第15話 日本へ
【53日目 ワシントンD.C午後3時頃 北米大陸上空 東京時間 1月30日 午前4時頃】
アリス・コーディ、エマ・ベーカー空軍少尉、そしてミラ・アンダーソン海兵隊軍曹の3人が乗っている要人輸送機Cー37Bは日本の米軍横田基地に向けて北米大陸上空を飛行している。シークレットサービスの隊員5名も同乗している。ご苦労様です。
ところで、アンダーソン海兵隊上等兵は日本赴任にあたって海兵隊軍曹に昇任した! いくらなんでも上等兵を大使館アドバイザーというのは変だったらしい。ラッキーだね!
この機体とほぼ同じ時刻に2機のCー40B要人輸送機(ボーイング737-700の米空軍型)が離陸。大使館で特任公使付書記官になるメンバー及び家族。そして何故か大量のシークレットサービスの人達が乗り込んでいる。
……私なんかのためにはるか日本に島流しになる人達を目の当たりにして心が痛む。やっぱり早めに日本知識を転写してあげよう。この人達は私の特殊能力を知っているんだから今更大差無いはずだし。
アンドルーズ空軍基地を13:35に離陸して在日米空軍横田基地には日付変更線を飛び越して日本時間の翌日16:45に着陸する。概ね14時間のフライトである。長い。
私たちが調教した強化カモメ12羽は今回出国するにあたって解放しようと思ったけどカモメ達の猛烈な反対にあってしまった。しょうがないから私のマイホームにある内径30mある多目的ルームに12羽纏めて押し込んでおいた。強化カモメだから大丈夫でしょう。新鮮な大気を生産する神器「アース大気」と魚を置いてあるからね。14時間耐えなさい。
日本への動物の持ち込みはダメなんだろうけどコイツらは「隠密」使えるから見つからないし。ごめんね、税関の人。因みに横田に着いた後は東京税関と東京入管から職員が派遣されてきて入国手続きをしてくれるという事だ。ありがとうございます。
ところで私のパスポートは公用旅券(外交官用のブラックパスポート)になった。私達は大使館アドバイザーだからね!
「それでアリスちゃん、園長先生から保育園の事について説明があります。良いですか?」
「はい! お願いします。園長先生!」
「はうう……悪くないわね……園長先生という響き。
特に特級の美少女であるアリスちゃんに言われると破壊力が凄いわあ。背骨の力が抜けるような感じがする。
えーこほん。副園長は知ってると思うけど聞いててね。
有朱遥香さんの住んでいる自衛隊の官舎の隣にうまい具合にそこそこ高級な賃貸マンションが完成していたのをアメリカ大使館が丸ごと買い取りました。
そのマンションの1階と2階を保育園に大至急改装します。日本の新年度が始まる前に改装と職員の募集も行って4月から開園です。ここまでは良いですか?」
「はい!園長先生!」
「あうう、最高なんですけど。
アリスさん?返事がよく聞こえませんでした。もうちょっと優しさと愛情強めにお願いします。ではもう一回。
ここまでは良いですか?」
「はい♪ 園長先生♪」
「あああ。副園長、説明の続きを。よろしく」
「……はいはい。えーと、その買い取ったマンションの最上階12階はぶち抜いて事務所エリアに。
11階は全部ぶち抜いて新任のアメリカ大使さんの公邸に。
10階はぶち抜いてアリスちゃん、私、エマ・ベーカー園長の宿舎に。
9階は結構ぶち抜いてコリンズさんとJCS空軍中将さん家族宿舎に。
8階〜6階はぶち抜いて書記官さん達家族の宿舎に
5階はぶち抜いてシークレットサービスの事務所兼待機室に
4階〜3階はアメリカ人保育園職員の宿舎に
って感じで収めるらしい。
港区赤阪にある大使館は遠いけど元々の任務がミズ・コーディ対応の人達だから何の問題もない。12階に事務所エリアもあるから。だから、なんなら赤阪に行く必要もないから。ここまでは良いかな?」
「はい♪ 副園長先生♪」
「おおう、確かに。これは大変に良いものであるのは間違いないね。でも悶えて動けなくなるということはありませんよ? ……まあそんな事はいいか。
それでマンションの改装工事があと3週間かかるから私達は東京のホテルで過ごします。
コリンズさんと新任の大使さんは理由があってT市のホテルに住むんだって」
「へえ、大変だね? なら日本に着いてから何しようかな。遥香のストーカーしに行けるかな? 私って大使館に居なきゃいけないの?」
「赴任した人は色々手続きとかあるから1週間出てこなくて良いんだって。ああ、アリスちゃんは高校の入学手続きあったじゃん。大使館の特任公使付庶務の人が全部手続きやってくれてて一緒に学校に行けば良いらしいよ」
「うん、分かった。入学する高校って何て高校か分かる?」
「確か県立T高校って言ってた。宿舎からは近いってよ? どうせ不登校になるんだから選ぶ必要ないし近いところにしなさいって言っといたんだ」
「ふーん、県立Tか。割と優秀なとこだったような気がする。よく分かんないけど。
しかし私が特級の美少女とはいえ、よくも学業成績最悪の私を入れる気になりましたね? しかも早々に不登校になる気満々の不良アメリカ人だというのに。
そういえば県立T高校は確か制服通学だったような……これで私も正真正銘の女子高生になるわけね……」
♢♢
さすが高級ビジネスジェット。長時間のフライトでも椅子も快適で疲れませんね……
アンダーソン海兵隊軍曹はグースカ寝ているけど、私ももう寝た方がいいのかな。東京はワシントンとほぼ昼夜逆転だから狂っちゃうんだよね体内の時計が。
【54日目 ワシントン時間午前4時頃 東京時間 1月30日 午後5時頃 米空軍横田基地】
ようやく横田に着陸した。私達の乗っていたガルフストリームが一番早くて後続の2機はこの後10分間隔で着陸するそうだ。ちょっと待ってて書記官の皆さんに知識を転写してあげよう……
♢
書記官の皆さんが空輸ターミナルに集まったところで声をかける。
「書記官の皆さん、ご家族の皆さん、アリス・コーディです。はるばると飛行機での長旅。お疲れ様です。
今回の日本への赴任、いろいろとご不安もあったと思いますが、日本は良いところです。私が言うのも変ですがようこそ日本へ。皆さんを歓迎します」ニッコリ。
「おおお! ありがとうございます! これからご一緒させて戴きます! よろしくどうぞ!」
あ、この人がJCSの空軍中将さんだね?
「はい! よろしくです。それでですね、取り敢えず書記官の皆様にお話が。ちょっと集まってもらえますか? こっちです。大丈夫ですよ何も必要ありません耳を貸していただければ……」
ゾロゾロと集まるおじさんとおばさん達。男女比は2対1くらいだね。さすがアメリカ、日本だったら全員男もあり得るからね。
「実はですね、ご希望があれば私からプレゼントを進呈したいと思います。
私の持っている能力に『特定の知識を転写する』と言うのがありましてね?
皆さん日本語はそれなりにお上手だとは思いますけど、ご希望があれば日本語の読み書き会話が母国語並みにできるように知識を差し上げようかと。
ただし精神構造体に対する操作になりますので気が進まない方もいらっしゃるでしょう。その場合はご辞退いただいて結構ですので。ちなみにコリンズ特任公使とエマ・ベーカー空軍少尉。ミラ・アンダーソン海兵隊軍曹には2カ月前に日本語及び日本知識を転写して全く問題はー」
「ミズ・コーディ!是非私に知識の転写を!初めての日本で不安だったのです!
コリンズ特任公使がなんであんなに日本語が出来るのか謎だったんですよ!なるほど!今すぐお願いします!」
皆んなの顔を見回すと全員が激しく頷いている。
なるほど、書記官の皆さんは私が超美少女である事はもちろん度外れた超不思議技を持っていることよくご存知のようです。
ある意味私を信頼していらっしゃると言う事ですね。「精神構造体に知識を転写」とか、狂人の寝言にしか聞こえないお話を一瞬のうちに理解されました。大変に素晴らしいです。大変によろしいでしょう……
「では皆さん同時に行きますよ?書記官さん達に以下のものを転写!
「アース日本 読み書き会話(普及版)」
「アース日本 一般常識(簡略版)」
「アース日本 数学知識(簡略版)」
「アース日本 科学知識(簡略版)」
「アース日本 軍事知識(簡略版)」
「どうですか? スマホで日本語サイトでも見ていただいて確かめてください」
「うおおおおー!!!!」
「読める!読めるぞ!」
「話せるし聞く事もできる!分かる!」
「はい、ちょっとみなさん耳を貸してください」
♢
ようやく聞いてくれる体制になった。
「では次です。一応この事は秘密にしておいてください。際限なく多数の方にはできませんから。
それで、ご希望があれば皆さんのご家族のにも転写いたしますがいかがー」
「ミズ・コーディ、もちろんお願いします。すいませんがちょっと家族の皆さんに説明しますから待ってもらえますか?」
♢♢
私達3人は米軍横田基地から東京都内に向けて大型マイクロバスで移動している。書記官さんと家族の皆さんは大型バス2台に分乗して別行動になった。
あのあと書記官さんの家族の皆さんにも知識の転写をしたけど小学生の子とか大丈夫かな?……何か気がついたり困ったら声をかけてって言ってあるから大丈夫でしょう。
そうそう、コリンズさんの家族と新任大使さんにも転写してあげないと。忘れないようにしよう。
色々と大盤振る舞いというか大サービスしちゃったけど……縁あって私の近くに来た人たちには多少はメリットを感じてもらいたいからね!
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