第16話[何かおかしい]

ルリ姉にはああ言われたけど、サクッと魔王を倒して俺の前の世界での犯罪歴をさっさと消したい。

まあ、冤罪なんだけど……。

て事で、街から出たはいいものの、モンスターはスライムでいいか、いきなりドラゴンとかだとハードル高いしな。

とりあえず茂みに隠れてスライムが来るのを待つ。


(よし、現れたな)

(お前には恨みは無いが、俺の経験値の為に死んでくれ)


俺は茂みから飛び出してスライムに殴りかかる。

多少不意打ち気味で卑怯ではあるものの、まだ子供って事で問題ないだろう。


「ハァハァ、どうだ死んだか?」


体が柔らかいせいか殴ってもダメージを負わせている感覚がない。

動かないから死んだのだろうか?

顔を近づけて様子を見てみる。

すると奴は待っていたかのように俺の顔面めがけタックルをしてきた。

何て卑怯な奴だ。

俺は鼻血を撒き散らしながら後方にある木に体を打ちつけた。

突然の衝撃に体がビックリしたのか、上手く呼吸ができない。

過呼吸気味の俺にスライムは容赦なく近づいてきた。

くそぅ、死ぬのか俺は……。

死を覚悟した時、セツコの声が聞こえてきた。


「タッくんをイジメるな」


セツコの拳がスライムにめり込み、スライムは俺の目の前で破裂した。

スライムの目玉が俺の前に転がり、セツコの顔にはスライムの血液なのか青い液体が付着していた。


「タッくん大丈夫?」


スライムの血液を拭う事も無く笑顔を向けてくるセツコに、コイツが魔王なんじゃ無いかと思ってしまう俺。


「家までおんぶしてあげるね」


全身鳥肌と体がセツコを拒否しているのか、赤い斑点の様な物が腕にいっぱいできる中、俺はセツコに話しかけた。


「あんな強いスライムを一撃で倒す何て、セッちゃんはすごく強いんだね」


「プッ、タッくん何言ってんの?」

「スライム何て誰でも倒せるよ」


えっ?

誰でも倒せるの?


「タッくんは本当に弱虫なんだから」

「でも大丈夫、私がタッくんを一生守ってあげるね」


何かが可笑しい。

俺はそう思いながら、腕の痒みと戦っていた。


第16話 完

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