第12話[あだ名]

毎日セツコの奴が家に遊びに来やがる。

大分慣れて気絶はしなくなったのだが……。


「タッくん」


どうもこの呼び名だけは慣れない。

同姓同名ってだけでも罪なのに、声もそっくりでタッくん呼びは本当に反吐が出る。

だから俺はいつもの様に返事をする。


「あっ、タッティーナです」


「タッくん!」


「だからタッティーナです」


「タッくん♪」


あはは、参ったな。

この世界のセツコは相当なお馬鹿さんのようだ。


「ねぇ、タッくん」

「私の事もセッちゃんって呼んで?」


はあ?

ふざけんな。

背筋がゾワゾワしたわ。

だから俺は丁重にお断りする。


「絶対に嫌です」


だが、セツコは諦め無かった。


「セッちゃんって呼んで」


「セツコ」


「セッちゃんだってば」


「セツコ!」


「セッちゃん」


「セツコ♪」


いい加減諦めて欲しい。

そう思った瞬間、俺の肉体が持ち上がる。


「呼べよ」


コイツ、片手で俺を持ち上げる何て……。

本当にガキか?

だが、俺は暴力には屈しない。

絶対に屈しないぞ。


「セ……、セッちゃん」


「うわぁーい、タッくん大好き」


こうして俺はセツコをセッちゃんと呼ぶ事になった。


第12話 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る