第4話 中央軍司令部

【1日目 午後9時頃 フロリダ州タンパ アメリカ中央軍司令部】



 中央軍司令官が軽食の手配を申し出てくれたので私はさっき見かけたハンバーガーをリクエストすることにする。



「ありがとうございます。でしたらここに歩いて来る途中に見かけたハンバーガーチェーン店のセットをいただけますか? 私大好きなんですよねあのチェーン店、お願いします」


「お安い御用ですよ、ちょっとお待ちくださいね手配してここまで持ってきますので。あとこの司令部の主要メンバーを集めたいと思います……これから色々と動くのに共通認識が必要ですから。問題ありませんか?」




 中央軍司令官の問いかけに対しては以前から考えていた自分のカバーストーリーを思い出す……私の地球におけるスタンスは異世界からの訪問者。地球に住んでいた日本人だったことは明かさない。出来るだけ正体を知られないようにしつつ合法的に日本に行って元妻の有朱遥香ちゃんに会うことが当面の目標なのです。

 有朱遥香ちゃんには私のオリジナルの旦那が居るから私が正体を明かしても変な感じになると思うから。だから私は本当の正体を明かさないままアリス・コーディで通すのが良いと思うんだよね……





「……大丈夫です。ただ、関係者だけに限定して漏らさないようにしてください。いずれ私は目立たないように世界中をあちこち動き回りたいのです。正体が広く知られると困るのです」


「承知しましたミズ・コーディ。では失礼して手配しますので、ごゆっくりとお寛ぎください」


「ありがとうございます」







 20分ぐらいでハンバーガーセットを秘書の女性海兵隊員さんが持ってきてくれた。久しぶりの本場のハンバーガーセットを食していると。



「失礼します……ミズ・コーディ、司令部のメンバーが集まりましたのでこちらにおいでください」



 秘書の女性海兵隊員さんに声をかけられた。







 廊下に出て隣にある小さめの会議室に入っていくと部屋の中には軍人さんたちがいっぱい立っていた。司令官さんが最初に語り出す。



「自己紹介が遅れ失礼しました。合衆国中央軍司令官オリバー・コリンズ海兵隊大将です」


「中央軍副司令官のーーーー海軍中将です」


「作戦部長のーーーー


「後方部長のーーーー


「マクディール空軍基地司令のーーーー


「ーーーー





 ーーなんかいっぱい紹介された。



「みなさんこんにちは、アリス・コーディです。私は地球のある宇宙とは異なる宇宙からやってきました。その宇宙にあるイースという惑星、そこにあるアレキサンドライト帝国という国からです。いちおうアレキサンドライト帝国では皇女の姉という肩書きになってます。

地球へは今日の夕方着いたばかりです。地球の方々とは友好的に交流したいと思っていますのでよろしくお願いしますね。


それから先程私が作り出した特殊アイテムの「燭台」ですが差し上げることは出来ませんけどしばらくの間はお預けしますので各所ご調整の際には使ってください。

ただしですね、あの「燭台」は地球ではおろかこの地球のある宇宙において恐らく誰にも作れない超技術です。異世界イースにおいても私にしか作れません。

私の情報そしてあの燭台の情報の開示範囲は必要最小限のメンバーに限定していただいて無闇に拡散されることのないようお願いします。

私自身の本当の正体を拡散されることを望んでおりません。ご配慮お願いします」




「もちろんです、我々にお任せください。万事ご要望の通り進めますのでご安心をミズ・コーディ、いや、アリス殿下。

それで、この基地の中にあるホテルのスイートを押さえましたので御休息されたい時はいつでも仰ってください。

ワシントンの方へは話を通すのに少々時間をいただきたいので明日以降はこの基地の部隊視察。タンパ市内のご観光など企画したいと思いますがいかがでしょうか?」



「市内観光はやめておきます。この基地に来るまでの途中で好ましくない人物と出会ってしまいました。また偶然出会ってしまうと困ります。部隊視察は是非見てみたいです、お願いします」






 その後、明日以降のスケジュールやワシントンに行って大統領に会いたい理由や目的について簡単にやりとりしたあとホテルに送ってもらった。


 ゴツいマイクロバスほどの大きさがある8人乗りの真っ黒なRV車だった。カッコいいよね、実用本位の感じがする。








【2日目 午後6時頃 フロリダ州タンパ マクディール空軍基地】



 マクディール基地に来た翌日の夕方。私はいま空軍基地内のオフィサーズクラブ(将校クラブ)で夕食を頂いている。中央軍のコリンズ司令官と副司令官、そしてマクディール基地司令の3人と一緒に会食をしているわけです。




 元航空自衛隊の2等空尉だった私からすれば雲の上の人たちで緊張するんだろうけど今となっては全く気にもならない。なぜなら私は亜神とはいえ神なのだから。司令官とか基地司令とかその辺のおじさんとおんなじなのです。


 この人達はなにかと私に気を遣ってくれてチヤホヤしてくれるから凄い快適です。側からみると高校生くらいの超美少女ををおじさん3人で囲んで何やってんの? ってなると思うけど。




 今日は朝から基地司令ブラウン大佐の案内で空軍機動航空団の輸送機Cー17を見せてもらったり。ちなみにブラウン大佐は輸送機のパイロットで女にモテそうないかにもなイケメンの40男だ。でも私には全く響かないよ? 男はNGだからね!




 昼からは中央軍の副司令官さんにアメリカ中央軍司令部を案内してもらって説明をしてもらった。明日以降は時間があれば同じくマクディール空軍基地に所在する中央海兵隊司令部と特殊作戦軍司令部を見せてくれるらしい。特殊作戦軍は中央軍と同じくアメリカ統合軍の一つで司令官は大将。偉いのである。




「それでミズ・コーディ。ワシントンの方は明日いっぱい調整の時間をいただきたいのです。

予定通り行けば明後日に空軍が特別機を仕立ててここマクディールからアンドルーズまで飛びますのでこれに乗ってワシントンまで。

ワシントンに着いたら一度国防総省に立ち寄っていただいてホワイトハウスに行くという感じで話をしてます」


「ありがとうございますコリンズ司令官それでお願いしますね。中央海兵隊司令部とか特殊作戦軍とかの見学もなかなかできないでしょうからありがたいです。興味深いです、明日が楽しみですね」


「はっはっは、興味を示してくれる視察者ほど部隊にとって嬉しいお客様はありませんよ。特にミズ・コーディは可憐なお嬢様ですからねブリーファーに立候補者が多くて一苦労です。俺がやるんだって引かないんですよ。

今日の御視察の時も現場のブリーファーにお菓子を下さったとか。皆感激しておりましたよ? お嬢様から飴をいただいた!って」


「えへへ、喜んで貰えるならもっと沢山あげようかな? でもあんまりたくさんは作れないんですよ、だから少数になっちゃいますけどごめんなさいね?」






【4日目 午前9時頃 フロリダ州タンパ マクディール空軍基地】



 マクディール基地に来て4日目の朝。昨日は中央海兵隊司令部と特殊作戦軍司令部を見せてもらって「物質創造」で作った飴ちゃんをばら撒いてきた。みんな喜んでくれるから配りがいもあるから。気持ちも良いしね。





 今は飛行場地区の待合室から出てワシントンに向かう特別機に向かっているところ。ああそうだ! 強化カモメ達をどうしようか。ちょっと立ち止まって強化カモメ達に念話で話しかける。ちなみにマクディール基地で追加で3羽のカモメを調教して6羽になっている。




『強化カモメ1号から6号、私は今から飛行機で2時間くらい飛ぶからこのマイホームの多目的ルームに入ってて!』


『マスター、我らを解放するのではなかったのか』



『ええ? そんなに調教されているのが嫌なの? うーん。じゃいいよ、解放してあげる。でも解放する前に与えた魔術を削除するからこっちに来なさい』


『マスター、結論を急いではいけない。そんなに我らの助けが必要ならちょっとぐらいは手伝ってやらんこともない。その代わり我らの魔術はそのままにしてー』


『分かったよ、魔術をそのままにする代わりに私の命令は絶対だからね? あなた達は魔法を使って自分で水が出せるから2時間くらい大丈夫でしょ。マイホームの多目的ルームの中には神器の「アース大気」が置いてあるから窒息することは無いから我慢しなさい?』



 強化カモメ6羽をマイホームの多目的ルームにぶち込んだ。アンドルーズに着いたら出してあげるからね。私は再び特別機に向かって歩き始める。





 特別機に近寄ると機体の細部まで観察できるようになる。おお、この機体は航空自衛隊も運用しているガルフストリームのビジネスジェット米空軍タイプだね。この機体だとワシントン近郊のアンドルーズ空軍基地までは2時間ちょいで着くらしい。


 中央軍に頼って正解だったね、快適楽々、下にも置かない接待をされながらビジネスジェットでワシントン入りできるんだから。因みに司令官も特別機に同乗して私のワシントン旅行に同行してくれるんだって。暇なのかな?





 空軍が準備した特別機でフロリダ州タンパのマクディール空軍基地からワシントンのアンドルーズ空軍基地まで飛行する亜神アリス・コーディ―とアメリカ中央軍司令官をはじめとする随行者達。


 アリスの使用する機体は空軍が要人輸送機として導入しているガルフストリームG550ビジネスジェット。空軍での型式はCー37Bである。




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