第23話 県立K高校
【150日目 東京時間5月6日(金)1540頃 県立K高校】
私と茜ちゃんはいま大使館の黒い大型バンに乗って東京都心を越えて一路南下、羽田空港を通り過ぎて川崎からアクアラインに乗って千葉県へ向かっているーー茜ちゃんが異世界で世話になったり地球に戻ってからは茜ちゃんの心の支えになったという連中に面会するためなのです。
私の護衛をしてくれているシークレットサービスの五人は追走する二台目の黒い大型バンに乗って付いてきてくれている。ご苦労様です。
今日は金曜日だけど大使館の用事があるからと早退して特級の美少女二人が制服JKの装いで会ってあげるのです。異世界帰りの「勇者」君と「魔王」君……感謝してもらいましょう。
そして茜ちゃんの親友だという水無瀬美咲さんに会うことも大事な目的。
私たちがアメリカから帰ってきてすぐに茜ちゃんから相談を受けた。ちょっと複雑な話だし時間がかかるかもしれないから水無瀬美咲さんは今日は私達と一緒に埼玉県に同行してもらってアメリカ大使館別館の見学兼ねて茜ちゃんの家にお泊まりしてもらう予定になってる。
♢
アクアラインを渡り切ったところで高速を降りて一般道へ。7kmほど走れば県立K高校に着いたので正門から入って駐車スペースへ入っていく。
駐車スペースからはグラウンドが見える。授業はもう終わったろうから帰宅する生徒や部活の生徒たちが出てくるだろうね。
体育館の横の駐車スペースに立ってぼんやりとグラウンドの方を見ているとチラチラこちらを見る生徒が増えてきた。
フーム。私の着ている県立T高校の女子制服は白いカッターシャツに紺色のベストとフレアスカート、足元は茶色のローファー。全体的に上品なデザインなので気に入っている。高校生の皆さんの注目を集めるのもやむを得ないでしょう……私ってどこから見ても特級の制服美少女JKなのだから……
いつの間にか茜ちゃんは女子生徒に囲まれてキャーキャー騒がれている。さすが茜ちゃんです。私以上に注目を浴びてらっしゃる……元同級生とか部活の子達かな?
……すると!
「こんにちは。何かお困りですか? 行きたいところがあればご案内しますよ?」
絵に描いたような普通の少年二人が近寄ってきて声を掛けてきた! ナンパかな? 女子になって以来、何気に初めてかも! 特に嬉しさも喜びも一切感じないけど。
「ああーー私、あっちにいるあの子と一緒にこの学校に通っているあの子の友達に会いにきたんです。だけどあの子は女の子達に囲まれちゃったから。待っているんですよ」
「そうなんだ。埼玉県から二人で車で来たの?」
この子めっちゃ話しかけてくるんですけど? まあ嫌な感じはしないし暇つぶしになって丁度いいか。
「うん、そうだよ。あっちにある黒い車でね」
「へええーー珍しいナンバーだよね。なんの車なの?」
「アメリカ大使館の車。アタシ達はアメリカ大使館の関係者だからね」
「そっか。アメリカ人なんだね? めっちゃ日本語上手だけど?」
「アメリカ人なのよ。日本語上手なのは日本語語を一杯勉強したからかな〜マンガとか読みたいからね?」
「なるほどー。やっぱ少女マンガ? 少年マンガも面白いのあるからオススメだけどね。〇〇××△とか」
「そのマンガは知ってるよ。割と好きだった……私は△□〇〇のが好きだったかな。世界観が緻密だしバトルも面白いから。休載が多いのは残念だったけど飛び抜けて面白かったな〜」
「△□〇〇面白いよね。あの×××△編なんて痺れたよ。読んでて泣いちゃったからねえ」
「そうなんだよー! 泣けるよね? ホントにいいマンガだよ。何回読んでもイイねえ」
とかなんとか10分くらい話していると茜ちゃんを囲んでいた女子達が部活に向かったのだろう、茜ちゃんが一人の女子生徒を伴ってこっちにやって来た。この子が水無瀬美咲さんだね。なるほど、聞いていたとおり茜ちゃんに匹敵するくらいの美少女だ!
「アリスちゃんごめんねーーお待たせしました。御子柴君と伊集院君? もうお友達になっちゃった? アンタたち随分と積極的になったんだね?
ああ、この子達が例の「勇者」「魔王」の二人か……そうかなとは思ったよ。名乗らずに声をかけるとは良い行いとは言えないけど若さゆえの過ちだろうから水に流してあげましょう。私は大人だからね、さほど嫌な感じもなかったし。
「アリスさんごめんね名前も言わないで声掛けて。茜さんが側にいなかったけどつい声掛けちゃった。俺が御子柴平次で」
「僕は伊集院平助です!」
「うんうん、いいよいいよ、茜ちゃんから聞いてるよ。ちょっとお二人にお話しする必要あるんだけど……どこがいいかな?」
「アリスちゃん、ぶっちゃけこの辺りって密談できる気の利いた店はないよ? 店に入るよりこの子達しょっちゅうお互いに泊め合ってたからこれから大使館別館に行って泊まっても問題無いと思うよ。明日は土曜日だし」
「そう? 良いなら車でぶっ飛ばして2時間くらいだけど大丈夫かな?」
「御子柴君、伊集院君、それで良いよね?
……そしてこちらの人がアタシの親友である水無瀬美咲ちゃんです! この県立K高校の女バスで一年間一緒に過ごしてクラスも一緒だったんだ。
美咲ちゃん、こちらがいまアタシが凄くお世話になってる友達で、埼玉県立T高校の同級生でバイト仲間でもあるアメリカ人のアリス・コーディちゃんです!
アリスちゃんはアメリカ大使館アドバイザーって肩書きも持ってる凄い子なんだよ……!」
「こんにちは! 水無瀬美咲です! アタシは茜ちゃんの友達なのでアリスちゃんとも友達になれたら嬉しいなーって思ってます。よろしくね!」
ほほーー素晴らしくフレンドリーで親しみやすいーー茜ちゃんと似たタイプですね? 気に入りました。ずば抜けた美少女でもあるし。これは是非とも取り込むというかお友達になってもらいましょうー。
「うん! もちろんだよ。こちらからもよろしく! 今日は埼玉の大使館別館とか保育園とか見学してもらって気に入ったら是非保育園でのバイトを検討してね! 土日に週一でもいいし、大使館から送迎の車出してもらうから交通の心配はないからね?」
「ホントですか? そんな凄い待遇で大丈夫なのかな。でも茜ちゃんが一緒なら良いかも。お願いしちゃおうかな」
「ふふふ! 見学してからでいいから教えてね。茜ちゃんの推薦だからいつでもウエルカムです。じゃあ、埼玉県に向かって出発しましょう!」
という事で大使館別館に移動する。
車の中では保育園の様子とか採用された場合の待遇。大使館別館のお仕事内容など。それから先日のアメリカ旅行の話をして盛り上がった。
♢
県立K高校を出発してから一時間半後に大使館別館に到着。
水無瀬美咲ちゃんは私の部屋でちょっとだけ待っててもらう。悪いけど御子柴君と伊集院君の件を先に片付けてしまいたいからね。
コリンズ特任公使の執務室でエマ園長とミラ副園長、そしてコリンズ特任公使も同席して話を聞いてもらうことにする。さてと。
「茜ちゃん、こっちの情報はどこまで話してるの?」
「えっと……アリスちゃんが神様で伊集院君タイプの異世界から来たって事とコリンズさんとエマさんミラさんが使徒でアタシも使徒になったって事かな……みんな人類の守護者だから敵じゃないよって納得してもらった。ね、みんな?」
「うん、俺たちは納得しているよ。俺は『鑑定』で見たし伊集院君は『ステータス』で見たからね」
「なら話は早いか。君たち私たちの仲間になる? 仲間といっても情報共有したり協力し合ったり助け合ったりするくらいだと思うけど?」
「……アア、アリスさん! 如月さんみたいに使徒にしてくれるのでしょうか? 僕もアリスさんの使徒になりたいのです!」
魔王の伊集院君がキラキラした目で使徒になりたいと私に直訴してきた!
「うーん実は使徒ってホント特別でね? 色々と条件があって今は使徒にする事は出来ません……まあ、将来的にはわからないけどね……」
『アリスちゃん使徒にする条件って何なの?そんなのあるって知らなかったよ。アタシなんかマクディール基地で会って直ぐに使徒にしてくれたからどんな条件に合致したのか見当もつかないわ』
『ははは。正直言ってお互いに合意してればOKなんだよ。ただ使徒の人数の上限があるから慎重になるだけ。ミラちゃんは一眼見て好みのタイプだったから即決したかな〜要するに好き嫌いです」
『そうなの? ありがとう〜アリスちゃん』
一方で伊集院君はがっくりと肩を落としていた。私たちの念話リンクに入っている茜ちゃんがフォローしてくれる。
「伊集院君、気を落とさないで……使徒になってもならなくても私たちは仲間だから……それにアリスちゃんの異世界イースでのお話だとね、使徒にはならなくても亜神アリス軍団というのがあってその軍団員にしてもらえる可能性はあるのよ。だからあんまり気を落とさないでね?」
茜ちゃんってホントにいい子。こんなオタク達に優しい言葉をかけてあげるなんて。
しかしーー亜神アリス軍団かーーアース世界の本体としては久しぶりに聞いたなその名前。
……使徒、巫女、聖女とは違って確実に何の効果もないただの呼び名である『軍団員』。
しかし異世界イースでは軍団員に任命されたフィリッポ曹長以下四名は喜んでいた。彼らは傭兵だったからただの高校生であるこの子達とは違うけどね。いや……この子達はただの高校生ではない。『勇者』と『魔王』だった。
フーム。なるほどーー勇者と魔王を私の僕としてコレクションするのも悪くないかもしれない。
亜神アリス軍団一等兵 勇者御子柴!
亜神アリス軍団一等兵 魔王伊集院!
語呂はイマイチなものの。勇者と魔王を一兵卒として使役する……私の実力というか凄さが際立つかも知れないねえ。
「……アリスちゃん? さっきからブツブツ言ってないで彼らを軍団員とやらにしてあげれば? アリスちゃんは特級の美少女で亜神なんだから誰を軍団員にしようと実力も凄さも揺るがないから……」
「……あうう!エマ園長……また口に出ていましたか? ヨシ! 君たち軍団員になるかな?」
「うーん。なってもいいけど一兵卒というのが引っかかるんですけど」
「分かった。じゃあ伍長でいい? これなら一兵卒じゃないよ?」
「うーん。どうかな〜?」
「……分かったよ。合衆国海兵隊軍曹であるミラちゃんと同じ軍曹だったら文句ないよね?いきなりミラちゃんと同じ軍曹なんてあり得ないけど今だけの特別だよ?」
「分かりましたーアリス軍団員軍曹を拝命いたしますー」
「そうかそうか。なってくれるのね。どれどれ。既にステータス上は軍団員になってるね。意外と簡単に出来るもんだね。
ヨシ。では『念話』と『神託』。そして『ステータス』を転写しよう。エイっ!」
名前 御子柴平次
種族 人(男性)
年齢 16 体力G 魔力F
魔法 念話5神託5ステータス5
身体強化 ー
スキル 火魔法5水魔法5光魔法5
神聖魔法5
身体強化5毒耐性5麻痺耐性5
剣術5聖剣術5槍術5神槍術5
アイテムボックス5鑑定5
異世界言語(万能)
称号 帰ってきた勇者
亜神アリス軍団軍曹
名前 伊集院平助
種族 人(男性)
年齢 16 体力G 魔力F
魔法 闇弾5水弾5光弾5土弾5風弾5
火弾5ステータス5
暗視5遠視5隠密5浄化5
探知5魔法防御5念話5飛行5
睡眠5魔物調教5神託5
身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5
睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5
反応速度5防御5
称号 異世界から帰ってきた男
魔王
亜神アリス軍団軍曹
伊集院君はもともと念話とステータス持ってるから神託だけだね。
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