第4話 精霊と妖精の良いとこ取り

「私の愛し子はご機嫌かな?」


美形精霊がシャララ〜ンという効果音でも聴こえそうな優雅な動きで、私と妖精ママンの傍に近づいて来た。


「フレデリカ、こんな可愛い女の子を産んでくれてありがとう」


精霊様は妖精ママンに濃厚な口付けをしている。その後に私のおでこと頬にチュッチュと口付けて来た。


あれこの精霊様って美声だけど男の人の声だ?もしかして中性的だけど男の人なの?


あまりに人外級の美貌だったので性別を見誤ってたわ。


しかも、この妖精ママンと私への対応から察するに……このキラキラ~としてフワフワ~とした人、私の親父かっ!?マジでっ!?私、この美形精霊×美形妖精の子供なの!?


おいおい?俄然自分の外見への期待値が爆上がりしてますよ!鏡は無いのか?鏡を所望するぞぅ!


……鏡なぞ所望しなくてもよかったです、はい。


ちょっと首を上げれば、ベビーベッドの横の窓ガラスに、私の天使ぃなお顔がバッチリ見えておりましたよ。


よぉぉぉししぃぃ!!!よくやった、自称神様!


私の望んだとおりの最高級の極上ボディ(予定)になりそうな、精霊パパンと妖精ママンのハイブリッド!DNAの悪戯が起こりそうな気配も無い完璧な遺伝!!


フフフッアハハハ……我、自身に自信を得たり。


「あらあら?お腹空いたのでしょうか?」


赤子の私が不敵に笑い出したのをお腹空いた泣き声と思ったのか、妖精ママンの傍に立っていたメイドがそう言って近付いて来た。


「さあ、飲みましょうね」


ん?


んん?


メイドがゆっくり首元の釦を外し出し、胸元を弄り始めた。


ま……まさか……


ポロンと出てきた。それは……


テ……ティクビィ!?


「あ……あぅ……あ……」


女子が女子のティクビィを吸っちゃう珍状態になっちゃいましたー!!!


中身はいい年したオバサンなのになぁぁ、泣けるよぉ、自称神様を恨むぜっ!



°˖✧  ✧˖° °˖✧  ✧˖°



やっと夜になりましたが、メイド……先程の乳母のメメさんがどうやらベッド横に常駐するみたいなので、枕の下に押し込んで隠した『聖☆ジュシュリア〜愛♡も正義⚔も独り占め〜』の文庫本を読む隙がありません。


おまけに、乳母の反対側の枕元に先程からチビ妖精とチビ精霊の二人が、私の顔を覗き込んでいる。


この子供達の紹介などをされなくても既に分かっている。


このキラキラした子供二人は、間違いなく私の兄と姉だぁぁ!!


「くぁわぁいいぃぃ!」


「可愛いねぇ~」


言葉遣いと、見た目年令から察するに精霊パパン激似の女の子が、妖精ママン激似の男の子より年上だと思われる。もしかしたら更に上に兄弟?がいるかもしれない。


姉と兄は私の顔を至近距離から覗き込み、満面の笑みを浮かべている。


覗き込む姉と兄の頬がプニプニしてそうで触りたくなって手を伸ばすと、兄が嬉しそうに顔を差し出してくれた。


「くすぐったっ!!やわらかっ」


「きゃっリニィ!私も触ってぇ!」


姉も頬を突き出してきたので、姉頬のプニプニも堪能させて頂く。


「きゃっ!きゃはっ!」


「リニィの手ちっちゃ!」


プニプニ~!


枕元で可愛い笑い声をあげる、チビ精霊とチビ妖精。つられてて私も笑い声をあげた。


「ラナニアス様、ナミア様、リジューナ様はそろそろお休みのお時間ですよ~」


乳母のメメが姉と兄に声をかけた。


姉達はキャッキャッと笑いながら、私に向かって手を振りつつ部屋を出て行った。


さて……上手い具合に乳母のメメが姉と兄と一緒に部屋の外へ出た。


これは文庫本を見る絶好のチャンスである。


しかし、こんな赤子ハンドで結構厚めな文庫本を読むことが出来るのか?


一応、枕の本を取って見ようとして首を動かそうとした。


ぐぬぬぬっ……首が回らないぃぃ。


あ……私、首が座ってませんがな。


これは詰んだ。


読めるとすれば偶々、開いている本の上に寝返りを打って乗り上げるとか出来るようになるまで、本の中身の確認はお預け状態になるのでは?


「ふぅぅ……」


そんなこんなで、ティクビィを口にツッコまれて同性からの辱めを受けたり、お股を全開されて股間を拭かれたり……頭の中で『聖☆ジュシュリア〜愛♡も正義⚔も独り占め〜』の物語を幾度となく反芻している間に、私の周りの状況もなんとなく分かって来た。


分かっている事その①


私の名前はリジューナ様、生後数日~数ヶ月?の乳幼児。


姉の名前はナミア。年齢は5~7才くらい。精霊パパンに激似。


兄の名前はラナニアス。年齢は4~6才くらい。妖精ママンに激似。


妖精ママンの名前はフレデリカ。年齢は推定20代。


精霊パパンの名前は不明。年齢は推定20代。


乳母の名前はメメ。年齢は推定20代。



分かっている事その②


生家は公爵家。お部屋の内装の豪華さから察するにお金持ちは確定。


以上。


圧倒的に情報量が足りない。一刻も早く小説を読みたいところだが、どうせ一行しか登場しない令嬢の情報量なので今更見たって一緒……という気もする。


ただ、早読みで文章をサラッと読み進めてしまう傾向のある私が、私の家や兄弟達に関する情報を見落としている可能性もある。


でもさ、精霊パパンとかラナニアス兄とか見ていると、この人達本当はこの小説の主要な登場人物じゃないのか?と思えるほどの美形っぷりなんだけどな。


もしかして主人公とかメインキャラは、更にもっと直視出来ないくらいの神々しさの顔面偏差値なんだろうか?


変な光線でも出してそうだな……それなら私は一行令嬢でも構わないよね~


毎日、眼球に光線を浴びてたら目を痛めてしまうもんね。

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