第24話 魂の複写

 さて。御子柴君たちの件はとりあえずひと段落ついたので水無瀬美咲ちゃんとお話をするんだけど、その前に茜ちゃんともう一度状況を再確認してみよう。最初に美咲ちゃんの問題を発見した御子柴君たちの話も聞いておきたいしね……



「……美咲ちゃんの件だけど、私もステータスを確認したら確かに『リーナ・フィオーレに憑依している地球人水無瀬美咲の魂の複写元となった人物』ってなってた」


「アタシが見てもおんなじだったよ。念のために追加情報がないか隅々まで鑑定したけどなにも出てこなかった。アリスちゃん、美咲ちゃんはどうなったのかな? 可哀想な目に遭ってないかな?」


「うん……正直言ってわかんないけど可能性としては私のオリジナルである有朱宏治と似た状況なのかもしれない……つまり、美咲ちゃんのコピーがどこかに居る。そしてそこはこの地球宇宙ではなくてどこかの別の宇宙である可能性が高い……」



「俺たちは一年間も異世界に行ってたけど戻ってきた時は地球では1秒しか経ってなかった。水無瀬さんが俺たち同様に白い世界の女性に何かされたのならどうして地球に戻ってないのかな?」


「無限に存在している並行宇宙って、それぞれの時間経過速度は様々なんだよ。中には地球宇宙に比べて途方もなく時間進行が早い宇宙もあるからそういう宇宙を選べば御子柴君たちみたいに戻ってきた時に1秒しか経ってないってこともあるだろうね」


「アリスちゃん、美咲ちゃんのコピーが送られた世界って探せるのかな? なんとかできない?」


「……少なくとも今は無理だね……今の私は宇宙間ゲートを作れないから。12月8日になれば多分私は進化して宇宙間ゲートの作成と生命体創造、そして精神構造体の複写と転写ができるようになる。

だから、私が美咲ちゃんのコピーに会うことができれば希望に沿った対応が取れるかもしれない……だけど美咲ちゃんのコピーの居場所は分からないんだ。残念だけど」




「じゃあどうすればいいのかな。なにをしてあげられるのかな」



 茜ちゃんが半泣きになってきた。



「多分だけど、白い世界の女性は時空神の一人で茜ちゃんたちを異世界に送ったけど地球に返してくれた。伊集院君なんか異世界で殺害されたのに地球に戻ってこれた。

だから美咲ちゃんも地球に戻す予定なんだと思う。美咲ちゃんのコピーが地球に戻ってきたときに希望を聞いてあげたり仲間として助けてあげられると思うよ。だからね、多分大丈夫だよ……」




 茜ちゃんの背中を摩りながら慰めてみる。……ちょっと落ち着いたかな?




「うん、アタシも異世界では辛かったから……でも、そうだよね……地球に戻すつもりだよね。そうじゃ無いと異世界に送る意味ないよね……そんな気がしてきた」


「じゃあ、あんまり一人で待たせても悪いから美咲ちゃんと話しに行こうか。コリンズさん、最初は私たち高校生だけで話をするからゴメンなさい。ちょっと待っててくれますか? みんなで美咲ちゃんのところに行きましょう……」



 特任公使執務室から出る私たち。茜ちゃんの様子を見るともう落ち着いていて大丈夫そうだ。







「美咲ちゃんお待たせー! ごめんね、ちょっと時間かかっちゃった。早速なんだけど、大事なお話があるんだ。聞いてくれる?」


「うん大丈夫。どんな話?」


「実はね……私は異世界イースからやってきた神様なのです。茜ちゃんや御子柴君、伊集院君はその事を知っていて私の仲間になってくれています。

良かったら美咲ちゃんも仲間にならない? 一緒にアメリカ旅行に行けるし魔法を使えるようになるから楽しいよ?」



「え……神さま?」




 美咲ちゃんは半笑いのまま固まってしまった! しかし固まっていても美少女だった! そこを茜ちゃんが説得にかかる!



「美咲ちゃんアタシが保証する。アリスちゃんが言ってることは全部本当のことだし、信じて。アリスちゃん、なんか見せられるものないかな?」


「そうだねえ。魔術を転写するってのが手っ取り早いけどそうする? じゃあ、いつものやつで行くか。



       ーー光あれーー




 部屋全体が強くて柔らかな光の波動に包まれる。私の差し出した掌の上に光が凝縮していき直径10cmほどの光る球体が出現した。



「永久に光り続けて破壊することもできない特殊なアイテムだよ」



 私は一瞬にして光る燭台を虚空から作りだしてカウンターの上に置いた。


 美咲ちゃんはポカンとお口を開けて燭台を見つめている……可愛いよね。

 御子柴君と伊集院君もポカンとしてるね? この子達には神器を生み出すところは見せてなかったからね……




「では次に美咲ちゃんが魔術を使えるようにしましょう。

転写ー『ステータス』『念話』『神託』!」



名前 水無瀬美咲

種族 人(女性) 

年齢 17歳  体力G  魔力F

魔法 念話5神託5ステータス5

身体強化 ー

称号 リーナ・フィオーレに憑依している地球人水無瀬美咲の魂の複写元となった人物。



「ヨシできた! 茜ちゃん、美咲ちゃんにステータスの使い方教えてあげて?」






 その後、茜ちゃんから「念話」と「ステータス」の使い方を教わって互いに念話とステータスの鑑定をしあったりした美咲ちゃん。私が神様であることを納得できたみたい。


 その上で「リーナ・フィオーレに憑依している地球人水無瀬美咲の魂の複写元となった人物」と称号欄に書かれていることの意味を聞かされてたものの、いまいちピンときてないみたいだ。


 なるほど美咲ちゃん以外の人は皆んな異世界に飛ばされた経験があるからその恐ろしさとか危険性を骨身に感じてるけど美咲ちゃんはそうではないからピンとこないのか……でもこれはこれで美咲ちゃんにとっては幸せなのかもね。別宇宙の異世界に飛ばされたと思われるコピーの境遇を心配してもできることは何にもない訳だし……







 その後は予定どおりに大使館別館の見学と保育園の説明と体験実習という幼児との触れ合いを経験してもらう。


 夜には全員でレストランで夕食を取った後は自由に寛いでもらった。





 美咲ちゃんは夕食後に茜ちゃんと色々と相談していたみたいだけど私たちの仲間になってくれることになったって報告してくれました。了解です。さっそく魔術の転写をして強化してしまいましょうー。




「じゃあ仲間になってくれるということで美咲ちゃん、何か希望ある?」


「うーん希望かあ。正直言ってよく分かんんないけど、茜ちゃんどうしたらいいと思う?」


「……できれば使徒に! アリスちゃん、使徒の枠が厳しいのは分かってるんだけど何とかならないかな?」



 使徒かー。伊集院君も使徒になりたいって希望してくれたけど断ったからなぁ……でも美咲ちゃんは茜ちゃんが強く推してるし茜ちゃんの願いは無碍にできないなあ。あ、そうか……あれが必要か。



「……美咲ちゃんには『使徒』じゃなくて『巫女』になってもらおうかな……巫女は攻撃魔法が使えない替わりに『神楽』っていう特殊魔法が使える特別な称号なんだよ」



「巫女」という称号はちょっと特殊で称号を持つ人のステータスに幾つかの条件がつくものだ。


 一つ目。「攻撃魔法を習得出来なくなる」睡眠など状態異常付与攻撃は可能。

 二つ目。「神楽」という特殊魔法が使える。

「神楽」を使って魔力の負担なしに自分または他者の魔力を完全回復することができる。ただし24時間のクールタイムがある。

 また、巫女が全魔力を費やす事によって神託で繋がった状態の神を降臨させられる。つまり瞬間移動である。これもクールタイムは24時間。

 だから私は神託が繋がりさえすれば巫女の所に瞬間移動できるということになる。


 巫女の「攻撃魔法が使えない」というペナルティは大きいけど魔力回復と限定的瞬間移動は非常に有用である。



 以上の説明を美咲ちゃんと茜ちゃんにしたところ是非に巫女にして欲しいということなのでさっそく巫女になってもらおう……



「では水無瀬美咲さん。亜神アリス・コーディの巫女になってくれる?」


「はい! なります!」



「……ちゃんと巫女になれたか確認しましょう……ステータス! えーと……確かに巫女になってるね、引き続き巫女用強化魔術を転写!」




名前 水無瀬美咲

種族 人(女性) 

年齢 17歳  体力G  魔力F

魔法 神楽5回復5睡眠5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行5

   神託5悪魔通信5竜通信5

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5

   恐怖耐性5嘔吐耐性5

   反応速度5防御5老化緩和5

称号 リーナ・フィオーレに憑依している地球人水無瀬美咲の魂の複写元となった人物。

   亜神(時空)アリスの巫女長



「うん、できたね。美咲ちゃんこれからよろしくね!」


「はい! よろしくお願いします!」


「アリスちゃん! 枠が厳しいのに美咲を巫女にしてくれてありがとう〜」


「大丈夫だよ巫女は必要だったから……もしかしたら伊集院君が僻んじゃうかな? でも男は巫女にできないからしょうがないよね!

ヨーシ、明日はさっそく魔術の確認と練習をしに行こう!」





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