第15話[柿の木]

俺は今、半径十センチ程度の柿の木の前に立っている。

セツコはダイヤを手刀で真っ二つにしていた。

きっと、俺にも何か力が備わっている筈。

そう思って俺は力一杯、柿の木を殴ってみる事にした。

するとどうだろうか、俺の前にあった柿の木が俺の拳の威力に耐えきれず折れて倒れていくではないか。


「フフフ、子供でこのパンチ力」

「前の世界では間違いなく、格闘技で天下取れてたぜ」


「コラ、誰じゃワシの木を折ったのは」


やべっ、地主の爺さんが来やがった。

俺はこっそりと逃げ、川辺へと向かった。


「よし、次はこの大岩だ」


セツコはダイヤで俺は大岩。

フフフ、コレを壊せれば、もうセツコにビビる必要もない。

そうだ、コイツが壊せたらセツコを呼んで別の大岩をぶち壊してやろう。

そして「セッちゃんはダイヤだっけ?」とか言って笑ってやろう。

セツコの悔しがる表情を想像し、俺は全力で大岩を殴った。

砕ける俺の拳。

痛みで涙が頬を伝う。


「ヤバい、涙が止まらない」


つか、手首から先が全く動かない。

血もすごい出てるよ。

誰か助けて。


「ちょっとタッティーナ、大丈夫?」


ルリ姉が来てくれた。

俺はルリ姉に縋(すが)る様に抱きつき、経緯を説明した。


「ちょっと待ってて」


ルリ姉は俺の怪我を魔法で治してくれた。

もう痛くない。

俺は安心し、ルリ姉にお礼を言う。


「もう、タッティーナはまだ子供なんだから無理しちゃ駄目よ」


「うん」


俺はルリ姉と手を繋ぎ家へと帰っていく。


第15話 完

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