第63話 空中探査(2)


【337日目 東京時間10月9日 0800時頃 グアム アンダーセン空軍基地】



 我々が搭乗しているB-2爆撃機は16時間の飛行の末にグアムのアンダーセン空軍基地に帰還して着陸した。時刻は朝の8時です。徹夜です。


 超疲れた。マジ疲れました。





 ステルス爆撃機B-2のコクピットって、機長と副操縦士の座る操縦席のほかには余席が一つしかなくてあとは仮眠ベッドが一個だけ。

 この狭い空間に3人も詰め込んだんだからすごい窮屈だった。




 私と茜ちゃん、御子柴君と伊集院君は割り当てられた空軍基地内のホテルに入って休息。徹夜だったから眠いんです。


 だけどコリンズ大将とエマ園長はB-2爆撃機のパイロットさんと部隊指揮官さん、そしてアメリカ本土からやってきていたアメリカ戦略軍司令部と統合参謀本部(JCS)のスタッフさん達と空中探索結果のデブリーフィングなんだって。

 「エネミーサーチ」と「お宝探知」の探知反応の方位・時刻情報とその分析結果を速やかに統合参謀本部(JCS)と大統領官邸に報告しなければならないらしい。


 お疲れ様です。お願いします。私は眠いのでお休みなさい。






【338日目 東京時間10月10日(金)1100時頃 太平洋上空】



 一夜明けた翌日の午前中に私たちは日本に帰るべくC-37BガルフストリームG 550ビジネスジェットで太平洋上空を飛行していた。




 コリンズさんがアメリカ戦略軍とJCSのスタッフの皆さんたちと一昨日の空中探査データを分析したところ。


 宇宙間ゲート(仮)のお宝探知反応のあった場所は中朝ロシア国境のロシア側にある場所であることが確定した。



 更に。御子柴君の『エネミーサーチ:吸血鬼』の示す方向を分析した結果、宇宙間ゲート(仮)から北朝鮮の平壌に向かう吸血鬼の長い行列があることが分かった。


 ということで、これが宇宙間ゲートであることは間違いはないだろう。




 今後は高高度無人偵察機と偵察衛星を集中運用して吸血鬼達の移動状況と経路を調べて宇宙間ゲート(仮)の場所を特定する方針とのことだった。






「コリンズさん、ロシアと協力して宇宙間ゲート(仮)の場所の調査は出来ないですか?」


「そうですね。そのようにすべきかもしれませんね。

宇宙間ゲートの場所を特定できて、ロシアと協力して宇宙間ゲートに対応できるならアリス様はどのようにすべきとお考えですか?」




「まずは宇宙間ゲートの転移面もしくは宇宙間ゲート全体を私の時空間操作『障壁』を使って封印することが先決かなあ。

封印の解除はいつでもできるからね。


宇宙間ゲートを封印した後で吸血鬼たちと交渉して場合によっては記憶サルベージを使ってゲートの向こうの情報を入手して。

それからどう対応するか具体的に決めるって感じですかね?」




「その理由は宇宙間ゲートの向こう側にどんな危険な奴が居るか分からないからですね?」




「そう。異世界イースにおいても中央大陸に存在する宇宙間ゲートは時空間操作『障壁』を使って封印したんです。

異世界イースの中央大陸にある宇宙間ゲートの向こう側の世界『クレティーシャ』には真竜や現地土着神という強敵が居るからですよ。


クレティーシャには現地土着の人類も居るらしいですから彼ら人類を守護したいという気持ちはあるんです。

だけどクレティーシャに存在する現地土着神は時空神である竜亜神セイタードを滅ぼしています。


この竜亜神セイタードってのは今の私はもちろんレベルアップした私よりも強かったはずなんですよ。


それに、異世界イースではレベルアップした私自身も不意打ちとは言え竜亜神タタウイネアに一度は滅ぼされています。

ですから、今の私でも勝てない敵がいても不思議ではないのです」




「宇宙間ゲート(仮)に関してロシアと協力するなら吸血鬼に関する情報をほぼすべて共有しなければダメでしょうね。

もちろんアリス様や我々の存在や能力、それにアメリカ政府と日本政府に供与している特殊アイテムの情報は秘匿しますけど」




「吸血鬼情報を共有するのは良いんじゃないですか。

吸血鬼達は自分達がどこから来たのかを説明もしないで宇宙間ゲートを隠匿しているんだから」


「そうですね。ロシアの反応が読み切れませんがしょうがないですかね。

それともアリス様を含めた少数のチームでロシアに入国してゲートを捜索しましょうか。隠密を使えばさほど危険は無いかもしれません。我々使徒のみでチームを組めば簡単に発見、封印できるかもしれませんね」




「それをやるのも微妙だねー。茜ちゃんとか御子柴君とか高校生だからね。

子供にロシアへの潜入ミッションをさせることになるけどロシアにとっては立派な敵対行為なので気がすすまないよね。

一昨日のB-2爆撃機でギリギリ領空を掠めるのが精一杯かな? ロシアも中国も核兵器保有国だから要注意だよね?」



「それもそうですね。ロシアに情報提供をしつつ協力を依頼した方が良いのか。

もしよければワシントンに行って大統領はじめ安全保障会議(NSC)メンバーと協議してもらえませんか? 

アリス・コーディがワシントンに行けば大統領以下全閣僚が駆けつけますよ?」



「コリンズさんの言う通り、早めにアメリカに行った方がいいかもですね。日本に帰ったらできるだけ早く行きましょう。茜ちゃんも行くよネ?」


「もちろんだよ~。アメリカに行くチャンスは逃さないよ!」




「あのー俺も行きたいんですけど。連れて行ってもらってもいいですか?」


「ああ御子柴君。今回の宇宙間ゲート探索でも大活躍だったからね。ご褒美に連れて行ってもいいけど、学校は良いの? ご両親は反対するんじゃない?」



「ウチの両親の説得はたぶん大丈夫。

俺の持ってるスキル『異世界言語(万能)』で英語と国語がぶっちぎりで高得点取れるようになったしアリスさんの知識転写で数学と物理化学なんかの理系科目も地味に高得点取れるようになって成績が爆上げしてるんですよ。

教師からは東大狙えって言われているくらいで。

ましてやアメリカ大使館の関係者扱いで旅費まで不要となれば反対できるわけないと思うよ。パスポートも持ってるし」



「そっか。じゃ行けるようなら一緒に行く? 伊集院君も一緒でも良いよ?」


「是非是非お願いします。伊集院君も確実に行くと思います。前回の夏休みのアメリカ旅行の時に声がかからなくて酷く落胆していましたから。まあ、そのせいで勝手にソウルまで行って手柄を立てようとした訳なんですけどね」



「あははは! そうか、そんなことあったね! ごめんね夏休みにアメリカ旅行を誘わなくて。

あの時は女子だけで楽しく旅行しようと思ってたからね? 

今回は遊びに行く訳じゃないからワシントン近郊をチラッと回るくらいしか出来ないと思うけど、それでいいなら一緒に行こうか?」


「はい、お願いします。伊集院君も喜ぶと思いますので是非」


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