやママンの驚き様って言ったらさ。ママンに登城した際のマナーを徹夜で覚え込まされたし、パパンが王様に直訴?に出かけたりと大変騒がしかったです。


そうして登城して来てご対面なんだけど……


うちのパパンで人外の美形には慣れたつもりだったけど、このヴェスファード殿下もびっくりするほど綺麗な男の子だねぇ。


眩しくって目が痛いね。


私とマグリアス叔父は部屋に通されて、ヴェスファード殿下の前でご挨拶をした。


「リジューナ=オーデンビリアで御座います」


ヴェスファード殿下は柔らかい微笑みを浮かべている。


「急に呼び立てて済まなかった、ヴェスファードだ。さてマグリアス、リジューナ嬢と二人で話したい。席を外してくれないか」


「!」


私もびっくりしたけど、マグリアス叔父も驚いたのだろう。叔父のヒュッと息を飲む音が聞こえた。


「勿論、扉を開けたままで構わないし少し離れてもらえるか?」


どういうこと?マグリアス叔父に近くで見られていると話せないことを、今から話すつもりなのか?


内心ビクビクしながら、ヴェスファード殿下の様子を窺っていると


「さあ、座って」


と、促されたので緊張しながら豪華なロイヤルソファーに腰掛けた。


マグリアス叔父は困ったような顔をしながら、扉を半開きにしたまま廊下に出て行った。


ひえぇぇ叔父様ぁぁ……王子様と対面でどうすんのこれぇ!?


ヴェスファード殿下は私が腰掛けたのを確認すると、右手をゆっくり上げて小声で何かを呟いた。


すると殿下の手から光の粒子が舞い踊り、頭上から私と殿下の上に降り注いだ。


これって……魔法っ!?


「消音魔法だ、これで俺と君の会話は誰にも聞かれることはない」


ヴェスファード殿下の魔法なんだわっ!すごい、8才でもう消音魔法が使えるのね。


私が羨望の眼差しで殿下を見つめる中、殿下は反対の左手を挙げた。


すると挙げた左手に、いつの間にか本を持っていてその本を私に向かって差し出して来た。


「っ!?」


この本は……まさか……


「君も同じ本を持っているだろう?」


聖オトメ☆ジュシュメリ~愛♡も正義⚔も独り占め~だぁぁ!!!


ってことは、この方まさか……


ヴェスファード殿下は右手をつき出すと、親指をビシッとたててサムズアップをしてきた。


「俺も転生してきたモブなんだ、宜しくね!」


サムズアップゥで、でたぁぁぁ!!しかも第一王子殿下でモブってぇ!?



°˖✧ ✧˖° °˖✧ ✧ ✧˖° °˖✧ ✧ ✧˖° °˖✧ ✧ ✧˖° °˖✧



メイドがお茶の準備を終えて下がった後、妙な沈黙が訪れております。


ヴェスファード殿下が差し出された『聖オトメ☆ジュシュメリ~愛♡も正義⚔も独り占め~』の小説は紛れもなく『聖オトメ☆ジュシュメリ~愛♡も正義⚔も独り占め~』の本だった。(只今ゲシュタルト崩壊中)


お茶を一口飲んだヴェスファード殿下を、失礼がないように盗み見していると


「その小説の内容は同じだけど、見て欲しいのは本の一番後ろなんだ。見てみてよ」


と、ヴェスファード殿下に勧められしまった。


「後ろ……」


後ろというと、私の本にもあった袋とじのことなのかな?


ソッと裏表紙から開くと背表紙に貼り付けてあったのは『マル秘 おまけ★』と日本語(明朝体)で書いてあった。


「マル秘……おまけ……」


「なんかネーミングのセンス悪いよな~あの付喪神って」


ヴェスファード殿下の言葉に思わずにやけてしまったら、ヴェスファード殿下もニヤニヤしていた。


どうやらこの転生者のモブ王子とは気が合いそうな気がする。


「私の本には袋とじがついてました」


そう、ヴェスファード殿下に伝えるとヴェスファード殿下は吹き出していた。


「アハハッ!袋とじなのぉ!?週刊誌みたいにグラビアヌードだったとか?」


私はサラッサラの白銀色の綺麗な髪の、綺麗な綺麗な王子殿下8才を睨んであげた。


「そんなものはありません……」


「失礼」


8才がエロエロしいこと言ってるんじゃないわよ!


私はマル秘のページをゆっくりと開いて見た。

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