第13話[目]

この世界のセツコを見て、一つ思った事がある。

前の世界の雪子とこの世界のセツコ。

二人には共通点があるという事だ。

前の世界の雪子は正論という名の言葉の暴力を扱う奴だった。

そしてこの世界のセツコは普通に暴力を振るう。

名前、声、そして暴力的な性格。

あまりに似ているので、もしかして雪子も異世界転生したのでは?

そう疑ってしまった事もあったが、それは絶対に無いだろう。

何せ、この世界のセツコは俺の一つ上。

更には前の世界の雪子はまだ生きている。

まあ、神様だから時間を操り……って可能性もあるかもだけど、だとしたら普通は歳下だろう。

それに前の世界の雪子を異世界転生させるメリットも無いし、雪子も必ず断るだろう。

なら、この世界のセツコは……。

嫌な予感が脳裏をよぎる。


「お助けキャラ的な存在じゃないよな?」


力も強く、俺に好意を抱いている。

更にホンダ・セツコという名前。

神様が俺に重要キャラだと伝えているに違いない。

そう考えるとセツコは可哀想な存在なのかも知れないな。

俺が転生する事が決まり、本来なら別の名前の筈なのに、俺に気付かせる為という理由でホンダ・セツコという名前に変えられる。

本当に可哀想だな……。

まあ、絶対にパーティには入れないんだけど。

俺がそんな事を考えていると、急に目の前が真っ暗になる。


「だ〜れだ」


眼球を抉り出すつもりなのか、目の辺りに激痛が走り、俺はあまりの痛さに叫ぶ。


「早く答えてよ」


この馬鹿、だ〜れだはそんなにがっつり顔を掴まないんだよ。

くそ、コイツに同情した俺が馬鹿だった。


第13話 完

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