第2部 日本帰国編
第12話 勇者と魔王と○○
俺は御子柴平次。どこにでもいる普通の16歳の高校1年生だったけど今は普通ではない。
なぜなら異世界に行って帰ってきたからだ。なんと。ついさっき帰ってきたばかりなのだ。その証拠はこれだ。「ステータス!」
名前 御子柴平次
種族 人(男性)
年齢 16 体力G 魔力F
魔法 ー
身体強化 ー
スキル 火魔法5水魔法5光魔法5
神聖魔法5
身体強化5毒耐性5麻痺耐性5
剣術5聖剣術5槍術5神槍術5
アイテムボックス5鑑定5
異世界言語(万能)
称号 帰ってきた勇者
高校1年生の3学期。始業式の途中に突然異世界に放り込まれた。滅びつつある王国のイケメン第2王子に憑依した俺は騎士団長と宮廷魔術師、女盗賊、そして第2王子に惚れている清純な聖女で5人パーティを組んで一年間かけて魔王の軍勢を退け……
……そしてとうとう魔王を倒したのだ! ところが! その瞬間に俺は真っ白な何もない空間にいた!
「御子柴平次さん。一年間のお勤め、お疲れ様でした。お陰でこの世界は魔王の脅威から解放されました。あなたの成された偉業は第2王子の手柄として永遠に語り継がれることでしょう」
「第2王子の手柄って。俺は? 魔王倒したの俺なんですけど? というか、あなたは誰なんですか?」
「あなたは魂だけ地球から連れてきただけのイレギュラーな存在。魔王亡き今、あなたの居場所はこの世界には無いのです。再び魂だけにして地球に返してあげましょう」
「だからあなたは誰なー」
「魔王を倒してくれたお礼に今持っているスキルをそのままそっくり持たせます。チート野郎ですね?そしてこの一年間は地球では僅かに1秒しか経過していないのです。よかったですね。
地球。特に日本はこの世界と違って人を傷つけたり殺したりすれば忽ち指名手配されて社会的に抹殺されるでしょう。お気をつけて」
「だからあなたは誰で何のためにこんなことをー」
「時間がきたようです。あなたは知らないでしょうが地球にはあなたのように異世界から帰還したチート野郎や吸血鬼、死霊使い、そして凶悪な宇宙人がそこそこ居ます。あなたの使命はそれら人類の敵から地球を守る事なのですーー」
「あーーー」
というわけで俺は地球に戻ってきた。戻ってきた瞬間は始業式の途中で校長先生のお話を体育館に立たされて聞いていたんだけど今は教室に戻ってきていてホームルームが始まるのを待っている。
「御子柴くん。今日家帰ったらあのゲームの続きやろうよ。僕の家においでよ」
俺の前の席に座っている男子が親しげに声をかけてきた。
コイツは親友の伊集院平助。小学校の時からの腐れ縁のオタクで放っておけば一日中ゲームをしているような奴だけど気が合って学校でも地元でも一緒にいることが多い。
だからクラスでは俺もオタクと見做されていて最底辺のカーストに甘んじている。
俺の通うこの高校は地元ではそこそこ優秀と言われていて。クラスのカースト上位には美男美女である上にスポーツも嗜む好青年と美少女達が爽やかに幅を利かせている。
俺と伊集院はその光から逃れるようにひっそりと影に隠れて生きてきたのだ。
「うん、分かった、伊集院君の家だね。行くよ」
さて……地球に帰ってきたんだからスキルの使用感を確認したいな。伊集院君で試してみよう。えーと、第2王子に憑依している時とは勝手が違うね、ほい「ステータス」っと。
名前 伊集院平助
種族 人(男性)
年齢 16 体力G 魔力F
魔法 闇弾5水弾5光弾5土弾5風弾5
火弾5ステータス5
暗視5遠視5隠密5浄化5
探知5魔法防御5念話5飛行5
睡眠5魔物調教5
身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5
睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5
反応速度5防御5
称号 異世界から帰ってきた男
魔王
「…………は?」
♢♢
その日の放課後。俺は伊集院君と一緒に学校を出て自宅に向かっていた。
伊集院君の家と俺の家って近所だからしょっちゅう一緒に帰る。高校の最寄り駅から2駅6分くらい電車に乗って後は歩けば伊集院君の家に着いた。
「で、御子柴君。今日君を誘ったのはゲームをするためじゃ無いよ。分かるよね?」
わー、会話の切り出し方がコワイんですけど! 伊集院君も俺のステータス見たって事でしょうか? 伊集院君「ステータス」って魔法を持ってるもんね……でも一応惚けてみようかな?
「え、ゲームじゃ無いの伊集院君? じゃ何の用だったの?」
「あれ? 御子柴君は僕のステータス見たんじゃないの? ホームルームの前に僕が話しかけた時、なんかキョドッてたじゃん」
伊集院君は本気だ……覚悟を決める。
「へへ……ごめんね? ちょっとすっとぼけちゃったーー分かるよ。伊集院君が『魔王』って事でしょ?」
「なんだびっくりさせないでよ。御子柴君こそ勇者って羨ましいよ。
僕なんて魔王だし。バレたら人類の敵認定されるかな……魔王って称号にあるけど魔王らしいことは何にもないし悪いことなんかひとつもしてないのに」
「そうなの? で、伊集院君はいつから魔王なの?」
「今日の始業式からだよ。いや本当に大変だったんだー」
以下伊集院君のお話を要約すると。
俺と同じで始業式の途中に突然に異世界に放り込まれた。憑依先は20代後半の冴えない冒険者。
周りと比較すると途方もなく強力な攻撃魔法と身体強化を使ってあっという間にランクを上げて上級冒険者に。
伊集院君が持っている「魔物調教5」という魔法を使うとダンジョンの魔物を片っ端から調教できるから簡単にダンジョンを踏破できてダンジョンマスターになれた。
異世界に放り込まれて一年後。可愛い女性冒険者や領主の御令嬢からチヤホヤされて調子に乗っていたら。ある夜の寝込みを領主家の騎士団の襲撃を受けて死んでしまった。
それで死んでしまった瞬間に白い空間の謎の女性?に一方的に地球に戻すと言われて始業式の途中に戻ったということだ。なるほど、俺とおんなじだ。
「伊集院君、俺もほとんど同じだよ。俺は死んでないけどね」
「はあ……それで白い空間の謎の女性は『地球には異世界から帰還したチート野郎や吸血鬼とかが居て人類の敵』って言ってたけど僕は人類の敵じゃないから!
御子柴君は『勇者』だから良いけど僕は『魔王』だから不安で……」
「大丈夫だよ。伊集院君のことは俺がよく分かっているから……」
その後、俺の事情も話した。
俺の飛ばされた異世界と伊集院君が飛ばされた異世界はタイプが違う様だった。ステータスを比べても俺は「スキル」だけど伊集院君は「魔法」と「身体強化」になってて魔力を使って使用するんだって。
伊集院君の「魔法」は地球においては自分から半径20mの範囲でしか使えなくなったからもの凄く弱体化してしまったと嘆いていた。
「それでね、同じクラスの女子バスケ部の如月茜さん。彼女も御子柴君と同じタイプのステータスだったよ」
「ええ! そうなの?」
「うん。それで如月茜さんの称号が『帰ってきた女盗賊』だったよ」
♢♢♢♢
俺と伊集院君が異世界から帰還した日の翌日。称号が『帰ってきた女盗賊』だったという如月茜さんとお話した結果。如月茜さんは俺が第2王子として魔王討伐の旅に出た時のパーティーメンバーにいた女盗賊だった!
その時から学年でもトップクラスの美少女である如月茜さんと俺たちオタク二人組は「白い世界の謎の女性に人類の敵から地球を守るように言われた仲間」として一緒につるむことが多くなった。
ところがー。せっかく美少女とお近づきになれたのに如月茜さんは埼玉県のT市に引っ越していった。4月からは埼玉の県立高校に編入するんだって。お父さんのお仕事の関係なのでしょうがないけど大丈夫だろうか。ちょっと心配。「人類の敵」の件があるからね。
♢♢♢♢
……というわけで4月になって2年生になった俺と伊集院君は理系クラスのおんなじクラスになれた。
昼休みの昼食後。窓から差し込む暖かな日差しと爽やかな風を受けて伊集院君とまったりしていると。
「御子柴君、伊集院君。寛いでいるところ悪いけどちょっと良いかな?」
女子に声をかけられた! 声の方を振り向くと去年同じクラスだった女子バスケットボール部の水無瀬美咲さんだ! 隣にいる伊集院君をチラリと見てみると顔が真っ白になって固まっている。
伊集院君は女子バスケットボール部の皆さんにトラウマがあって苦手としている。俺たちオタクふたりが「如月茜さんの弱みを握って脅迫している」と誤解されてシメられたことがあるからだ。
でも俺はその時一緒に居たんだけどトラウマにはならなかった。「勇者」としてのチート能力を持ってて精神的に余裕ができたからだと自分では思ってる。伊集院君も「魔王」なんだからそんなにビクビクしなくてもいいのに。
「うん大丈夫だよ、水無瀬さん」
「はいいいー、だ、大丈夫でっすううう!」
「……伊集院君、そんなにキョドリまくって…… ごめんね、もっと早くに謝らないといけなかったんだけど、ついつい後回しにしちゃった。
アタシたち女子バスケットボール部の子たちが伊集院君と御子柴君のこと誤解したこと、ホントにごめんなさい……
昨日の夜に久しぶりに茜ちゃんと電話で話をしたんだけど、伊集院君たちのこと誤解したこと謝ってないって言ったら悲しそうにされたんだ……」
そうか。水無瀬さんは茜さんと仲が良くていつも一緒にいたからね、俺たちが茜さんとつるむようになったとはいえ、あくまでも女子と男子だから四六時中一緒に居るわけじゃなかった。水無瀬さんはいまでも茜さんと連絡を取り合っているんだね。
「うん、ありがとう水無瀬さん。俺たちは大丈夫だよ。伊集院君はちょっとだけビビっていたけどもう大丈夫だと思うよ。ね、伊集院君?」
「うん。水無瀬さんが謝ってくれたらなんかホットした。心が軽くなったみたい。ありがとう水無瀬さん、もう大丈夫なような気がする」
「あー、よかったあ! 『いまごろ謝ってももう遅い』とか言われたらどうしようかと思ってたのよ。伊集院君、御子柴君、アンタたちって茜ちゃんがいうとおりの性格イケメンなんだね……」
水無瀬美咲さんは心の底から嬉しそうに微笑んだ! 水無瀬さんは一年の時から如月茜か水無瀬美咲かってくらいの、学年で一、二を争う美少女だ。色白で健康的で活発。典型的なスポーツ美少女。茜さんは転校して居なくなってしまったけれど、天使はまだ居たんだね、ありがとうございます。
「性格イケメンかあ……へへへ、茜さんがそんなことを? いやあ照れるなあ」
「あはははっ、べつにアンタたちに惚れているって感じじゃなかったからね? わかんないけど」
水無瀬さんは笑いながら俺たちの希望を粉砕した後にちょっと真面目な顔になって改めて俺たちに向き直った。
「伊集院くん御子柴君よかったらアタシの友達になってくれる? アンタたちっていい人だし友達になったって茜ちゃんに言ったら喜んでくれると思うし。どうかな?」
「うん、こちらこそお願いします。いやー、茜さんに引き続いて学年トップクラスの美少女である水無瀬美咲さんとお友達になれた! 伊集院君、よかったね!」
「うん、水無瀬さん、友達になってくれてありがとう」
水無瀬美咲さんは俺たちにSNSアドレス交換をお願いしてくれた! 女子からSNSアドレス交換のお願いをされるとは俺たちもそろそろ最底辺カーストを卒業して2軍くらいには昇格したと言えるかもしれない。喜んで交換させていただきましょうー。
アドレスの交換というイベントをこなした後に水無瀬美咲さんからのお言葉が。
「ふたりともこれからよろしくね、アタシは文系だから滅多に会わないかもだけど。じゃあこの辺でクラスに戻ります。今日はありがと。またね!」
水無瀬美咲さんは俺たちに爽やかな笑顔を発動させながら手を小さく振りつつ自分のクラスにもどっていったー。ああ、行ってしまった。
「……御子柴君……見た? 水無瀬さんのステータス」
「うん……見たよ」
水無瀬美咲さんの帰り際に彼女のステータスを見せてもらった。いつもは見ないんだけど、友達になることを提案されたので念のために拝見させていただきました。
伊集院君は躊躇なく早々に見たようだったけど俺は会話をしていたから水無瀬さんの去り際になってしまった。伊集院君がキョドッていたのはステータスを見たからかもしれない。
名前 水無瀬美咲
種族 人(女性)
年齢 17歳 体力G 魔力F
魔法 ー
身体強化 ー
称号 リーナ・フィオーレに憑依している地球人水無瀬美咲の魂の複写元となった人物。
リーナ・フィオーレに憑依している地球人水無瀬美咲の魂の複写元となった人物!
魂の複写ってなんなの? 水無瀬さんの魂がどこかに複写されているってことなんですか? リーナ・フィオーレさんってどこの誰なんですか? 分からない。
「……御子柴君、今日の放課後に茜さんに相談しようよ。水無瀬さんは茜さんの友達というか親友っぽい訳だし」
「そうだね、そうしよう……俺たちの手には負えない……どうしたら良いのかわかんないしね」
俺たちは午後の授業が終わったらふたりで伊集院君の家に行って、茜さんに電話して相談することにしたのだった。
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